日米の株式リスクプレミアムの推移


先日、ニューヨーク大学アスワス・ダモダラン教授が推計した米国株のリスクプレミアムについての記事を書きましたが、今回は米国株と日本株のリスクプレミアムについての面白い資料を見つけたのでご紹介します。
(過去記事:米国株のリスクプレミアムと期待リターンの推移

株式リスクプレミアムの時系列変動の推計

今回ご紹介するのはイボットソン・アソシエイツ日本法人の山口勝業氏の「株式リスクプレミアムの時系列変動の推計(PDF)」というレポートです。

株式リスクプレミアム(ERP:Equity Risk Premium)は株式の期待リターンから無リスク金利(長期金利)を差し引いたものですが、これは直接観測することができないため、何らかの方法で推計する必要があります。

伝統的なヒストリカル法では株式と長期国債の過去のリターンの差を便宜的にリスクプレミアムとしているそうです。

上記PDFではこのヒストリカル・リスクプレミアムをEXR(Equity Excess Return:超過収益率)と呼んで、ERPとは区別しています。

ERPを推計する方法が書かれていますが、これは難しいので詳しくはPDFを読んでいただくとして、本記事では抜粋したデータを見ていきます。

日米の株式と長期国債のリターン比較(1952〜2013年)

1952年1月~2013年12月の日米の株式と長期国債のリターンとEXR(超過収益率)は以下のようになっています。
(日本株はTOPIX、米国株はS&P500、米国債券は満期約20年の長期財務省証券、日本債券は満期約10年の日本国債)

出典:株式リスクプレミアムの時系列変動の推計

EXR(超過収益率)は幾何平均で米国が4.26%、日本が5.06%です。

名目株式トータルリターン(幾何平均)は米国のほうが若干高いですが、日本のほうが長期金利が低いため、EXRは日本のほうが高くなっています。

以前どこかで読んだ記事では「米国株のリスクプレミアムは日本株よりも高い」と書かれていたような気がしますが、この期間では逆ですね。

また、インフレ控除後の実質リターン(幾何平均)は米国株が4.25%、日本株が5.04%、米国債券が2.66%、日本債券が1.87%となっています。

株式リターンは日本、債券リターンとインフレ率は米国のほうが大きいですが、意外にも日米でそれほど大きな差はないですね。

米国株のリスクプレミアム推移

下グラフは米国のEXR(超過リターン)とERP(株式リスクプレミアム)の推移です。

EXRは幾何平均(G mean)と算術平均(A mean)の二種類がありますが、ヒストリカル法では期間が長くなるほど収束していき、ERPと近い数値になっています。
出典:株式リスクプレミアムの時系列変動の推計

米国のERPは1960年までは2〜3%でしたが、1970年代以降はおおよそ5%前後で推移しています。好況期には低下、不況期には上昇していますね。

ITバブルでは大きく下がったあとにバブル崩壊で反転上昇していますが、リーマンショックでは大して下がらないままに急上昇しています。

アスワス・ダモダラン教授の推計値と比べると全体的にやや高めで、ITバブルやリーマンショック時の変動が大きいようです。
(過去記事:米国株のリスクプレミアムと期待リターンの推移

日本株のリスクプレミアム推移

下グラフは日本のEXR(超過リターン)とERP(株式リスクプレミアム)の推移です。

日本のEXRは米国と違ってなかなか収束せずに長期にわたって低下し続けており、ERPの形もかなり違いますね。
出典:株式リスクプレミアムの時系列変動の推計

日本のERPは1980年代までは2〜3%で安定していますが、バブル崩壊後は上昇し続けており、2003年頃からは一旦低下していますが、リーマンショック、東日本大震災を受けて2011年頃には30%近くまで急騰しています。

日銀はリスクプレミアムへの働きかけを目的としてETF買い入れをしていますが、これを見るとたしかに米国と比べて高すぎるので人為的にでも圧縮する必要があるのかなと思いますね。

2013年12月で終わっているので2019年現在ではどれくらいまで下がったのか気になります。今後は米国のように安定していくのでしょうか。

日米の実質期待リターンの推移

下グラフは日米の実質期待リターン(ERP+長期金利-直近1年間のCPI上昇率)の推移です。
出典:株式リスクプレミアムの時系列変動の推計

日本は前半でかなり激しく変動していますが、当時は国債の市場取引がないために長期金利が固定されていたのが原因だそうです。1973年前後の大幅マイナスは長期金利が変わらないのにオイルショックでインフレ率が急騰したからなんですね。

1980年代〜1990年代では米国の実質期待リターンのほうが高いですが、2000年代以降は日本のほうが高くなっています。

2000年代以降では日米ともにほぼずっと実質期待リターンが5%を上回っており、これを見る限りでは目を瞑ってとにかく株式をバイ&ホールドしておけば報われそうに思えます。
(このグラフは2013年で終わっていますが、ダモダラン教授の推計値を基に計算すると2018年時点の米国株の実質期待リターンは6.57%です。)


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