米国株のインプライド・リスクプレミアムはDamodaran Onlineに1961年以降の年次データが載っていますが、このサイトでは他の国についても見やすい月次のチャートで見られるので便利です。
過去記事: 『割引率=長期金利+株式リスクプレミアム』の安定感について
Market Risk Premiaのインプライド・リスクプレミアム
Market Risk Premiaでは以下の国のインプライド・リスクプレミアムを見ることができます。(ナイジェリアなどマイナー?な国はありません。)
出典:Market Risk Premia |
国をクリックすると時系列チャートが表示されます。米国はインプライド期待リターンが5.21%、無リスク金利が0.55%、インプライド・リスクプレミアムが4.66%となっています。
出典:Market Risk Premia |
無リスク金利について
インプライド・リスクプレミアムはインプライド期待リターンから無リスク金利を引いて計算しますが、Market Risk Premiaでは国によって無リスク金利にその国の自国通貨建て10年国債利回りを使っていたり、米国10年国債利回りを使っていたりするので注意が必要です。たとえば最もリスクプレミアムが高いのはロシアになっていますが、ロシアではロシアの長期金利(7月末では5.93%)ではなく、米国の0.55%を使っています。
出典:Market Risk Premia |
一方、最もリスクプレミアムが低いインドでは、無リスク金利にインドの長期金利(5.84%)を使っています。
出典:Market Risk Premia |
ダモダラン教授のブログにもあったのですが、無リスク金利として使えるのはあくまでもデフォルトリスクがない国の10年国債利回りであって、デフォルトリスクがある国の場合は下式のいずれかを使う必要があります。
- 現地通貨建て無リスク金利=その国の10年国債利回り-現地通貨建て国債のデフォルトスプレッド
- 現地通貨建て無リスク金利=米国10年国債利回り+(現地通貨の予想インフレ率-米ドルの予想インフレ率)
無リスク金利を引く前のインプライド期待リターンの比較も見られるので、他の国と比べるときは併せて見たほうが良さそうです。
(期待リターン=配当利回り+成長率、株式益利回り+成長率、として分解したものが載っています。)
出典:Market Risk Premia |
インプライド・リスクプレミアムの計算方法
インプライド・リスクプレミアムは下式から割引率(期待リターン)kを求め、そこから無リスク金利を引いて計算しているようです。Mv0:市場価格
D1、D2、D3:1~3年後の予想配当
g:永久成長率
E3: 3年後の予想利益
BV2:2年後の簿価
2つ目の式は一瞬戸惑いましたが、g=ROE(E3÷BV2)×内部留保率((E3-D3)/E3)ということで、この式を1つ目の式に代入すると3つ目の式になります。通貨は現地通貨建てです。
そして計算する際にはg=0としているようなので、3つ目の式は以下のようになります。
- MV0=D1/(1+k)+D2/(1+k)^2+E3/(k(1+k)^2)
S&P500のインプライド・リスクプレミアムを計算してみる
現在(2020/8/13終値)のS&P500についてこの方法でインプライド・リスクプレミアムを計算してみました。私はGoogleスプレッドシートを使っているのですが、Goal Seekという未知の値を求めるアドオンがあったので、先ほどの式にMV0、D1、D2、E3を入れて割引率kを求めました。
(予想DPSはCMEのS&P 500 Annual Dividend Index Futures、予想EPSはYRI S&P 500Earnings Forecast(PDF)のAnalysts' Consensusを使いました。)
米国10年国債利回りは0.72%なので、インプライド・リスクプレミアムは5.15%-0.72%=4.41%になります。
ちなみにDamodaran Onlineでは2020/7/1で5.23%となっているので、結構差があります。
(今回の計算方法ではg=0%として簡易計算しているので低めに出ているんだと思います。)
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