理由は、割引率の変化がPERに与える影響は高成長が織り込まれている高PER株ほど大きいので、割引率が低下すれば高PERのグロース株が低PERのバリュー株をアウトパフォームする、割引率が上昇すれば反対になるというもので、これは分かりやすいと思います。
実際に長期金利とグロース/バリューの推移を見てみると、長期金利低下局面でグロースがアウトパフォームしています。
出典:Livewire |
ただし、「割引率=無リスク金利+株式リスクプレミアム」なので、金利が下がっても株式リスクプレミアムが上昇する場合もあり、必ずしも金利低下=割引率低下となる訳ではありません。
ダモダラン教授のインプライド・リスクプレミアムは2000年以降金利低下を相殺する形で上昇しており、割引率は2000〜2019年の間7〜8%で推移してきています。個人的にはリーマンショック以降のグロース優位は金利低下によるものではないんじゃないかなと思っています。
過去記事:リーマンショック以降のグロース優位は金利低下ではなく第4次産業革命の過小評価が原因なのでは
長期金利と高配当vs低配当
一方で長期金利と配当については、低金利下では債券の代替として高配当株が買われ、金利上昇局面では売られる、という話をよく耳にします。一見すると分かりやすい説明のように思えますが、バリュー株と高配当株にはかなり重複があるはずで、そうすると「バリューは金利上昇局面でアウトパフォーム、金利低下局面でアンダーパフォーム」という先ほどのグラフと矛盾してしまいます。
よくよく考えると金利低下の恩恵を受けるのは高配当株に限ったことではなく、冒頭の説明の通り割引率の変化がPERに与える影響は高成長が織り込まれている高PER株ほど大きいので、むしろ低配当株のほうが金利敏感になるはずです。
実質長期金利と高配当株
シーゲル教授はインカムを求める投資家がデフレなら債券のクーポンに、インフレなら株式の配当にシフトするとして、低金利が継続し、インフレが上昇すると高配当株が人気化するのでは、と予想しているようです。(そしてシーゲル教授も高配当株とバリュー株を概ね同一視しているようです。)
参考:ファクター格差はITバブル以来:ジェレミー・シーゲル(The Financial Pointer)
実質長期金利とバリュー(≒高配当)vsグロース(≒低配当)で考えた場合もやはり実質長期金利低下がグロース(≒低配当)に繋がるんじゃないかなと思うのですが、実際に過去はどうだったのか調べてみました。
(データはFREDとMSCIを使いました。)
過去記事:MSCI指数データのダウンロード方法
下グラフは2003年1月〜2020年7月のMSCI USA HDY INDEX Standard/MSCI USA Standard(2003年1月=100、左軸)と実質長期金利(右軸)をグラフ化したものです。MSCI USA HDY INDEX Standard/MSCI USA Standardは上にいくほど高配当優位です。
(無配当とか低配当の指数はなかったのでMSCI USA Standardを使っています。)
だいたいの期間は実質長期金利上昇局面で高配当株がアンダーパフォーム、実質長期金利低下局面ではアウトパフォームしており、リーマンショックとコロナショックのみ逆になっているように見えます。
(リーマンショックでは高配当株がディフェンシブ性を発揮しましたが、コロナショックでは低配当・無配当のハイテク株が強かったです。)
理屈としてはむしろ実質金利上昇局面でバリューや高配当株がアウトパフォームしそうなので私の直感には反しますが、シーゲル教授が言うように高配当株を債券代替と見做して実質金利が上昇すれば高配当株を売って債券を買い、低下すれば逆の動きをする投資家が多いということなんでしょうか。
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