超大型株のリターン分布を調べてみる


前回の記事に引き続き、リターン分布についての記事です。
(過去記事:【リターン分布の歪み】ほとんどの銘柄は市場平均を下回る

大型株よりも小型株、バリュー株よりもグロース株のほうが歪みが大きい

気になったのでもう少し調べてみると、大型株よりも小型株、バリュー株よりもグロース株のほうがリターン分布の歪みが大きい傾向があるようです。

中大型株のリターン分布(バリュー株とグロース株)

中大型株のリターン分布を見てみると、バリュー株よりもグロース株のほうがマイナスリターンの銘柄が多く、より左右非対称に歪んでいます。バリュー株は比較的バラツキが小さいですが、690%以上の超高リターン銘柄はグロース株よりもバリュー株のほうが多くなっています。
(詳しくはAlpha Architectの記事をご参照ください。)

出典:Alpha Architect

小型株のリターン分布(バリュー株とグロース株)

小型株のリターン分布は中大型株と比べるとマイナスリターンが非常に多く、完全に左右非対称で右肩下がりの分布になっています。また、小型株でもバリュー株よりもグロース株のほうがマイナスリターンの銘柄が多いです。

出典:Alpha Architect

リターン分布は中大型バリュー株、中大型グロース株、小型バリュー株、小型グロース株の順に歪みが大きくなる傾向にあるようです。

超大型株のリターン分布を調べてみる

超大型株ではもう少し左右対称の分布になるんじゃないかなと思い、1997年のフォーチュン500※(売上高全米上位500社)のうち上位100社のトータルリターンを調べてみました。
FORTUNEのデータベースでは1955年以降のフォーチュン500のリストを見ることができます。

下表はフォーチュン500上位100社の1997年1月〜2019年7月の年率トータルリターンを降順に並べたものです。
(途中で買収された銘柄については、最初から買収した側の銘柄を保有していたものとしているため、実際に得られたリターンとは異なります。また、HCAヘルスケアは一度非公開になったあとに再上場しているので除外しています。大雑把に調べたので誤りがあるかもしれません。)

CompanyTickerCAGR
Costco WholesaleCOST16.24%
LoewsLOW16.16%
Home DepotHD15.97%
Altria GroupMO13.41%
Nabisco Group HoldingsMO13.41%
Rockwell AutomationROK13.10%
SyscoSYY12.51%
Wal-Mart StoresWMT12.43%
Lockheed MartinLMT12.27%
CignaCI11.99%
TargetTGT11.99%
CaterpillarCAT11.88%
United TechnologiesUTX11.82%
BoeingBA10.80%
McDonnell DouglasBA10.80%
American ExpressAXP10.79%
Johnson & JohnsonJNJ10.17%
Honeywell Intl.HON10.11%
ChevronTexacoCVX9.75%
TexacoCVX9.75%
Walt DisneyDIS9.69%
PepsiCoPEP9.56%
Procter & GamblePG9.50%
Chase Manhattan Corp.JPM9.25%
J.P. MorganJPM9.25%
3MMMM9.19%
AetnaCVS9.02%
ConocoPhillipsCOP8.98%
AllstateALL8.43%
McKessonMCK8.21%
Kimberly-ClarkKMB8.16%
Intl. Business MachinesIBM8.12%
WyethPFE7.88%
Exxon MobilXOM7.82%
MobilXOM7.82%
GTEVZ7.45%
MCI CommunicationsVZ7.45%
NynexVZ7.45%
Verizon CommunicationsVZ7.45%
IntelINTC7.15%
Morgan Stanley GroupMS7.08%
MerckMRK6.95%
KrogerKR6.88%
Sara LeeTSN6.87%
Dow ChemicalDD6.65%
DuPontDD6.65%
Archer Daniels MidlandADM6.04%
Bristol-Myers SquibbBMY5.97%
Marathon OilMRO5.67%
Coca-ColaKO5.65%
Compaq ComputerHPQ5.51%
Digital EquipmentHPQ5.51%
Hewlett-PackardHPQ5.51%
ConAgra FoodsCAG5.20%
MotorolaMSI5.01%
AmocoBP4.93%
Atlantic RichfieldBP4.93%
Bank of America Corp.BAC3.65%
BankAmerica Corp.BAC3.65%
Merrill LynchBAC3.65%
International PaperIP3.45%
Federated Dept. StoresM3.09%
AmeritechT2.77%
AT&TT2.77%
BellSouthT2.77%
SBC CommunicationsT2.77%
Ford MotorF2.27%
General ElectricGE0.94%
AlcoaARNC0.03%
CiticorpC-1.36%
CitigroupC-1.36%
XeroxXRX-1.68%
SprintS-2.54%
Goodyear Tire & RubberGT-4.46%
American Intl. GroupAIG-7.87%
J.C. PenneyJCP-14.93%
American Stores破綻-100.00%
AMR破綻-100.00%
Chrysler破綻-100.00%
Eastman Kodak破綻-100.00%
Enron破綻-100.00%
Fannie Mae破綻-100.00%
Fleming破綻-100.00%
General Motors破綻-100.00%
Kmart Holding破綻-100.00%
Lehman Brothers Hldgs.破綻-100.00%
Sears Roebuck破綻-100.00%
UAL破綻-100.00%
Columbia/HCA HealthcareHCA-
MetLife相互会社-
New York Life Insurance相互会社-
State Farm Insurance Cos相互会社-
Albertson's非公開-
College Retirement Equities Fund非公開-
Georgia-Pacific非公開-
Prudential Ins. Co. of America非公開-
Safeway非公開-
Supervalu非公開-
Teachers Insurance & Annuity Assn.非公開-
United Parcel Service非公開-

非公開、相互会社、HCAを除いた88銘柄の累積トータルリターン分布をグラフ化すると以下のようになります。縦軸が銘柄数、横軸が累積トータルリターン(50%刻み)です。
累積トータルリターンの平均値は479%、中央値は338%です。ちなみに同期間のS&P500は502%だったので、88銘柄を均等にバイ&ホールドするとS&P500をアンダーパフォームしていたことになります。

マイナスリターンは全体の22%(19銘柄)で、平均値を下回っているのは64%(56銘柄)です。

前回の記事でご紹介したS&P500構成銘柄のリターン分布(下グラフ)と比べると、上記88銘柄は平均値と中央値の乖離が小さく、マイナスリターンの割合も少ないです。

出典:Alpha Architect

被買収企業は買収した側を最初から保有していたものとしているので実際のリターンとは違っている上、サンプル数が少なすぎるのでこれだけでは何とも判断できないとは思いますが、やっぱり規模が大きくなるほど効率性が高まるのでリターンの歪みが小さくなる傾向にありそうな気がします。

ディフェンシブ株に限れば歪みは小さくなりそう

88銘柄中破綻企業は12銘柄(14%)と予想以上に多く感じますが、業種は小売が4銘柄、金融・航空・自動車がそれぞれ2銘柄、あとは電力(エンロン)と写真用品(イーストマン・コダック)となっており、景気敏感株がほとんどです。

リターン下位もT(AT&T)やS(スプリント)以外は景気敏感株ですし、フォーチュン500のうちディフェンシブセクターを抜き出してリターン分布を調べるとマイナスリターンや極端な高リターンが減って歪みが小さくなりそうです。


30銘柄で構成されるダウ平均がS&P500と比べて遜色ないパフォーマンスを残せていることを考えると、大型優良株であればリターン分布の歪みも比較的小さく、それほど分散しなくても問題ないということなのかもしれません。


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