DCF法と株式の価値


DCF法は企業が将来的に生み出すキャッシュフローを割引率で割り引くことで企業価値を算出します。

たとえば1年後のEPSを100、割引率を10%、成長率を4%として現在価値を計算すると下表のようになります。
※米国株の名目期待リターン10%、名目成長率≒名目GDP成長率4%のイメージです。n年後の現価係数は1/(1+割引率)^n、n年後の現在価値=n年後のEPS×n年後の現価係数、TV(Terminal Value:永続価値)=最終年の翌年のEPS/(割引率-成長率)

年数EPS現価係数現在価値
11000.9191
21040.8386
31080.7581
41120.6877
51170.6273
61220.5669
71270.5165
81320.4761
91370.4258
101420.3955
111480.3552
121540.3249
131600.2946
141670.2644
151730.2441
161800.2239
171870.2037
181950.1835
192030.1633
202110.1531
212190.1430
222280.1228
232370.1126
242460.1025
252560.0924
262670.0822
272770.0821
282880.0720
293000.0619
303120.0618
TV5,4060.06310
合計1,667

この場合、理論株価は1,667、PERは16.7(理論株価1,667÷1年後のEPS100)ということになります。

少し前にジェレミー・シーゲル教授が以下のような発言をしていましたが、上表でも1年後の利益の価値は91÷1,667=5.5%なので、仮に1年後の利益がゼロになっても理論的には株価は5.5%しか下落しないということになります。1〜3年後の利益がゼロになると15.5%下落します。これはその後速やかに元に戻ればの話なので、長期的な影響が大きそうなポスト・コロナには当てはまらないと思いますが。
株式の価値の90%以上は、1年後以降から将来の利益によるものだ。
今年が悪くなっても・・・多くの不確実性があることは同意するが、つまり、短期的な景気後退が企業収益をめちゃくちゃにする可能性はあるものの、長期的な価値が大きく損なわれるわけではない。
引用:The Financial Pointer
DCF法では遠い将来の利益の割引現在価値はとても小さくなってしまうため、今回の計算では1年後の利益の価値が全体の5.5%を占めるのに対して、31年以降の利益の価値は18.6%にとどまります。

期間現在価値比率
1年915.5%
2-5年31719.0%
6-10年30818.5%
11-20年40824.5%
21-30年23314.0%
31年-31018.6%
合計1,667100.0%

ということは、今から31年後に倒産する企業と永続する企業では価値は18.6%しか違わないということになります。
(30年間年率4%で安定成長しているのに31年目にいきなり倒産するというのは非現実的ですが。)

21年後に倒産する企業と永続する企業では32.6%、11年後に倒産する企業では57.1%の差になります。

理論株価からPERを計算すると、永続する企業は16.7、31年後に倒産する企業は13.6、21年後に倒産する企業は11.2、11年後に倒産する企業は7.2、6年後に倒産する企業は4.1です。

DCF法の考え方をすると遠い将来の利益は現在価値に割り引くと小さくなるので、株式投資を考える上では数十年先のことはあまり気にならなくなると思います。

以前どこかで「株主資本主義では何十年も先のことは現在価値に割り引くと非常に小さくなるので、地球環境のような長期的な問題は軽視されがち」みたいな話を読んだ記憶があります。

シーゲル教授の「株式投資の未来」の副題が「永続する会社が本当の利益をもたらす」なので、最初は永続することが重要なんだなと思っていましたが、実際には株式投資はイメージよりも近視眼的に感じます。


よろしければ応援クリックお願いします
にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

コメント