(過去記事:MSCIパキスタンのCAPEレシオを計算してみる)
この方法で実際に近い数値を出すことはできると思うのですが、時系列のPERが分からないMSCIナイジェリアはそもそも計算ができません。
今回は私が保有しているNGE(グローバルX MSCIナイジェリアETF)について、構成上位銘柄のCAPEレシオを概算してみました。
NGE構成銘柄のPER、PBR、配当利回り
まずはNGE構成銘柄のPER、PBR、予想配当利回りを表にまとめてみました。データはすべてMorningstarのものです。NGEのベンチマーク「MSCI All Nigeria Select 25/50」は2019年8月末時点でPER4.94、PBR0.80、配当利回り7.18%なので加重平均した数値とはちょっと差がありますね。
銀行株ではPER2台という超激安株も複数存在しており、PER10超はNestle Nigeria PLC(ネスレの子会社)やNigerian Breweries PLC(ハイネケンの子会社)、Unilever Nigeria PLC(ユニリーバの子会社)、Guinness Nigeria PLC(ディアジオの子会社)の4銘柄のみです。
Nigerian Breweries PLCの配当利回りはPERの割に高すぎますが、Morningstarの2018年の1株当たり配当を使うと配当利回りは4.76%になります。Oando Plcの配当利回りもおかしいですが、これはよく分かりませんでした。
NGE構成銘柄のCAPEレシオ概算
全銘柄は面倒なので、NGEの上位10銘柄※についてCAPEレシオを概算してみました。※MTN Nigeria Communications PLCとEcobank Transnational IncはMorningstarで現地通貨建てEPSのデータが載っていなかったので、この2銘柄を除いた10銘柄を対象にしています。
EPS推移(2009~2018年)
まずはMorningstarで現地通貨(ナイジェリア・ナイラ)建ての過去10年分EPSを調べました。意外にも赤字は2011年のUnited Bank for Africa(-0.23NGN)のみでした。
どの銘柄も急成長しているように錯覚してしまいますが、これはナイジェリア・ナイラ建てだからです。
ナイジェリアは高インフレ国なので、名目成長率が10%程度では実質成長率はほとんどゼロということになります。
実質EPS推移(2009~2018年)
ナイジェリアのCPI(World Bankのデータ)を使って各銘柄の実質EPSを計算してみました。(X年の実質EPS = 名目EPS × 2018年のCPI ÷ X年のCPI として計算します。)
CAPEレシオは現在株価を実質EPSの10年平均で割って計算します。上表の実質EPSをもとに各銘柄のCAPEレシオを計算すると以下のようになります。
Nestle Nigeria、Unilever Nigeria、Stanbic IBTC Holdingsは高めですが、銀行株はCAPEレシオでも2.42〜7.62と非常に低いです。
NGE構成銘柄のウェイトは現在のものしか分からないのでNGE自体のCAPEレシオを概算することはできませんが、少なくともロシアやトルコ並みの低CAPEではあるんじゃないかなと思います。
NGEの株価は年初来で約20%下落しているので2018年末よりも現在はさらに低CAPEになっているはずですし…
実質EPS成長率
せっかくなので実質EPS成長率も計算してみました。マイナスは赤に白抜きの数値にしています。Stanbic IBTC Holdingsはハイテク株みたいな高成長率ですが、これでPER5.55、PBR1.38、配当利回り5.71%というのは凄いですね。成長鈍化を織り込んでるんだと思いますが…
NGE上位3銘柄のGuaranty Trust Bank、Nestle Nigeria、Dangote Cementも過去3年、過去5年、過去9年全てで実質ベースでプラス成長を維持しています。
PER2台のAccess BankやZenith Bankも基本的には実質ベースできちんと成長できているようです。同じ低PER銀行株でも日本の地銀とは違って資金需要が旺盛なフロンティア国の銀行なので、このPERはさすがに低すぎるんじゃないかなと思います。
Nigerian BreweriesとUnilever Nigeriaは過去10年間の売上成長率もぞれぞれ年率8.35%と9.53%であり、Nestle Nigeria Plcの17.80%に比べるとかなり見劣りしますし、同期間のインフレ率11.78%を大きく下回っています。
Nestle Nigeria Plc
最後にちょっとだけNestle Nigeriaについて調べてみました。短期的には低PERの景気敏感株のほうが断然魅力的ですが、Nestle Nigeriaはもし買えるなら長期保有したくなるような優良銘柄に思えます。
業績は以下のようにインフレ調整後でも安定成長しています。過去9年の実質年率成長率は売上高+4.03%、営業利益+3.90%、純利益(EPS)+5.43%です。
過去10年平均のROEは74.4%、ROAは22.0%、ROICは39.0%と非常に高いです。
配当は連続増配という訳ではなく、業績不振の年は普通に減配していますが…
また、ナイジェリアでは原油価格下落が原因で外貨準備高(下グラフ)が急減したため、2015年第2四半期頃から2017年初めまでは厳しい外貨不足が続いていました。
source: tradingeconomics.com
下記記事によると、ナイジェリアでは外貨不足のために原材料を輸入できず、需要はあっても生産がままならない状況だったそうですが、ネスレは原材料の現地調達化を進めてきたため、他社が苦しむ中でも業績を伸ばせたそうです。
(参考:売るために作る、アフリカでの消費財の戦い方 Africa Business Partners)
私は新興国の生活必需品株はまだまだ成長が期待できそうで良いんじゃないかなと思っていて、メキシコの飲料会社FMX(フォメント・エコノミコ・メヒカノ)を少しだけ保有しています。本当は新興国・フロンティア国の生活必需品株を集めたETFがあったら欲しいなと思っているのですが…
(過去記事:【新興国生活必需品】FMX(FEMSA)とABEV(アンベブ)が気になる)
NGEは生活必需品セクター比率が比較的高めで、世界経済の影響を受けやすい素材やエネルギーセクターの比率がそれほど高くないのも好みです。
(同じく低PERで注目しているPAK(グローバルX MSCIパキスタンETF)は素材とエネルギーセクターが半分以上を占めているため、セクター構成的にはあまり良くないと思っています。)
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