為替ヘッジをするとヘッジコスト(FXの場合はマイナススワップ)分だけリターンが下がりますが、為替リスクが無くなる分だけボラティリティが下がるはずです。
ボラティリティが高くなるほど幾何平均リターンは小さくなります。そのため、為替ヘッジコストよりもボラティリティ低下の効果のほうが大きければ、幾何平均リターンは為替ヘッジ有り>為替ヘッジ無しになるはずです。
過去記事:期待リターン(算術平均リターン)と幾何平均リターン
そこで、今回は米国株のドル建てと円換算ではどれだけボラティリティが違ってくるのかを調べてみました。
※ボラティリティは12カ月ローリング、ドル建て株価指数はMSCI、ドル円はFREDのデータを使いました。
過去記事:MSCI指数データのダウンロード方法
米国株(MSCI USA)の12カ月ローリング・ボラティリティ
ドル建てと円換算の比較
まずは米国株(MSCI USA)の12カ月ローリング・ボラティリティを比較してみます。期間は1972年1月末~2019年9月末で、月次のデータを使っています。ドル建ては最小値3.83%、平均値13.88%、最大値30.72%、円換算では最小値5.15%、平均値17.74%、最大値35.55%となりました。
円換算とドル建ての差
円換算ボラティリティからドル建てボラティリティを引いた数値は以下のようになります。最小値は-7.45%、平均値は3.86%、最大値は12.51%となりました。
全世界株(MSCI ACWI)の12カ月ローリング・ボラティリティ
ドル建てと円換算の比較
せっかくなので全世界株(MSCI ACWI)についても同様に調べてみました。期間は1988年12月末~2019年9月末で、月次のデータを使っています。ドル建ては最小値2.83%、平均値13.68%、最大値35.62%、円換算では最小値3.97%、平均値16.14%、最大値37.87%となりました。
円換算とドル建ての差
円換算ボラティリティからドル建てボラティリティを引いた数値は以下のようになります。最小値は-8.62%、平均値は2.46%、最大値は9.89%となりました。
米国株よりも全世界株のほうが円換算とドル建ての差が小さいのかなと思いましたが、2000年以降ではほとんど差が小さくなり、米国株は平均3.67%、全世界株は平均3.09%でした。
まとめ
米国株の場合、円換算ボラティリティはドル建てと比べて3~4%ポイント程度高くなると思っておけば良さそうです。幾何平均リターン ≒ 算術平均リターン - 1/2×分散(標準偏差の2乗)
なので、たとえばボラティリティが15%→18%になると、幾何平均リターンは0.495%下がる計算になります。
ドル円の為替ヘッジコスト=日米の短期金利差として2%程度(為替ヘッジをしたことがないので想像ですが…)とすると、3~4%ポイント程度のボラティリティ低下のためにFXで為替ヘッジをするのは割に合わなさそうに思えてきました。
将来的に日米ともにほぼゼロ金利みたいなことになってヘッジコストがもっと安くなればやってみたいですが、現時点ではヘッジコストのほうが大きそうなのでやっぱり止めておこうかなと思います。
ただ、購買力平価からみてドル円が割高なときにだけ為替ヘッジするとかは良さそうな気もしますね。ここから更にドル高円安になるよりはドル安円高の可能性のほうが高そうですし…
補足:トータルリターン比較
ついでにトータルリターン比較のグラフも作ったので貼っておきます。MSCI USA(1971年1月末=100)
MSCI ACWI(1987年12月末=100)
MSCI ACWI vs MSCI USA(1987年12月末=100)
よろしければ応援クリックお願いします
コメント