(過去記事:期待リターン=配当利回り+株主資本成長率+バリュエーション変化率)
ちょうど「ETFを使ったグローバルマクロ戦略」さんが株式益利回りと実質GDP成長率を足す方法でトルコ株の実質期待リターンを計算されていたので、今回の記事では同じ方法で世界各国の株式を計算してみようと思います。
(参考記事:ロシアとトルコ-CAPEの低い国への投資判断をどのように行ったか)
これは山崎元さんの記事に書かれている計算方法で、
リスクプレミアム=株式益利回り+名目GDP成長率-長期金利という風に表すことができます。
名目期待リターン=リスクプレミアム+長期金利=株式益利回り+名目GDP成長率
実質期待リターン=株式益利回り+名目GDP成長率-インフレ率=株式益利回り+実質GDP成長率
(参考記事:第五十八回 投資に役立つ? 10大理論(1)-2)
世界各国の実質期待リターン(株式益利回り+実質GDP成長率)
株式益利回りはStarCapital AGに載っている2018年6月末のPERの逆数、実質GDP成長率は2種類(IMFによる2018年予測値、PwCによる2016-2050年予測値)を使います。2018年の実質GDP成長率(推計)を使った場合
IMFによる2018年の実質GDP成長率の推計値を使った場合、実質期待リターンは以下のようになります。トップ3は中国(20.1%)、トルコ(17.1%)、ロシア(14.9%)で、ワースト3はスイス(6.2%)、デンマーク(7.0%)、フィンランド(7.0%)です。
中国が飛び抜けて高いですが、中国株のPERはサイトによってかなり差が大きく、StarCapital AGでは他よりも低くなっているので多少は割り引いて考える必要がありそうです。
(StarCapital AGの6月末時点では7.4ですが、「わたしのインデックス」の5月末時点では13.5、ETF.comのFXI(iシェアーズ 中国大型株 ETF)は10.15になっています。)
2016-2050年予測値の実質GDP成長率を使った場合
PwCの「The World in 2050(PDF)」に載っている2016-2050年の実質GDP成長率の予測値を使った場合は以下のようになります。※実質GDP成長率の予測値が載っていない国は除外しています。
トップ3は中国(16.5%)、トルコ(15.7%)、ロシア(15.1%)で、ワースト3は米国(6.4%)、フランス(7.3%)、カナダ(7.4%)です。
期待リターンを比べてみる
①Research Affiliatesの期待リターン(配当利回り+株主資本成長率+バリュエーション変化率)と、今回計算した2つの期待リターン(②2018年の実質GDP成長率(推計)を使った場合、③2016-2050年予測値の実質GDP成長率を使った場合)を表にしてみました。並び順は②の降順です。(Research Affiliatesの期待リターンは今後10年間のものなので比べるのはおかしいかもしれませんが、一応参考になるかなと思ったので比べてみました。)
株式益利回りと実質GDP成長率を足して計算する方法では全体的にリターンがかなり高めになっています。特に米国、インド、中国は差が大きいです。
3種類とも高リターンになっているのはトルコとロシアです。
期待リターンは役に立たない?
最後に、カン・チュンドさんのブログでも触れられていましたが、ウィリアム・シャープはアセットアロケーションを行う場合に 過去のデータ(histric data)は、と言っているそうです。
標準偏差に関しては 「非常に有用」(quite useful)で
相関係数に関しては「そこそこに有用」 (reasonably useful)だが、
期待リターンに関しては 「ほとんど役に立たない」 (virtually useless)
(引用:リターン、リスク、相関係数の中で、いちばん信頼できるのは「リスクの大きさ」)
※元は山崎元さんの 「年金運用の実際知識」という本だそうですが、私は読んでいないので引用の引用になってしまっています。
計算した期待リターンはあくまでも参考程度に留めておいたほうが良さそうですね。期待リターンとその後の実際のリターンを比べたデータとかがあれば見てみたいです。
一方で、CAPEレシオが低いとその後10年間のリターンが良くなるというのは先進国各国・新興国でちゃんとデータがあります。
下のグラフは新興国株のCAPEレシオ(左軸)とその後10年間の実質リターン(右軸・ 上下反転)で、このグラフは「ETFを使ったグローバルマクロ戦略」さんのブログで知りました。CAPEレシオが低いほど将来のリターンは高くなっています。
(参考記事:新興国株式をPERではなくCAPEで見るとリーマンショックで別の風景が見える②)
先進国各国でもCAPEレシオが低いほど将来のリターンは高くなる傾向にあります。相関係数は-0.87(フランス)~-0.99(スペイン)で、キレイに逆相関になっています。
やっぱりシンプルに低CAPE国の株を買っていくのが良いような気がします。
よろしければ応援クリックお願いします
コメント