リーマンショック以降のグロース優位は金利低下ではなく第4次産業革命の過小評価が原因なのでは


金利低下がグロース株のアウトパフォームの原因だ、という話をよく耳にします。

割引率の変化がPERに与える影響は高成長が織り込まれている高PER株ほど大きいので、割引率が低下すれば高PERのグロース株が低PERのバリュー株をアウトパフォームするのは正しいです。
 過去記事:無リスク金利上昇によるPERの変化

ですが、「割引率=無リスク金利+株式リスクプレミアム」なので、金利が下がっても株式リスクプレミアムが上昇する場合もあるので、必ずしも金利低下がグロース株のアウトパフォームに繋がるとは言えないと思います。

バリュー/グロースと長期金利(1974年12月末~2020年6月末)

まずは1974年12月末~2020年6月末のバリュー/グロース(MSCI USA VALUE/MSCI USA GROWTH)と長期金利をグラフ化しました。
※MSCIとmultpl.comのデータを使いました。
 過去記事:MSCI指数データのダウンロード方法
1980年以降はずっと長期金利が低下していますが、バリュー/グロースは1988年までがバリュー優位、1988~2000年がグロース優位、2000~2007年がバリュー優位、2007年以降がグロース優位となっています。

横軸に長期金利の前月比変化幅、縦軸にバリュー/グロースの前月比変化率の散布図を作ってみました。少なくとも月次でみると長期金利が下がったらグロースがアウトパフォームするという訳ではなさそうです。

リーマンショック以降のグロース優位は金利低下ではなく第4次産業革命の過小評価が原因なのでは

アスワス・ダモダラン教授のインプライド・リスクプレミアムをみてみると、2000年〜2019年では金利低下を相殺する形で上昇しており、割引率(名目期待リターン)はほぼ横ばいで推移しています。
 過去記事:『割引率=長期金利+株式リスクプレミアム』の安定感について
先ほどのバリュー/グロースと長期金利のグラフに割引率(割引率だけ年次データで最新は2020年7月)も加えてみました。

割引率は2020年7月には5.91%まで低下しているので、年初来のグロース株のアウトパフォームは金利低下が主な原因かもしれません。

ですが、2000年〜2019年は割引率7〜8%で推移してきたので、リーマンショック以降の金利低下がグロースに有利に働いたというのは正しくないような気がします。

この10年超のグロース優位は金利低下ではなく、第4次産業革命の過小評価が原因で、グロース株の成長率が十分に織り込まれていなかっただけなのではと最近思っています。

年初来では流石に上げ過ぎているように思えるのでどうかよく分かりませんが、少なくとも昨年末時点では長期にわたるアウトパフォームにも関わらず大型グロース株が割高だとは感じませんでしたし。

単純に期間だけで判断するとそろそろバリューのターンが来るように見えますが、まだまだグロース優位が続く可能性もありそうな気がします。

長期金利低下局面と長期金利上昇局面のバリュー/グロース

一方でもっと長いスパンで見てみると、長期金利低下局面ではグロース有利、長期金利上昇局面ではバリュー有利という風に見えます。
(先ほどのグラフと少し違いますが、拾い画像なのでどうやって計算しているのかは知りません。)

出典:Livewire

ちなみに当ブログでは長期金利上昇局面と低下局面に分けてS&P500の実質リターンを調べたことがあるのですが、金利低下局面ではPERが上昇するので高リターン、上昇局面ではPERが低下するので低リターンでした。
 過去記事:長期金利上昇局面と低下局面における米国株のリターン
 過去記事:長期金利上昇局面ではバリュエーションが縮小する

長期金利上昇は株式自体には逆風ですが、株式のなかでもバリューは比較的マシなのかもしれません。

あと、これは以前にも書きましたが、名目長期金利は名目GDP成長率に近似します。ダモダラン教授はブログで永久成長率=長期金利として計算していました。
 過去記事:低金利が必ずしも良いとは限らない

グロース株の成長率はあまり長期金利に左右されるというイメージがないので、金利上昇局面ではバリューとグロースの成長率の差が縮まってバリュー優位、金利低下局面では逆になるのでグロース優位みたいな感じにも言えるのかなと思います。


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