10年国債利回りの水準毎のPERとCAPEレシオ


今回は米10年国債利回りとS&P500のPER、CAPEレシオについてです。

multpl.comによると、現在(2018年8月末)のS&P500のPERは25.14、CAPEレシオは33.33で、1871年〜2018年の平均値(PER15.72、CAPEレシオ16.56)を大きく上回っています。

しかし一方で、米10年国債利回りは2.86%で、1871年〜2018年の平均値4.57%を大幅に下回っています。
PER=1/(割引率-成長率)
       =1/(無リスク金利+リスクプレミアム-成長率)
PERは上記の式で表すことができるので、無リスク金利(10年国債利回り)が過去平均よりも低ければ、PERも過去平均よりも高くなるのが当然だと思われます。

10年国債利回りと益利回り(1871~2018年)

実際に10年国債利回りと益利回り(PERの逆数)とCAPEレシオを使った益利回りの推移を見てみます。先ほどの式の通り、高金利のときは益利回りが高く(PERが低く)、低金利のときは益利回りが低く(PERが高く)なっていることが分かります。

1960年以前は益利回りが10年国債利回りを大きく上回って推移していましたが、それ以降はだいたい10年国債利回りと益利回りが一致しているように見えます。

1871年1月~2018年8月

まずはmultpl.comに載っている全期間(1871年1月〜2018年8月の月次データ)で、10年国債利回り毎(1%刻み)のPERとCAPEレシオの平均値、中央値、最小値、最大値を計算します。

PER

10年国債利回りが2〜3%ではPER平均値14.85、中央値12.83、3〜4%では平均値16.57、中央値15.36です。


10年国債
利回り
PER
平均値中央値最小値最大値
1% - 2%17.8717.039.3624.57
2% - 3%14.8512.835.82119.85
3% - 4%16.5715.368.83123.73
4% - 5%15.0713.935.3144.57
5% - 6%18.3417.338.5146.71
6% - 7%19.4118.5410.5729.74
7% - 8%14.5815.007.5425.93
8% - 9%13.4213.907.2321.42
9% - 10%11.0311.767.2520.09
10% - 11%10.6211.657.0113.22
11% - 12%10.6810.976.7913.02
12% - 13%9.199.196.8510.31
13% - 14%8.568.437.489.86
14% - 15%8.188.147.648.86
15% - 16%7.797.797.757.83
総計15.7214.725.31123.73

平均値と中央値をグラフ化すると以下のようになります。

CAPEレシオ

10年国債利回りが2〜3%ではCAPEレシオ平均値15.68、中央値13.13、3〜4%では平均値16.97、中央値16.85です。


10年国債
利回り
CAPEレシオ
平均値中央値最小値最大値
1% - 2%22.2621.9013.0027.00
2% - 3%15.6813.138.5133.31
3% - 4%16.9716.855.5732.56
4% - 5%15.5712.555.1640.57
5% - 6%20.6020.444.7843.83
6% - 7%23.2720.4311.6044.19
7% - 8%14.6613.898.2921.64
8% - 9%13.8614.728.6818.33
9% - 10%12.1811.718.5117.68
10% - 11%9.388.918.0011.00
11% - 12%9.709.847.8410.49
12% - 13%9.139.337.409.69
13% - 14%8.098.306.649.23
14% - 15%7.827.906.698.82
15% - 16%7.627.627.587.65
総計16.5615.664.7844.19

平均値と中央値をグラフ化すると以下のようになります。

1960年1月~2018年8月

次に、益利回りと10年国債利回りがだいたい一致し始めた1960年以降で同様に計算してみます。

PER

10年国債利回りが2〜3%ではPER平均値25.77、中央値22.15、3〜4%では平均値26.82、中央値20.35です。

10年国債
利回り
PER
平均値中央値最小値最大値
1% - 2%18.9717.6813.5024.57
2% - 3%25.7722.1513.79119.85
3% - 4%26.8220.3515.35123.73
4% - 5%21.0018.7214.6544.57
5% - 6%23.8421.9113.9646.71
6% - 7%19.4118.5410.5729.74
7% - 8%14.5815.007.5425.93
8% - 9%13.4213.907.2321.42
9% - 10%11.0311.767.2520.09
10% - 11%10.6211.657.0113.22
11% - 12%10.6810.976.7913.02
12% - 13%9.199.196.8510.31
13% - 14%8.568.437.489.86
14% - 15%8.188.147.648.86
15% - 16%7.797.797.757.83
総計19.1217.786.79123.73

平均値と中央値をグラフ化すると以下のようになります。

CAPEレシオ

10年国債利回りが2〜3%ではCAPEレシオ平均値25.54、中央値25.69、3〜4%では平均値20.31、中央値20.37です。

10年国債
利回り
CAPEレシオ
平均値中央値最小値最大値
1% - 2%23.4122.4219.7027.00
2% - 3%25.5425.6913.3233.31
3% - 4%20.3120.3715.2626.89
4% - 5%24.6124.0617.1440.57
5% - 6%27.8024.7315.6443.83
6% - 7%23.2720.4311.6044.19
7% - 8%14.6613.898.2921.64
8% - 9%13.8614.728.6818.33
9% - 10%12.1811.718.5117.68
10% - 11%9.388.918.0011.00
11% - 12%9.709.847.8410.49
12% - 13%9.139.337.409.69
13% - 14%8.098.306.649.23
14% - 15%7.827.906.698.82
15% - 16%7.627.627.587.65
総計20.1920.386.6444.19

平均値と中央値をグラフ化すると以下のようになります。
現在のS&P500のPER25.14は金利水準を考えるとそれほど割高でもなさそうですが、CAPEレシオ33.33はやっぱり高すぎるように思えますね。

CAPEレシオが高い要因としては、昔と比べて配当性向が下がって自社株買いが増えたぶんEPS成長率が高くなったというのもあるんじゃないかと思っていますが、CAPEレシオ30超を正当化するほどではない気がします。
(過去記事:EPS成長率とPER、CAPEレシオについて


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