アスワス・ダモダランのブログ「Musings on Markets」にバイデン政権のキャピタルゲイン増税についての面白い記事がありました。
参考:Investor Taxes and Stock Prices: Threading the Needle!
上記記事によると、投資家の税引き後期待リターン(下式)が変わらないとすると、キャピタルゲイン増税がS&P500に与える影響は-7.09%だそうです。
期待リターン=(1-配当税率)×配当利回り+(1-キャピタルゲイン税率)×キャピタルゲイン
これは以前も書きましたが、自分以外の投資家の税率が上昇して株価が下落した場合、自分にとっては(これから投資する分は)課税後のリターンが上昇することになるため、ポジティブだと捉えています。
過去記事:米国株の配当課税について
もしキャピタルゲイン増税がそのままの形で実現され、ダモダランの推計通りにS&P500が7.09%下落したとしても、アメリカの富裕層とは違い私の税引き後期待リターンは上昇するので嬉しいことだと思います。
これは私が資産形成期なので喜べるだけで、リタイアして追加投資できなくなったら株価が下がるだけで全然うれしくありませんが…
(キャピタルゲイン増税ではなく法人増税によって株価が下落した場合はEPS減少を反映しただけで税引き後期待リターンは上がらないのでネガティブです。)
過去の配当税率とキャピタルゲイン税率
さて、ここからが今回の記事の本題ですが、Musings on Marketsによると、米国の配当税率とキャピタルゲイン税率は以下のように推移してきたそうです。今はどちらも同じ税率ですが、昔は配当税率のほうが大幅に高かったようです。
データ:Musings on Markets |
配当税率とキャピタルゲイン税率の差は以下のようになっています。
データ:Musings on Markets |
いずれも最高税率なので一般人がこの税率だった訳ではないはずですが、株式の多くを保有しているのは最高税率が適用される富裕層なので、「最高税率の推移≒投資家全体の平均税率の推移」と捉えても良いと思っています。
過去の高配当株のアウトパフォームは配当税率が高かったためかもしれない
そう考えた上で改めてジェレミー・シーゲル研究の高配当株がアウトパフォームしたというグラフを見てみます。
(これは特に税引後とは書かれていないので、税引前のデータのはずです。)
出典:WisdomTree |
時系列データがないのではっきりとは分かりませんが、グラフを見る限りでは高配当株がアウトパフォームしていたのは1980年頃までで、あとは高配当株とS&P500の差は広がっていないように感じます。
もう一度先ほどの配当税率とキャピタルゲイン税率の差を見ると、高配当株のアウトパフォームは配当税率がキャピタルゲイン税率よりも高かったときにしか起きていないように思えます。
データ:Musings on Markets |
むしろ高配当株のアウトパフォームが起きていた期間では、税引き後のリターンは低配当株のほうが高かった可能性も高そうです。
富裕層の配当税率が懲罰的に高かったために低配当株が選好されていたとすると、高配当株のアウトパフォームの恩恵を実際に受けることができたのは、税率の低い低所得者や非課税の年金基金等だけだったのかもしれません。
MSCIのデータを見てみると、1994年6月~2021年4月では高配当が若干アンダーパフォームしています。以前は一時的なものでまた高配当株の時代が来るのではと思っていましたが、税率の格差がないとこのままかもしれません。
データ:MSCI |
ということで高配当株が今後アウトパフォームするかというと怪しい気がしますが、日本の低所得個人投資家は「配当税率<キャピタルゲイン税率」なので、依然として高配当株を選好する価値はあると思っています。
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