『割引率=長期金利+株式リスクプレミアム』の安定感について


割引率(期待リターン)は以下の式で表されます。

 割引率=長期金利(無リスク金利)+株式リスクプレミアム

株価はその企業が将来稼ぎ出すフリーキャッシュフローの総和をこの割引率で現在価値に割り引くことによって求められます。

長期金利の低下は同時に将来の成長率低下を意味するので長期的な株式保有者にとって100%プラスという訳ではありませんが、少なくとも短期的には金利低下は割引率低下を通じて株価を上昇させるはずです。
 過去記事:低金利が必ずしも良いとは限らない

ですが、割引率は長期金利と株式リスクプレミアムで構成されているので、長期金利が下がったぶんだけ割引率も下がるとは一概には言えません。

下図は割引率(名目期待リターン)の推移(1961〜2020年)です。
Damodaran Onlineの長期金利(T.Bond Rate)と株式リスクプレミアム(Implied Premium(FCFE))を使用しています。2020年は6/1時点のデータです。
1990年代後半以降は8%前後で安定しており、長期金利の低下を株式リスクプレミアムの上昇が相殺する形となっています。

直近では2019年、2020年と株式リスクプレミアムと長期金利がともに低下し、名目期待リターンは歴史的な低水準となっていますが、それでも未曾有の0%台まで大幅低下した長期金利と比べると安定感があります。

FEDのQEによって株式はバブル化している、という話はよく耳にしますが、実際には長期金利が大幅に低下するのと同時に株式リスクプレミアムが上昇しているので、QEによって長期債がバブル化したというのは正しくても、株式にはそれほど大きな影響を及ぼしていないのではないかと思います。

上図の名目期待リターンからインフレ率を引いて実質期待リターンにすると以下のようになります。
※1961〜2019年はCPI対前年比(FPCPITOTLZGUSA)、2020年は6/1時点のブレークイーブンインフレ率(T10YIE)を使用しました。
1980年前後の高インフレ期を除くと6%程度で安定しています。

よく考えてみると、割引率(期待リターン)は「投資家が株式に対してどれだけのリターンを期待するのか」ということなので、この数値が長期金利の水準に関わらず安定しているというのは直感的にも正しいような気がします。

株式リターンはリスクを負担することに対する対価です。株式に投資して高いリターンが得られるのは投資家が恐怖心を感じるからであり、これはインフレ調整後では長期的にみれば一定で推移していると考えたほうが個人的には納得感があります。
(長期金利が下がったから株式投資に対する恐怖心が減ったり、長期金利が上がったから株式投資に対する恐怖心が増えたりというのはおかしいように思えます。もちろん株式リスクプレミアムは市場心理によって大きく振れるものなので、恐慌下では投資家がより強い恐怖心を抱くことで割引率は上昇するはずですが。)

結局のところ、投資家が株式に期待するリターンは長期金利の水準に関わらずインフレ調整後では6%程度に収束するということで、株式リスクプレミアムとか長期金利のことはあまり気にしなくても、

 名目期待リターン(割引率)≒ 6% + インフレ率

くらいに考えておいてもいいのかなという気がしました。


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コメント

  1. 投資の素人2020/06/10 21:46

    こんにちは、投資の素人です。
     a) PER=1/実質期待リターン
    だと思います?が、とすれば、記事の最後の関係式
     b) 実質期待リターン=名目期待リターン(割引率)ーインフレ率≒ 6%
    が意味しているのは
     c) PER=1/実質期待リターン=1/0.06≒16.7
    で定数である、ということと同じでしょうか?
    私=素人は何か勘違いしていると思いますので、誤りを指摘の上、正解を教えてください。
    また次の経験則とはどのように関連しているのでしょうか?
     d) PER ≒ 20 - インフレ率
    (参照)https://www.financialpointer.com/jp/%e7%b1%b3%e5%9b%bd%e6%a0%aa%e3%81%ae%e3%83%aa%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%80%81per%e3%80%81%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%95%e3%83%ac%ef%bc%9a%e3%82%b8%e3%82%a7%e3%83%ac%e3%83%9f%e3%83%bc%e3%83%bb/

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    1. それだと成長率を無視しているので、PER=1/(期待リターン-成長率)だと思います。
      https://ronaldread.blogspot.com/2018/07/between-growth-rate-and-pe-ratio.html
      実質期待リターンが6%くらいになるのではと書いたのは長期的にはそれくらいに収束するんじゃないかなという意味で、常に6%で固定されていると思っている訳ではありません。
      長期金利も株式リスクプレミアムも成長率も変動するものなので、この考え方でも当然PERも変動します。

      PER ≒ 20 - インフレ率は下記記事をご覧ください。
      https://ronaldread.blogspot.com/2020/05/20-rule.html
      https://ronaldread.blogspot.com/2020/05/global-20-rule.html

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