世界各国株式のCAPEレシオと過去10年実質リターン


StarCapital AGのデータを見てみると、CAPEレシオとその後10-15年間の実質リターンには強い逆相関関係があります。
出典:StarCapital AG(PDF

今回はResearch Affiliatesのデータを使って、世界各国株式の過去10年がどうだったかを調べてみました。


CAPEレシオと過去10年実質リターンの関係

まず、2008年4月時点のCAPEレシオと過去10年(2008年4月~2018年4月)の実質リターンを表にまとめました。表は2008年4月時点のCAPEレシオの昇順で、参考に2018年4月時点のCAPEも載せています。


CAPEレシオ
(2008年4月)
CAPEレシオ
(2018年4月)
実質リターン
(過去10年)
英国15.814.10.6%
トルコ16.410.2-2.7%
イタリア17.616.1-4.4%
ポーランド20.211.2-4.0%
ロシア20.86.1-9.8%
スペイン20.912.6-2.8%
フランス21.319.81.4%
スイス21.923.73.9%
スウェーデン22.019.73.2%
ドイツ22.418.51.8%
ヨーロッパ22.916.51.0%
南アフリカ23.019.03.3%
韓国23.314.73.3%
米国大型株23.431.07.4%
オーストラリア23.516.91.5%
先進国24.022.94.5%
全世界24.621.74.1%
台湾24.620.93.9%
香港24.818.25.3%
欧州、豪州、極東25.617.71.4%
ブラジル27.013.6-4.7%
アジア(除く日本)29.317.63.5%
カナダ29.519.50.0%
マレーシア29.917.12.5%
メキシコ30.421.5-0.9%
新興国31.314.91.0%
中国33.416.34.2%
米国小型株37.661.07.8%
インド38.821.80.8%
日本42.626.32.0%
インドネシア56.119.14.3%
タイ64.320.28.2%

2008年4月時点のCAPEレシオは最低の英国でさえ15.8で、現在(2018年4月)と比べると全体的に割高です。

英国、トルコ、イタリア、ポーランド、ロシアなどが比較的低CAPEでも低リターンだった一方、タイ、インドネシア、米国小型株などは高CAPEでも高リターンでした。

散布図を作ってみると、過去10年ではむしろ高CAPEのほうが高リターンになっているように見えますね。

CAPEレシオを使ったイールドスプレッドとの関係

次にイールドスプレッド(10年国債利回り-株式益利回り)と過去10年の実質リターンを比較してみようと思いましたが、2008年4月時点のPERのデータが見つけられませんでした。なので代わりに10年国債利回りからCAPEレシオの逆数を引いたスプレッドと比べてみます。表はスプレッドの昇順です。


CAPEレシオ
(2008年4月)
10年国債利回り
(2008年4月)
イールドスプレッド
(CAPEレシオver,)
実質リターン
(過去10年)
英国15.84.67%-1.66%0.60%
台湾24.62.51%-1.55%3.90%
スイス21.93.13%-1.44%3.90%
香港24.82.79%-1.25%5.30%
イタリア17.64.57%-1.11%-4.40%
日本42.61.63%-0.72%2.00%
米国大型株23.43.73%-0.54%7.40%
スウェーデン22.04.11%-0.43%3.20%
スペイン20.94.40%-0.39%-2.80%
フランス21.34.33%-0.37%1.40%
ドイツ22.44.12%-0.35%1.80%
オーストラリア23.54.40%0.15%1.50%
カナダ29.53.58%0.19%0.00%
マレーシア29.93.81%0.46%2.50%
韓国23.35.13%0.84%3.30%
ポーランド20.25.98%1.03%-4.00%
米国小型株37.63.73%1.07%7.80%
中国33.44.08%1.09%4.20%
ロシア20.86.47%1.66%-9.80%
タイ64.34.70%3.14%8.20%
メキシコ30.47.93%4.64%-0.90%
南アフリカ23.09.45%5.10%3.30%
インド38.87.96%5.38%0.80%
ブラジル27.013.59%9.89%-4.70%
インドネシア56.112.85%11.07%4.30%

現在と比べると全体的に高金利なので、CAPEレシオを使ったイールドスプレッドも割高になっています。インドネシアにいたってはCAPEが56.1、10年国債利回りが12.85%、スプレッドが11.07%と超割高に思えますが、その後10年の実質リターンは4.30%です。
何となくスプレッドが小さいほうが高リターンなようにも見えますが、微妙な感じです。

CAPEレシオの中央値で割った数値との関係

国によってCAPEレシオの中央値にかなり大きな差があるので、2008年4月時点のCAPEレシオを中央値で割った数値と比べてみました。表は中央値で割った数値(①÷②)の昇順です。


①CAPEレシオ
(2008年4月)
②CAPEレシオ
(中央値)
①÷②実質リターン
(過去10年)
米国小型株37.641.00.97.8%
イタリア17.618.80.9-4.4%
欧州、豪州、極東25.625.11.01.4%
スイス21.920.31.13.9%
スウェーデン22.020.41.13.2%
英国15.814.31.10.6%
フランス21.319.11.11.4%
先進国24.021.21.14.5%
日本42.636.91.22.0%
南アフリカ23.019.01.23.3%
ドイツ22.417.81.31.8%
台湾24.619.21.33.9%
ヨーロッパ22.917.31.31.0%
メキシコ30.422.71.3-0.9%
全世界24.618.41.34.1%
香港24.818.41.35.3%
トルコ16.412.11.4-2.7%
マレーシア29.921.11.42.5%
オーストラリア23.516.51.41.5%
スペイン20.914.51.4-2.8%
米国大型株23.416.11.47.4%
カナダ29.519.21.50.0%
韓国23.314.91.63.3%
アジア(除く日本)29.317.81.73.5%
ポーランド20.212.01.7-4.0%
インド38.820.91.90.8%
新興国31.316.21.91.0%
ブラジル27.013.62.0-4.7%
中国33.416.82.04.2%
インドネシア56.122.02.54.3%
ロシア20.86.33.3-9.8%
タイ64.318.23.58.2%

タイ、インドネシア、中国、イタリアなど逆になっている国も多いですが、だいたい「CAPEレシオ(2008年4月)÷CAPEレシオ中央値」の数値が低いほど高リターンな傾向に見えます。


ここまで書いて思いましたが、今回調べたのは2008年4月→2018年4月の期間だけなのであまり参考にはならないかもしれませんね。10年前は全体的に割高で最も低CAPEの英国ですら15.8ですし…

ただ、CAPEレシオを使って割高・割安を判断するときは10年国債利回りやCAPEレシオの中央値も併せて見ておいたほうが良いのかなと改めて思いました。

また、世界各国のリーマンショック前後のCAPEレシオと最大ドローダウンについては先日記事にしていますが、これも低CAPEだからといって将来のドローダウンが小さいとは言えなさそうです。
(過去記事:リーマンショック前後の世界各国のCAPEレシオ


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