【アジア新興国 vs アジアを除く新興国】足元好調な新興国株も、アジアを除くと冴えない


新興国株は足元好調で、2021年に入ってからは全世界株を大幅にアウトパフォームしています。

しかし、パフォーマンスを牽引しているのはあくまでもアジア新興国であり、アジアを除いた新興国株は相変わらず低迷しています。

下図は2020/1/1~2021/2/16のMSCI ACWI(全世界株)、MSCI EM(新興国株)、MSCI EM ex ASIA(アジアを除く新興国)、MSCI EM ASIA(アジア新興国)のグロスリターンです。
 過去記事:MSCI指数データのダウンロード方法
2020年初来のグロスリターンはACWIが+24.03%、EMが+32.75%、EM ASIAが+46.51%と好調な一方、EM ex ASIAは-5.91%と大きな差がついています。
(ちなみに同期間のMSCI FM(フロンティア)は+4.14%なので、アジアを除いた新興国株はフロンティア株をもアンダーパフォームしています。)

長期パフォーマンス比較

次はMSCIのデータでとれる限り最長で比較してみます。

1987年12月~2021年1月では、年率グロスリターンはACWIが+8.24%、EMが+10.99%、EM ex ASIAが+11.30%、EM ASIAが+8.61%となっており、アジアを除いた新興国株が最も高リターンとなっています。
(EM ex ASIAとEM ASIAは一部期間データの欠落があります。)
リーマンショック前までで切り取って1987年12月~2007年10月とすると、ACWIが+9.88%、EMが+16.90%、EM ex ASIAが+21.13%、EM ASIAが+11.40%とアジアを除いた新興国株の高パフォーマンスぶりが際立ちます。
アジアを除いた新興国株が強かったのは、2000年代はコモディティバブルで資源国が強かった、1990年代は中国株が割高※だったためだと思います。
※当時の中国株のPERは分かりませんが、ジェレミー・シーゲル著「株式投資」では「成長の罠」の一例としてGDP成長率の低いがバリュエーションの低いブラジル株が、高成長だがバリュエーションの高い中国株を大幅にアウトパフォームしたことを挙げていました。
(この記述のあとは反対に中国株が大幅にアウトパフォームしているので面白いですね。)

アジアを除く新興国株はいまだにリーマンショック前のピークを下回る

2007年10月~2021年1月で切り取るとACWIが+5.84%、EMが+2.69%、EM ex ASIAが-1.94%、EM ASIAが+4.56%となります。アジアを除く新興国株は未だにリーマンショック前のピークを回復できていません。
2013年頃まではアジア新興国とアジアを除く新興国とで大して差がありませんでしたが、WTI原油価格が1バレル100ドル超から30ドル台まで暴落した2014年頃から差が出始め、アジアを除く新興国は10年超にわたって低位に取り残されています。
(起点の2007年10月がコモディティバブルで資源国が割高だったというのもあります。)

アジア新興国 vs アジアを除く新興国

現在のEM ASIAは上位国が中国49.69%、台湾16.49%、韓国16.46%、上位セクターがテクノロジー25.73%、一般消費財21.38%、金融13.95%の一方、EM ex ASIAは上位国がブラジル23.95%、南アフリカ18.16%、ロシア14.62%、上位セクターが金融30.53%、素材19.02%、エネルギー12.74%となっており、アジア工業国と資源国で明確な産業構造の違いが出ています。
出典:MSCI

バリュエーションは2021年1月時点でEM ASIAがPER23.36、予想PER17.02、PBR2.25、配当利回り1.59%、EM ex ASIAがPER20.53、予想PER11.78、PBR1.69、配当利回り2.99%となっています。

EM ex ASIAのほうが一見安く思えますがパフォーマンスは資源価格に依存してしまいます。一方、EM ASIAを構成するTSMC、テンセント、アリババ、サムスン電子、美団、JD.comなどはまだまだ成長余力が大きく、また先進国テックと比べるとカントリーリスクを織り込んでいるためか比較的割安に見える銘柄もあるため、今後もEM ASIAがアウトパフォームが続きそうな気もします。
(私は低CAPE教徒なのでロシア等低バリュエーション資源国好きですが。)



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