私有財産権と徴税能力


最近、『信長の正体』という本を読みました。


私はあまり歴史に興味を持ってこなかったので、何となく坂上田村麻呂とかそのあたりで蝦夷を征服したあとは戦国時代みたいな戦乱期を除くと概ね北海道と沖縄を除く日本全国を統治し続けてきたみたいな曖昧なイメージを持っていました。


しかしこの本によると、平安時代・室町時代で政権が統治できていたのは京都を中心とした近畿の狭い地域のみ、鎌倉時代の鎌倉幕府は関東のみで、日本全国に対して徴税能力をもつ権力が現れたのは戦国時代が終わってからで数百年の歴史しかないそうです。(私がよく知らなかっただけで常識ですかね…?)


古代の律令制における公地公民という概念は現実にはフィクションで、その頃は中央の政権は近畿の狭いエリア以外に対しては徴税能力もなければ、警察機能みたいなものも全く有していなかったので、地方は弱肉強食の無法地帯で土地所有者は中央の政権にはまともに税金を納めない代わりに自身の土地を自身の武力によって守るしかなく、これが武士の始まりだったとのこと。


私有財産を自身で守るしかなかった時代には外敵を退けられるだけの武力をもつ必要があり、強大な国家権力が私有財産を保証してくれるようになってからはみかじめ料的に高い税金を納めなければいけなくなったというのはまあたしかに言われてみればそんな感じがします。


私有財産権というものは強い統治能力と徴税能力をもった中央集権的政府とは歴史的にも切り離せない一体の概念なんだなと改めて思いました。


現代においてもたとえば金地金やビットコインみたいな現物資産は自己管理することで国家とは切り離された形で私有財産をもつことができるとはいえ、地金や秘密鍵の物理的な保管場所は貸金庫なり自宅なりどこかが必要で、その保管場所の安全性を担保しているのは国家の武力なんですよね。ビットコインなら自国が危なくなれば海外に逃げられるとはいえ、海外でもやはり私有財産権やそもそもの身体の安全を政府の武力によって保護してもらう必要がある訳で。




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