世界各国のディフェンシブセクター比率とPER


景気敏感セクターは景気サイクル終盤に低PERになりがちですが、これは利益のピークアウトを織り込んでいるためで、必ずしも割安という訳ではありません。

景気によって利益が大きく変動するため、むしろ景気後退期に一時的に利益が激減し、高PERになったときのほうが割安ということもあります。

そのため、国同士のPERを比較する場合には、単純に低PERだから割安、高PERだから割高という風には判断できず、国によるセクター構成の差を考慮する必要があると思います。

今はきっと景気サイクル終盤だと思われるので、景気敏感セクター中心の国はディフェンシブセクター比率中心の国よりも低PERになる傾向にありそうです。

ということで、今回は世界各国のディフェンシブセクター比率とPERについて調べてみました。

※今回使用したデータはETF.comで、ディフェンシブセクターはヘルスケア、生活必需品、公益、電気通信、景気敏感セクターは金融、テクノロジー、一般消費財、資本財、エネルギー、素材として計算しています。

世界各国のディフェンシブセクター比率とPER

カントリーETFを使って各国のディフェンシブセクター比率とPER、ついでにPBRと配当利回りを比較してみました。カントリーETFではありませんが、比較対象に私が個人的に好きなGVAL(カンブリア・グローバル・バリューETF)も含めています。

表はディフェンシブセクター比率の降順です。



ディフェンシブ
セクター比率
PERPBR配当利回り
ニュージーランドENZL60.65%20.802.023.26%
デンマークEDEN55.60%15.132.921.79%
スイスEWL54.58%22.282,382.29%
ポルトガルPGAL50.33%-35.811.414.19%
ベルギーEWK46.68%16.721.682.46%
メキシコEWW40.44%18.201.952.18%
オランダEWN38.38%14.881.912.08%
チリECH36.35%17.531.782.19%
マレーシアEWM35.75%17.301.683.72%
ナイジェリアNGE32.64%7.140.795.30%
スペインEWP32.47%12.961.213.34%
アイルランドEIRL32.44%15.571.591.33%
英国EWU32.18%11.661.604.36%
インドネシアEIDO30.59%16.822.591.90%
ノルウェーENOR27.46%15.741.692.49%
フランスEWQ27.43%15.141.622.56%
フィリピンEPHE27.26%19.332.150.42%
米国IVV27.14%20.093.191.95%
日本EWJ24.47%12.221.201.59%
タイTHD24.36%15.112.132.43%
イタリアEWI23.79%10.441.094.10%
アラブ首長国連邦UAE23.73%12.121.085.29%
グローバル・バリューGVAL23.11%9.491.234.19%
ブラジルEWZ22.02%20.102.082.50%
ギリシャGREK21.99%37.560.552.05%
ドイツEWG21.54%12.061.482.69%
イスラエルEIS20.97%-36.821.570.77%
コロンビアICOL20.67%16.031.231.93%
インドINDA19.16%19.802.870.89%
オーストラリアEWA18.19%16.031.895.49%
南アフリカEZA15.90%13.592.143.63%
韓国EWY14.67%9.540.981.28%
フィンランドEFNL14.28%20.192.173.38%
中国MCHI14.12%12.391.681.34%
香港EWH13.62%10.681.272.55%
トルコTUR13.13%6.031.103.64%
カタールQAT12.64%17.191.474.69%
スウェーデンEWD12.19%16.132.114.72%
カナダEWC11.57%16.321.772.27%
シンガポールEWS10.70%12.721.213.93%
パキスタンPAK10.37%7.761.355.29%
ポーランドEPOL9.31%11.911.241.40%
台湾EWT9.08%11.911.562.92%
ロシアERUS9.02%5.600.874.12%
オーストリアEWO4.67%10.351.153.66%

ディフェンシブセクター比率が低い国のうち、オーストリア、ロシア、パキスタンはエネルギーと金融、台湾はテクノロジー、ポーランドとシンガポールは金融に偏っており、どれもPERが低いです。

トルコや韓国もかなり低PERですが、やはりディフェンシブセクター比率は低めです。

ただし、StarCapital AGでCAPEレシオをみると、ロシア(CAPE6.8)、ポーランド(12.3)、シンガポール(13.5)、トルコ(8.9)、韓国(13.2)は低いので、これらの国は一時的に低PERになっている訳ではないと思います。
(CAPEレシオは過去10年のインフレ調整済EPSの平均値を使っているので、これを見れば景気拡大期の一時的な増益でPERが低くなっているのかどうかを判断できます。)

反対にディフェンシブセクター比率が比較的高く、かつPERも低いナイジェリア、スペイン、英国は魅力的に思えます。ナイジェリアは半分超が金融セクターでボラティリティも非常に高いですが、金融セクターに次いで生活必需品セクター比率が高いです。

PERがマイナスのイスラエルとポルトガルを除外し、横軸をディフェンシブセクター比率、縦軸をPERにすると以下のようになります。

世界各地域のディフェンシブセクター比率とPER

次にバンガードETFのVT(全世界)、 VWO(新興国)、VEA(米国を除く先進国)、VEU(米国を除く全世界)、VGK(ヨーロッパ)、VPL(パシフィック先進国)を使って、各地域を比較してみます。



ディフェンシブ
セクター比率
PERPBR配当利回り
ヨーロッパVGK32.50%14.251.663.50%
米国を除く先進国VEA26.39%13.811.463.00%
全世界VT25.41%16.912.082.25%
米国を除く全世界VEU24.97%13.371,522.93%
パシフィック先進国VPL21.00%12.471.222.82%
新興国VWO17.16%13.411.682.56%

新興国は低PERでもディフェンシブセクター比率が最も低いです。ただ、これもCAPEレシオをみると新興国が15.7と最も割安なので、新興国株が一時的に低PERになっているという訳ではないと思います。

ヨーロッパはディフェンシブセクター比率が高く、PERも低めですが、ジェフリー・ガンドラックはずっとバリュートラップの可能性があると指摘しています。

私が好きなGVAL(カンブリア・グローバル・バリューETF)もヨーロッパ株比率が高いですし、個別株でも英国株を多く保有しているのですが、実際にはどうなんでしょうね。

世界各国のセクター構成

大きくてかなり見にくいかと思いますが、せっかく拾ってきたので世界各国、各地域のセクター構成を表にまとめてみました。

表は金融セクターの降順で並べています。


生活必需品セクターが最も高いのはナイジェリア(32.6%)、ヘルスケアセクターはデンマーク(39.1%)、公益セクターはポルトガル(32.5%)、電気通信セクターはメキシコ(17.4%)となっています。

ちなみにデンマークは製薬大手ノボ・ノルディスクが単独で22.0%、ポルトガルは電力大手EDP(ポルトガル電力公社)が22.8%、メキシコは中南米最大の通信会社アメリカ・モビルが15.1%をそれぞれ占めています。

グラフ化すると以下のようになります。なお、足しても100%にならない国もあるので、100%積み上げグラフにすると上の表とはちょっとズレが生じています。



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