(過去記事:S&P500の配当性向推移、EPS成長率とCAPEレシオについて)
配当性向が低下した分は自社株買いや再投資に回されるようになり、最近の実質EPS成長率は過去と比べると1.63~1.77%ポイント高くなっています。
今回の記事ではこのEPS成長率の差とPER、CAPEレシオについて考えてみました。
※今回もデータはすべてmultpl.comのものを使っています。
PERとEPS成長率
PERは株価をEPSで割って求めますが、以下のように表すこともできます。※割引率というのは投資家が株式に要求するリターン=期待リターンのことです。
PER=1/(割引率-成長率)成長率は高くなるほど、割引率は低くなるほど、PERは高くなります。
(過去記事:成長率と適正PERを考える)
3つの期間(1871-1950年、1950-1995年、1995-2018年)でのPERの平均値と中央値から割引率を逆算してみると、以下のようになりました。
※割引率(平均値)=1/PER平均値+実質EPS成長率
割引率(中央値)=1/PER中央値+実質EPS成長率
PER平均値を使った場合だと割引率は8.86%→8.52%→7.24%に、PER中央値を使った場合だと9.05%→8.56%→7.92%に低下しています。
ジェレミー・シーゲル著「株式投資 第4版」では、売買コストの低下、税率の低下、経済安定性の向上によって将来のPERは上昇すると書かれていますが、これらの要因で割引率(=投資家が要求するリターン=期待リターン)が低下しているということなんだろうなと思います。
ちなみに現在のS&P500のPERは25.13で、これは1995-2018年の平均値とほぼ同じです。平均値はITバブルとリーマンショック時の異常値で高くなっているので、中央値の21.46に比べるとやっぱり割高ですが…
CAPEレシオとEPS成長率
当ブログでもよく使っているCAPEレシオは現在株価をインフレ調整後EPSの10年平均値で割って計算します。インフレ調整後の実質EPS成長率が10年間ゼロだった場合はCAPEレシオ=PERになりますが、プラス成長している場合はCAPEレシオ>PERになります。
先ほどの表では、最近(1995-2018年)の実質EPS成長率は3.26%で、それ以前と比べて1.63~1.77%ポイント高くなっています。ということは、それ以前と比べてCAPEレシオはやや高めに出るはずです。成長率の差がCAPEレシオにどれくらい影響するのかを計算してみました。
まずは、3つの時期のEPS成長率を使って、CAPEレシオの計算に使う過去10年平均EPS(インフレ調整済)を計算します。1年目のEPSを100として、EPS成長率は一定としています。
※1871-1950年が1.63%、1950-1995年が1.49%、1995-2018年が3.26%
10年目(現在)のPERを仮に20だとすると、EPS成長率ごとのCAPEレシオは以下のようになります。
EPS成長率3.26%ではCAPEレシオは23.01になり、他と比べて1.52~1.65高くなっています。それほど大きな差はないですね。
今度は10年目(現在)のPERを各期間でのPER中央値に置き換えると、CAPEレシオは以下のようになります。
EPS成長率3.26%、現在のPER21.46とした場合のCAPEレシオは24.69になり、他と比べて9.58~10.20高くなっています。
現在は過去と比べて、売買コストの低下、税率の低下、経済安定性の向上などでPERが高く(割引率が低く)なり、かつ配当性向の低下で自社株買いが増えてEPS成長率が高くなっているとしたら、CAPEレシオもこれくらい高くなってもおかしくないのかなという気もします。
現在のCAPEレシオ33.35が割高ということは確かだと思いますが、S&P500のCAPEレシオの適正値は昔と比べて高くなっていて、長期平均の16程度まで下がることはほとんどないのかもしれません。
割引率=期待リターンが下がるのは投資家としては嬉しくないことですが…
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