StarCapital AGによると、2020年10月末時点の米国のCAPEレシオは29.8ですが、世界で最も低いロシアは5.9ととても低いです。
ロシアは米国よりも高金利ですが、前回の記事で取り上げたECY(Excess CAPE Yield:超過CAPE利回り)で見ても、米国は約2%、ロシアは約10%でやはり大きな差があります。
過去記事:米国のECY(Excess CAPE Yield)推移
CAPEレシオやECYでみるとロシアは米国よりもとても魅力的に思えますが、CAPEレシオで国際比較するときには指数の中身をよく見る必要があると思います。
NYダウ構成銘柄のCAPEレシオ
まずはS&P500ではなく、NYダウ構成銘柄のCAPEレシオをgurufocusで調べてみました。
最小値は9.97(IBM)、最大値は455.96(CRM)、中央値は29.80です。CAPEレシオのデータがないDOWを除外して加重平均すると27.93となり、S&P500よりはやや低くなります。
ちなみに除外されたXOM(エクソン・モービル)のCAPEレシオは7.24となっており、これはロシアには及ばいものの、トルコ(7.0)やポーランド(7.4)並の低さです。
S&P500のセクター別CAPEレシオ
gurufocusでS&P500のセクター別CAPEレシオを見てみると、最も低いのはエネルギー(13.60)、最も高いのはコミュニケーション・サービス(47.80)となっています。
出典:gurufocus |
もしS&P500が資源産業に依存する新興国みたいなセクター比率だったとしたら、きっとCAPEレシオはヨーロッパ先進国諸国と大差ない水準になりそうですが、どちらが魅力的かというと現在のS&P500のほうが良さそうな気がします。
CAPEレシオは現在株価を過去10年間のインフレ調整後EPSの平均値で割って計算するため、EPS成長率が高いと高CAPE、EPS成長率が低いと低CAPEにになります。
(PERとCAPEレシオが同じだった場合、過去10年間でインフレ調整後EPSが全く成長していない、CAPEレシオのほうが低い場合はインフレ調整後EPSが減少しているということになります。)
たとえば大手百貨店M(メーシーズ)のCAPEレシオは5.5とロシアよりも低いです。米国上場銘柄全体のうちCAPEレシオの低い数十銘柄に均等加重したりすると破綻寸前の衰退企業だらけになって将来のパフォーマンスは結構ひどいことになりそうです。
ERUS構成銘柄のCAPEレシオ
下表はERUS(iシェアーズ MSCI ロシアETF)構成銘柄のCAPEレシオです。
最小値は2.52(スルグトネフチガス)、最大値は73.44(ヤンデックス)、中央値は11.30です。CAPEのデータがない銘柄を除外して加重平均すると8.22となります。
(エネルギーセクターは米国のXOMやCVXよりも更に低CAPEですが、ヤンデックスは73.44で、GOOGL(アルファベット)62.44よりも高CAPEです。コミュニケーション・サービスだけを比べると米国のほうが低CAPEということになります。)
米国は高CAPEのテクノロジー、ヘルスケア、コミュニケーション・サービスが5割超を占めているのに対して、ロシアは低CAPEのエネルギー、素材、金融が8割近くを占めているため、セクター比率を調整すれば両者のCAPEレシオの差は縮まります。
出典:iShares |
米国とロシアではセクター比率を揃えた上でもなおロシアのほうが大幅に割安になると思いますが、高CAPE国と低CAPE国は多かれ少なかれ米国とロシアのような違いがあったりするので、実際には見た目ほどの大きな差はないように思えます。
また、多くの国は指数を構成する銘柄数が少ないので、たとえば世界で最も高CAPEのアイルランドはCAPE74.95のブックメーカー運用企業フラッター・エンターテインメントが2割超を占めていたりします。
このあたりはCAPEレシオで国際比較をする際に考慮する必要があると思います。
よろしければ応援クリックお願いします
コメント