最近、米国株の実質益利回り(株式益利回り(PERの逆数)-インフレ率)がマイナスになったという話をよく目にするようになりました。
株式益利回りと長期金利を比べたイールドスプレッドでみるとまだ余裕がありますが、実質金利が大幅なマイナスとなっている状況では長期金利よりもインフレ率を使ったほうが適切かもしれません。
今回はmultpl.comとFREDのデータを使ってS&P500の実質益利回りの推移を見ていきます。
S&P500の実質株式益利回り(株式益利回り-インフレ率(CPI前年同月比))
まずはS&P500の株式益利回りからインフレ率(CPI前年同月比)を引いた実質益利回りです。期間は1872年1月~2021年4月です。
前半部分は変動が激しすぎるので1960年以降を切り取ると以下のようになります。
この期間の平均値は2.54%、最大値は6.70%(1982年8月)、最小値は-1.89%(2021年4月)で、直近の数値は1960年以降では最小ということになります。直近は益利回り2.27%-インフレ率4.16%=-1.89%ですが、次いで低いのは1974年3月の-1.81%(益利回り8.58%-インフレ率10.39%)、1980年11月の-1.77%(益利回り10.88%-インフレ率12.65%)、2008年7月の-1.66%(益利回り3.94%-インフレ率5.60%)です。
かなり割高感がありますが、FactSetによると予想PERは21.2なので益利回りは4.72%、足元のインフレが一時的だとすれば問題なさそうにも思えます。
(予想PERの過去5年平均は18.0、過去10年平均は16.0だそうなので、予想PERを基にした益利回りで見ても過去の5.56%~6.25%と比べるとかなり低く、インフレ率が元に戻るとしてもやはり割高感はありますが。)
ちなみに実質益利回りと5年後の実質トータルリターンを並べると以下のようになります。
散布図を作ってみました。なんとなく実質益利回りが高いほどその後5年間のリターンは高い傾向にありますが、将来のリターンを予測するには、インフレ率を引くよりも単純に益利回りの高低でみたほうが精度は良さそうです。実質株式益利回り(株式益利回り-10年BEI)
CPIではなく、10年BEI(ブレークイーブンインフレ率)を使った場合は以下のようになります。期間は2003年1月~2021年5月です。
CPIを使ったグラフと重ねると以下のようになります。
10年BEIを使ったほうがまだマシですが、いずれにしても実質益利回りからみるとかなりの割高水準であることには違いなさそうです。
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