前回に続いて通貨の話で、今回は購買力平価(PPP:purchasing power parity)についてです。
(過去記事:
個別国に投資する際には実質実効為替レートも確認したい)
世界各国通貨の購買力平価と為替レート(2017年)
世界各国通貨の対ドルの購買力平価(PPP)と為替レート、PPP/為替レートを表にまとめてみました。データは
OECDの2017年のもので、PPP/為替レートの昇順(購買力平価でみて割安な順)で並べています。
| PPP
(2017年) | 為替レート
(2017年) |
PPP/
為替レート
|
インド | 17.729 | 65.122 | 0.27 |
インドネシア | 4190.492 | 13380.834 | 0.31 |
北マケドニア | 19.358 | 54.665 | 0.35 |
トルコ | 1.374 | 3.648 | 0.38 |
サウジアラビア | 1.446 | 3.75 | 0.39 |
ブルガリア | 0.682 | 1.735 | 0.39 |
ルーマニア | 1.645 | 4.052 | 0.41 |
ロシア | 24.342 | 58.343 | 0.42 |
コロンビア | 1278.04 | 2951.327 | 0.43 |
南アフリカ | 6.076 | 13.334 | 0.46 |
ポーランド | 1.75 | 3.779 | 0.46 |
メキシコ | 9.041 | 18.927 | 0.48 |
ペルー | 1.595 | 3.26 | 0.49 |
ハンガリー | 136.069 | 274.433 | 0.50 |
リトアニア | 0.449 | 0.887 | 0.51 |
クロアチア | 3.371 | 6.624 | 0.51 |
中国 | 3.55 | 6.759 | 0.53 |
チェコ共和国 | 12.531 | 23.376 | 0.54 |
スロバキア共和国 | 0.482 | 0.887 | 0.54 |
ラトビア | 0.491 | 0.887 | 0.55 |
エストニア | 0.536 | 0.887 | 0.60 |
チリ | 402.359 | 648.834 | 0.62 |
ブラジル | 2.024 | 3.191 | 0.63 |
スロベニア | 0.576 | 0.887 | 0.65 |
ポルトガル | 0.58 | 0.887 | 0.65 |
マルタ | 0.582 | 0.887 | 0.66 |
ギリシャ | 0.586 | 0.887 | 0.66 |
コスタリカ | 390.705 | 567.513 | 0.69 |
アルゼンチン | 11.474 | 16.563 | 0.69 |
キプロス | 0.632 | 0.887 | 0.71 |
スペイン | 0.641 | 0.887 | 0.72 |
韓国 | 866.009 | 1130.425 | 0.77 |
イタリア | 0.696 | 0.887 | 0.78 |
欧州連合(28カ国) | 0.706 | 0.887 | 0.80 |
ユーロ圏(19カ国) | 0.728 | 0.887 | 0.82 |
ドイツ | 0.754 | 0.887 | 0.85 |
フランス | 0.776 | 0.887 | 0.87 |
オーストリア | 0.78 | 0.887 | 0.88 |
ベルギー | 0.781 | 0.887 | 0.88 |
英国 | 0.691 | 0.777 | 0.89 |
オランダ | 0.791 | 0.887 | 0.89 |
アイルランド | 0.797 | 0.887 | 0.90 |
日本 | 102.47 | 112.166 | 0.91 |
カナダ | 1.252 | 1.298 | 0.96 |
ルクセンブルク | 0.861 | 0.887 | 0.97 |
フィンランド | 0.877 | 0.887 | 0.99 |
米国 | 1 | 1 | 1.00 |
スウェーデン | 8.856 | 8.549 | 1.04 |
イスラエル | 3.755 | 3.6 | 1.04 |
ニュージーランド | 1.471 | 1.407 | 1.05 |
デンマーク | 6.951 | 6.603 | 1.05 |
オーストラリア | 1.444 | 1.305 | 1.11 |
スイス | 1.193 | 0.985 | 1.21 |
ノルウェー | 10.07 | 8.272 | 1.22 |
アイスランド | 137.725 | 106.84 | 1.29 |
グラフ化すると以下のようになります。
購買力平価でみると、新興国通貨は割安、先進国通貨は割高傾向にあることが分かります。
所得水準が低い国の為替レートはPPPと乖離するのが普通
これだけを見るとインドルピーやインドネシアルピアの通貨を買って、アイスランドクローナやノルウェークローネを売りたくなってしまいますが、所得水準の低い国の為替レートはPPPと乖離するのが普通なんだそうです。
中国に限らず所得水準の低い発展途上国であるほど、自国の為替レートがPPPよりずっと割安であるという現象が観測されている。これは、工業製品などの貿易財に関しては一物一価の法則が概ね成立しても、非貿易財である多くのサービスに関しては、賃金水準の格差を反映して、低所得国であるほど安いというBalassa-Samuelsonの法則に沿ったものである。これによると、実際の為替レートとそのPPPの理論値からの乖離幅は、経済が発展すればするほど小さくなり、先進国のレベルに到達すれば大体PPPに見合うレベルまで下がることになる。
引用:「購買力平価で見る人民元の実力」RIETI
2017年の1人当たりGDPを確認すると、PPPで割安なインドは1,939ドル、インドネシアは3,877ドル、北マケドニアは5,414ドル、トルコは10,807ドルと低く、割高なアイスランドは67,570ドル、ノルウェー73,620ドルは、スイスは80,637ドル、オーストラリアは55,707ドルと高いです。
これらの国のPPP/為替レートの推移を見てみると、割安な国はずっと割安、割高な国はずっと割高なままになっていることが分かります。
先進国の目安とされるのは1人当たりGDPが3万ドルだそうなので、この基準を満たしている国に限ると、PPP/為替レートは0.7~1.3程度の範囲に収まっています。
最も割安なのはユーロや韓国ウォンですね。英ポンドや日本円も比較的割安です。
とりあえず購買力平価だけで新興国通貨が割安かどうかを判断するのは難しそうですね。
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