世界各国のカントリーリスクプレミアム


ある国の株式や債券に投資するときに考慮しなければならないリスクをカントリーリスクといいます。

投資対象が先進国だけの場合はあまり気にしなくてもいいかもしれませんが、新興国の場合はカントリーリスクを十分に考慮した上で投資する必要があると思います。

たとえば、私は低CAPEレシオに注目してロシア株を多く保有していますが、ロシアは米国など先進国と比べると高リスクな国です。

他の条件が同じなら高リスク国の株式は低リスク国よりもバリュエーションが低くなるはずなので、もしもロシア株が米国株と同じバリュエーションなら私は迷いなく米国株を選びます。

このカントリーリスクについて、今までは高リスクそうな国は何となく割り引いて考える程度で具体的な数値では評価したことがなかったのですが、今回はカントリーリスクプレミアムのデータを見つけたので記事にまとめてみました。

世界各国のカントリーリスクプレミアム(2019年1月時点)

下記ページではニューヨーク大学アスワス・ダモダラン教授によるカントリーリスクプレミアムの推計値をみることができます。現時点では2019年1月のデータになっています。
(参考:Country Default Spreads and Risk Premiums

元の表には175カ国のデータが載っていますが、今回は毎月末イールドスプレッドをチェックしている40カ国+気になる2カ国(ナイジェリア+パキスタン)を抜き出してみました。
(ちなみに175カ国中でカントリーリスクプレミアムが最も高い国はイエメン(22.14%)、ベネズエラ(22.14%)、スーダン(22.14%)の3カ国です。北朝鮮は16.65%だそうです。)

表はカントリーリスクプレミアムの降順です。なお、成熟した株式市場のリスクプレミアム(S&P500のインプライド・リスクプレミアム)は5.96%と推計されており、カントリーリスクプレミアムにこの5.96%を足したものが右の株式リスクプレミアムとなっています。

カントリー
リスクプレミアム
株式
リスクプレミアム
ギリシャ9.03%14.99%
パキスタン9.03%14.99%
ナイジェリア7.64%13.60%
トルコ5.00%10.96%
ブラジル4.17%10.13%
ロシア3.47%9.43%
イタリア3.06%9.02%
ハンガリー3.06%9.02%
ポルトガル3.06%9.02%
南アフリカ3.06%9.02%
インド2.64%8.60%
インドネシア2.64%8.60%
フィリピン2.64%8.60%
スペイン2.22%8.18%
タイ2.22%8.18%
マレーシア1.67%7.63%
メキシコ1.67%7.63%
アイルランド1.18%7.14%
ポーランド1.18%7.14%
イスラエル0.98%6.94%
チェコ0.98%6.94%
中国0.98%6.94%
日本0.98%6.94%
ベルギー0.84%6.80%
台湾0.84%6.80%
フランス0.69%6.65%
英国0.69%6.65%
韓国0.69%6.65%
香港0.69%6.65%
オーストリア0.55%6.51%
フィンランド0.55%6.51%
オーストラリア0.00%5.96%
オランダ0.00%5.96%
カナダ0.00%5.96%
シンガポール0.00%5.96%
スイス0.00%5.96%
スウェーデン0.00%5.96%
デンマーク0.00%5.96%
ドイツ0.00%5.96%
ニュージーランド0.00%5.96%
ノルウェー0.00%5.96%
米国0.00%5.96%

グラフ化すると以下のようになります。
先進国のカントリーリスクプレミアムは0%台ですが、新興国は国によってかなり差があり、パキスタンやギリシャは9.03%、ナイジェリアは7.64%、トルコは5.00%とかなり高いです。

成長率ゼロとして適正PERを計算してみる

次に、この株式リスクプレミアムを使って各国の適正PERを計算してみます。

PERは以下の式で求めることができます。

PER=1/(割引率-成長率)
  =1/(無リスク金利+株式リスクプレミアム-成長率)

今回は成長率を0%、無リスク金利を米10年国債利回り(2019年4月末で2.504%)として適正PERを計算し、4月末の実績PER※との乖離率(実績PER÷適正PER-1)の昇順に並べてみました。
※ナイジェリアとパキスタンはMSCI指数、StarCapital AGのデータを使用しました。

実績PER適正PER乖離率
ロシア5.58.4-34.4%
ナイジェリア5.86.2-6.9%
中国10.310.6-2.7%
トルコ7.57.41.0%
韓国11.310.93.4%
オーストリア12.111.19.1%
シンガポール13.911.817.6%
ポーランド12.610.421.5%
ハンガリー10.88.724.5%
日本13.810.630.3%
ドイツ16.311.838.0%
チェコ14.710.638.8%
ノルウェー16.511.839.7%
オーストラリア16.911.843.0%
台湾15.510.744.2%
スウェーデン17.311.846.4%
アイルランド15.210.446.6%
英国16.110.947.4%
カナダ17.511.848.1%
香港16.810.953.8%
オランダ18.411.855.7%
イタリア13.68.756.7%
スペイン14.79.457.1%
メキシコ15.69.958.1%
パキスタン9.15.759.7%
フランス17.610.961.1%
イスラエル17.510.665.3%
米国20.311.871.8%
フィンランド19.311.174.0%
タイ16.49.475.2%
ニュージーランド21.311.880.3%
デンマーク21.411.881.1%
ポルトガル16.18.785.5%
南アフリカ16.18.785.5%
スイス22.311.888.7%
ベルギー21.310.798.2%
ブラジル16.07.9102.1%
マレーシア20.49.9106.7%
フィリピン19.59.0116.5%
インドネシア19.89.0119.9%
ギリシャ14.15.7146.7%
インド28.19.0212.0%

実績PERと適正PERをグラフ化すると以下のようになります。
乖離率がマイナスとなったのはロシア、ナイジェリア、中国のみです。特にインド、ギリシャ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ブラジルは100%超と大幅に乖離しています。

ロシアとナイジェリアの実績PERは高いカントリーリスクプレミアムを加味しても割安に思えます。

織り込まれている成長率

実際には成長率がゼロというのは悲観的すぎるので、今度は実績PERに織り込まれている成長率※を計算してみました。
※成長率=株式リスクプレミアム+無リスク金利(2.504%)-株式益利回り(PERの逆数)

下表は計算した成長率の昇順に並べています。

実績PER成長率
ロシア5.5-6.25%
ナイジェリア5.8-1.20%
中国10.3-0.26%
トルコ7.50.13%
韓国11.30.30%
オーストリア12.10.75%
シンガポール13.91.27%
ポーランド12.61.71%
日本13.82.20%
ハンガリー10.82.26%
ドイツ16.32.33%
ノルウェー16.52.40%
オーストラリア16.92.55%
チェコ14.72.64%
スウェーデン17.32.68%
カナダ17.52.75%
台湾15.52.85%
英国16.12.94%
オランダ18.43.03%
アイルランド15.23.07%
香港16.83.20%
フランス17.63.47%
米国20.33.54%
メキシコ15.63.72%
イスラエル17.53.73%
ニュージーランド21.33.77%
デンマーク21.43.79%
フィンランド19.33.83%
スペイン14.73.88%
スイス22.33.98%
イタリア13.64.17%
タイ16.44.59%
ベルギー21.34.61%
マレーシア20.45.23%
ポルトガル16.15.31%
南アフリカ16.15.31%
フィリピン19.55.98%
インドネシア19.86.05%
ブラジル16.06.38%
パキスタン9.16.54%
インド28.17.55%
ギリシャ14.110.40%

無リスク金利には米10年国債利回りを使っているので、この成長率は米ドル建ての名目成長率になると思います。

インフレ調整後の実質成長率がゼロでも、名目成長率は米インフレ率の2%程度にはなるはずなので、ロシア、ナイジェリア、中国、トルコ、韓国、オーストリアあたりは割安なんじゃないかなと思います。

米国は名目潜在成長率が4%程度だったはずなので、PER20超でもフェアバリューといえるのかもしれません。

表の下のほうは織り込まれている成長率がかなり高いので厳しそうな気がしますね。最近注目しているパキスタンは実績PERは低いのですが、高いカントリーリスクプレミアムを加味すると見え方が変わってきます。

PERが比較的低めな新興国・フロンティア株のなかでも、ロシア、ナイジェリア、中国、トルコはカントリーリスクを考慮した上でも割安で、パキスタン、ブラジル、南アフリカ、タイは割高に思えます。


このカントリーリスクプレミアムのデータは今後も定期的にチェックしていきたいと思います。


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コメント

  1. 毎度、中身の無い事を書いてしまい申し訳もございません。

     現時点で、トランプのメキシコへの関税発動ツイッターを理由にして、
    NY上場株が絶賛下落中ですね(笑)。
    瞑想が役立っても困りますが、私も瞑想訓練しないと、私は絶賛含み損拡大中です。

    トランプが当選してからというもの、どうも、株価変動の直接の原因を考えるのが空しいので
    笑うしかないです。

    管理人さんはポートフォリオを公開されていますが、
    含み損益率は時価総額比率の順に小さい傾向なのか不明なので
    いずれの機会かに、リバランスの上手いやり方の特集をしていただけますとありがたいです。

    私は年寄なので、しばしば21世紀人の管理人さんと受け止め方の違いを感じております。
    私の若い頃は、米ソ冷戦たけなわの頃ですが、
    歴史学者のトインビーやら、地政学的リスクの議論は任期でした。
    トインビーは全ての国には栄枯盛衰のサイクルがあると言っています。
    中国も、中国3000年とか言いますが、中華圏が続いただけで、いろんな国の興亡の歴史です。
    その点で、アメリカの天下は長すぎるような気もします。

    地政学的リスクは、近年、別の文脈で頻出するキーワードになりましたけど、
    昔のそれは、陸軍軍医の森鴎外が翻訳したらしいドイツのクラウゼヴィッツ「戦争論」なども人気でしたが、
    超大国と言えど、陸軍国か海軍国かのどちらかであって、どちらも超大国にはなりにくいなどとありました。

    戦前の日本は陸海軍が予算の取り合いをしてましたが、軍艦は極めて高価ですので、
    海軍予算の方が多かったのではないでしょうか。
    ただし、戦前の陸軍はそれなりに船も持っていました。
    まあどうでも良い話ですが、自衛隊が自衛軍になると、防衛予算が急増し、
    しかも戦前の日本と違い、アメリカの高価な兵器を買わされるので
    帝国陸海軍は大変貧乏でしたが、日本製兵器で揃えられた時代よりも
    大変苦しい立場に立つと思います。
    軍事予算がGDPや国家予算の何パーセントを超えると経済が一変するとかいう研究も多いので、またご興味があれば。
    戦前は海軍のゼロ戦と陸軍の隼のエンジンは同じとか、一致協力すれば合理的な開発生産も出来ていたのに出来ていませんでした。
    ゼロ戦には三菱製と中島製があり、パーツ互換できませんでした。
    現在の最新鋭戦闘機は、最新鋭旅客機よりも高価です。

    いわゆる米中貿易戦争は、第三次世界大戦と見るべきだと思いますが、
    そのようにとらえると、アメリカが攻勢に出ている現在、
    中国に、ロシア、EUなどが戦略的に歩み寄れば、
    第二次世界大戦とは異なり、アメリカが自分と対等の力と異質の文化を持つ敵と戦う事になります。

    21世紀人の管理人さんと違い、私は敗戦後のごたごたから割合リアルに感じ取れるので、
    ドル危機が表だったものの他に何度もあったが、水面下で防いだような印象を持っています。

    例えばニクソンショック後、水面下でドル防衛のために大きな動きが何度も起きている事も
    最近ではチビチビ公開されてきていますので、
    理屈抜きに、MMTなどというものは、所詮一過性のブームであって、
    ブームが過ぎれば堅実な理論とは言えなくなるような気がします。

    しかし金本位制的なシステムには世界大戦レベルの破壊と混乱の後の妥協でしか
    戻れないとも思うので、結局、戻れないと思います。

    だからといって、お金の概念が抽象的になり、システミックリスクが起きた場合に
    対処する方法を想像すらできない現在はやはり異常だと思います。

    何が言いたいのかですが、年寄の私には、ドル基軸体制も案外と脆弱に感じられており、
    近年流行のアメリカ株投資も、アメリカの天下が前提なので、
    どうなることやら、と思います。

    仮に、世界をアメリカ、中国とで縄張り協定が成立しても、
    米ソ冷戦当時は経済が東西陣営に分かれていましたので、アメリカ追従の一択でしたが、
    ファーウエイたたきなどがおきても、アメリカ追従か中国追従かの二択にはなれません。

    21世紀人には、ドル基軸がどれくらい堅固なものにうつっているのでしょうね。
    (活字にはなっていませんが、
    日本はアメリカの植民地なので、日本はドル本位制のように私は感じています。)

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    1. 米国のGDPが2030年までには中国、2040年までにはインドに抜かれるという風な予測は日本語でも幾度となく報道されていますし、米国一極体制が崩れて多極体制に移っていくのは織り込み済みなのではと思っています。
      米国株投資は高い流動性や株主還元、先進国では数少ない人口増加国であること等が魅力だと思っているので、将来経済規模で中国やインドに抜かれるという既に広く知られた事実は特に問題なさそうな気がします。

      米ドルがそのうち基軸通貨でなくなるという話もよく聞きますし、米国株投資をしている方なら世代にかかわらず誰でも意識しているんじゃないかと思います。
      米国は米ドルが基軸通貨であることでインフレが抑制されていると思うので、基軸通貨でなくなったら高インフレ=長期金利上昇で株価にとっては明らかにマイナスでしょうけど、他にどれくらい影響があるのかはよく分かりませんね。

      「株式投資の未来」によると、1900年〜2003年までの世界の株式の平均実質リターンは1位スウェーデン、2位オーストラリア、3位南アフリカ、4位アメリカ、5位カナダ、6位イギリスで、その間に基軸通貨国でなくなったイギリスも案外と高いリターンになっています。
      必ずしも凋落していく国の株式リターンが悪くなる訳でもないので、結局のところは国際分散投資が重要ということなんでしょうね。

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