購買力平価とドル転について(お問い合わせ)


読者様からドル転についてのメッセージを頂きました。

年収200万円台の高卒非正規さんは、積立方式で定期的にJPY->USD変換しているそうですが、USD/JPYが購買力平価でみて割安になるまでは、JPYで普通預金しておき、割安になった時にまとめてJPY->USD変換する方式と比較し、どちらが総合的な利益が大きくなるのでしょうか?
USD/JPYが割安になるまで待っていれば、それまでの外貨資産への投資の機会が失われてしまいますので。ご教示をお願いいたします。

知識不足の私の回答は全然参考にならないかもしれませんが、せっかくメッセージをいただいたので記事にしました。

購買力平価とドル円

下のグラフは購買力平価とドル円の実勢相場の推移です。

出典:国際通貨研究所 主要通貨購買力平価[ドル円]

近年の実勢相場はだいたい企業物価の購買力平価を中心として、消費者物価と輸出物価の間で推移しています。2017年12月時点での企業物価の購買力平価は95.42なので、企業物価を基準とすると、現在のドル円の実勢相場106.30は約11%割高ということになります。

これをみると、たしかに割安な日本円を割高なドルに替えていくよりも、95.42以下になるまで待ってからまとめてドル転したほうが良いような気もします。

円換算S&P500

1985年~1994年

購買力平価を基準にした場合、ドル円が一番割高にみえるのは1985年頃(実勢相場が消費者物価の線を上回っている時期)だと思います。

1985年1月にドル転してS&P500に投資したらどうだったかを調べるために、1985年1月から10年間の円換算S&P500をみてみます。
(1985年1月=100としています。)
10年間でドル建てS&P500は155.7%上昇しましたが、ドル円は60.6%下落したので、円換算S&P500は0.8%しか上昇しませんでした。

当時のS&P500の配当利回りは3~4%程度だったようなので、配当込みのトータルリターンは3~4%ありますが、バブル期の日本の普通預金金利は2%を超えていたという話も聞きます。この時期は預金のほうが良いですね。

2014年11月~2018年1月

これは最近なのでわざわざグラフ化するまでもないかもしれませんが、次に購買力平価からみてドル円が割高にみえる2014年11月から現在(2018年1月末)の円換算S&P500をみてみます。
(2014年11月=100としています。)

この間、ドル建てS&P500は36.6%上昇し、ドル円は4.7%下落したので、円換算S&P500は30.1%上昇しました。

企業物価の購買力平価を基準にすると、2014年11月にはドル円の実勢相場は約17%割高でした。普通預金金利はほぼゼロみたいなものなので、この期間ではドル転してS&P500を買ったほうが良かったです。


たとえば、1980年代後半から1990年代後半にかけて、企業物価の購買力平価からみるとドル円の実勢相場は大幅に割安な状態が続いていました。

現在のドル円は約11%割高ですが、購買力平価からみた適正レートに戻るまでは10年以上かかる場合もあることを考えると、割安になるまで待つのは機会損失になってしまうと思います。


1973年1月~2018年1月

1973年1月~2018年1月では以下のようになります。見やすいように対数グラフにしています。


45年間でドル建てS&P500は2,333.7%上昇し、ドル円は63.3%下落したので、円換算S&P500は792.6%上昇しました。

ドル円は年率2.2%程度下落していますが、これはだいたい日米のインフレ率の差だと思われるので、長期的にみると為替はあまり気にする必要はなさそうです。

高いCAPEレシオは心配

ただ、現在のS&P500のCAPEレシオは33.06で、世界恐慌前のバブル時(1929年)よりも割高です。
出典:multpl.com

以下のように、CAPEレシオが高いと将来得られるリターンは低くなってしまいます。今のところは割高なドル円よりも、超割高な米国株のほうが心配かなと思っています。
出典:Retirement Investing Today



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コメント

  1. とうしろ個人投資家2018/02/18 18:19

    結論は次のとおりでしょうか?
    a) JPY->USD変換は積立方式でよい。USD/JPYが割安になるのを待っていたのでは、USD資産への投資の機会が失われ、トータルにみた場合、損失となる確率が高い。
    b) ただし、現状では米国の景気後退期入りが2020年±1年と予想されている。従って、次の景気後退の暴落時に米国株もUSD/JPYも同時に割安になるので、その時にJPY->USD変換と米国株の購入を同時に行うのがよい。
    c) 景気後退に入る前に、米国株、不動産、商品などのリスク資産を手じまい、米長期金利が3~5%以上になった時、安全資産である米国債(IEF,TLTなど)を買っておくのがよい。
    (参照)https://jp.reuters.com/article/column-masaharu-takenaka-idJPKBN1EZ0G6

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    1. こんにちは。
      結論が分かりにくい書き方でごめんなさい。

      私の結論はa)です。
      b)も同意見ですが、私は景気後退入りの時期に関わらずドル転は毎日積立、米国株買いは毎月続けるつもりなので、割安になった段階で一気に購入しようとは思っていません。
      c)はいつ暴落がくるのかが予測できず、手仕舞いが早すぎて利益を取り逃してしまったり、そもそも暴落と呼べるほどの下落が来ない可能性もあるので、私は選択しないです。

      マーケットタイミングを見計らって売買するのは私には無理だと思っているので、ずっとBUY&HOLDを続けるつもりです。

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    2. とうしろ個人投資家2018/02/20 9:22

      ありがとうございました。今後も外貨投資、米国投資の実践的な知識やノウハウを教えてください。とうしろ個人投資家は、投資経験が短いので。また学者の書いたものは、学術的で実践的ではないので、あまり役に立ちませんので、、、よろしくお願いいたします。

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    3. とうしろ個人投資家さん、こんにちは。
      私も投資経験短いですし、お役に立てる分かりませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

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