景気によって利益が大きく変動するため、むしろ景気後退期に一時的に利益が激減し、高PERになったときのほうが割安ということもあります。
そのため、国同士のPERを比較する場合には、単純に低PERだから割安、高PERだから割高という風には判断できず、国によるセクター構成の差を考慮する必要があると思います。
今はきっと景気サイクル終盤だと思われるので、景気敏感セクター中心の国はディフェンシブセクター比率中心の国よりも低PERになる傾向にありそうです。
ということで、今回は世界各国のディフェンシブセクター比率とPERについて調べてみました。
※今回使用したデータはETF.comで、ディフェンシブセクターはヘルスケア、生活必需品、公益、電気通信、景気敏感セクターは金融、テクノロジー、一般消費財、資本財、エネルギー、素材として計算しています。
世界各国のディフェンシブセクター比率とPER
カントリーETFを使って各国のディフェンシブセクター比率とPER、ついでにPBRと配当利回りを比較してみました。カントリーETFではありませんが、比較対象に私が個人的に好きなGVAL(カンブリア・グローバル・バリューETF)も含めています。表はディフェンシブセクター比率の降順です。
ディフェンシブセクター比率が低い国のうち、オーストリア、ロシア、パキスタンはエネルギーと金融、台湾はテクノロジー、ポーランドとシンガポールは金融に偏っており、どれもPERが低いです。
トルコや韓国もかなり低PERですが、やはりディフェンシブセクター比率は低めです。
ただし、StarCapital AGでCAPEレシオをみると、ロシア(CAPE6.8)、ポーランド(12.3)、シンガポール(13.5)、トルコ(8.9)、韓国(13.2)は低いので、これらの国は一時的に低PERになっている訳ではないと思います。
(CAPEレシオは過去10年のインフレ調整済EPSの平均値を使っているので、これを見れば景気拡大期の一時的な増益でPERが低くなっているのかどうかを判断できます。)
反対にディフェンシブセクター比率が比較的高く、かつPERも低いナイジェリア、スペイン、英国は魅力的に思えます。ナイジェリアは半分超が金融セクターでボラティリティも非常に高いですが、金融セクターに次いで生活必需品セクター比率が高いです。
PERがマイナスのイスラエルとポルトガルを除外し、横軸をディフェンシブセクター比率、縦軸をPERにすると以下のようになります。
世界各地域のディフェンシブセクター比率とPER
次にバンガードETFのVT(全世界)、 VWO(新興国)、VEA(米国を除く先進国)、VEU(米国を除く全世界)、VGK(ヨーロッパ)、VPL(パシフィック先進国)を使って、各地域を比較してみます。新興国は低PERでもディフェンシブセクター比率が最も低いです。ただ、これもCAPEレシオをみると新興国が15.7と最も割安なので、新興国株が一時的に低PERになっているという訳ではないと思います。
ヨーロッパはディフェンシブセクター比率が高く、PERも低めですが、ジェフリー・ガンドラックはずっとバリュートラップの可能性があると指摘しています。
私が好きなGVAL(カンブリア・グローバル・バリューETF)もヨーロッパ株比率が高いですし、個別株でも英国株を多く保有しているのですが、実際にはどうなんでしょうね。
世界各国のセクター構成
大きくてかなり見にくいかと思いますが、せっかく拾ってきたので世界各国、各地域のセクター構成を表にまとめてみました。表は金融セクターの降順で並べています。
生活必需品セクターが最も高いのはナイジェリア(32.6%)、ヘルスケアセクターはデンマーク(39.1%)、公益セクターはポルトガル(32.5%)、電気通信セクターはメキシコ(17.4%)となっています。
ちなみにデンマークは製薬大手ノボ・ノルディスクが単独で22.0%、ポルトガルは電力大手EDP(ポルトガル電力公社)が22.8%、メキシコは中南米最大の通信会社アメリカ・モビルが15.1%をそれぞれ占めています。
グラフ化すると以下のようになります。なお、足しても100%にならない国もあるので、100%積み上げグラフにすると上の表とはちょっとズレが生じています。
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