債券同士の利回り格差や株式と債券の利回り差を指し、それぞれの利回りを比較することで相対的な割高感・割安感を判断する指標のひとつとなる。割安な国の株式を見つけるために、定期的に世界各国のイールドスプレッドの比較をチェックするようにしています。
債券同士の場合は、一般的に長期国債を基準に、残存期間や信用度から債券利回りの割安・割高を判断する。債券と株式の場合は、長期国債の利回りから配当利回り(=年間配当金÷株価)や株式益回り(=1株利益÷株価)を引いた数値を比較する。
引用元:野村證券「証券用語解説集」
(過去記事:世界各国のイールドスプレッド比較(2018年2月))
今回は米国株(S&P500)のイールドスプレッドの推移を調べてみました。本当は米国株以外も見たかったのですが、S&P500以外のPERの時系列データが見つからなかったので作れませんでした。
データはすべてmultpl.comのものを使っています。
S&P500の株式益利回りと10年国債利回り(1871年~2018年)
まずはS&P500の株式益利回り(PERの逆数)と米10年国債利回りを見てみます。1960年代までは益利回りが10年国債利回りを大きく上回る状態が続いていましたが、1970年以降は両者の差が小さくなっています。S&P500のイールドスプレッド(1871年~2018年)
下チャートはイールドスプレッド(米10年国債利回り-S&P500の益利回り)の推移です。下にいくほど株式が割安、上にいくほど株式が割高です。イールドスプレッドの平均値は-2.81%ポイント、中央値は-2.85%ポイントです。今が-1.15%ポイントなので、平均よりもやや割高ですね。
イールドスプレッドが最も小さかった(株式が割安)のは1949年6月の-14.87%ポイントで、当時の10年国債利回りが2.31%に対してS&P500の益利回りは17.18%でした。
反対に、最も大きかった(株式が割高)のは1987年9月の4.44%ポイントで、当時の10年国債利回りが9.42%に対してS&P500の益利回りは4.98%でした。
S&P500指数の価格も入れると以下のようになります。(S&P500は対数表示です。)
このままだと見にくいので幾つか暴落の時期を抜き出してみます。
世界大恐慌前後のイールドスプレッド(1926年~1950年)
1949年6月には-14.87%ポイントにまでなっています。今から考えるとあり得ないほど割安に思えます。もしこんな状態になったら借金してでも買いまくりたくなりますね。
オイルショック前後のイールドスプレッド(1965年~1975年)
オイルショック前後はイールドスプレッドで割高・割安の判断がある程度できそうです。ブラックマンデー前後のイールドスプレッド(1980年~1990年)
ブラックマンデー前後では、ほとんどの期間でイールドスプレッドがプラスになっています。ITバブル前後のイールドスプレッド(1990年~2005年)
1990年からITバブル崩壊までイールドスプレッドはほぼずっとプラスの状態です。
当時、プラスのイールドスプレッドを理由に株式を売ってしまっていたら、その後の大きなリターンを取り損ねてしまったことになります。
リーマンショック前後のイールドスプレッド(2005年~2018年)
イールドスプレッドと10年ローリング・リターン
横軸にイールドスプレッド、縦軸に10年ローリング・リターンの散布図を作ってみました。※SP500TR指数の長期間のデータが見つからなかったので、10年ローリング・リターンはプライスリターンで計算しています。
イールドスプレッドがプラスのまま株価上昇が続いた1980年代~1990年代を除くと以下のようになります。
イールドスプレッドと10年ローリング・リターンには負の相関があるといえそうです。
1980年代~1990年代のような例外もあるので、機械的に「イールドスプレッドがプラス=割高」と判断することはできませんが、ある程度の目安にはできそうですね。
配当利回りを使ったイールドスプレッド(1871年~2018年)
最後に、米10年国債利回りからS&P500配当利回りを引いたイールドスプレッドも見てみます。1950年代までは配当利回りが米10年国債利回りを上回る状態が続いていましたが、1958年に逆転して以降は国債利回りのほうが高くなっています。
最近ではリーマンショックとその後の量的緩和による低金利で配当利回りが高い時期もありましたが、現在は再び国債利回りのほうが高くなっています。
1960年以降で散布図を作ってみました。配当利回りを使った場合ではあまり使えなさそうですね。
よろしければ応援クリックお願いします
コメント