高配当株投資は低所得者にとっては有利に思える


配当課税は低所得者ほど税負担が低くなる仕組みになっています。

下表のようにアメリカ、イギリス、フランスは所得に応じて段階的に課税されるようになっています。日本とドイツは申告分離の税率は一律ですが、総合課税も選択できるため低所得の場合は税負担が安くなります。
(下表は2016年1月時点のものなので情報が古くなっているかもしれません。)

出典:財務省(2016年1月現在)

特に日本株は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という課税方式を選ぶと、課税所得195万円以下の実効税率は5%(所得税率0%+住民税率5%)まで下がります。配当金生活にとって日本株は非常に有利なので、リタイアに向けて日本の高配当株も組み入れていこうと思っています。配当は日本円なので為替リスクも低いですし。

出典:大和証券 税率早見表

米国株の場合、課税所得195万円以下でも配当課税は現地源泉税10%と所得税5%(総合課税)+住民税5%(源泉徴収)になるので、実効税率は19%になります。
(外国株には配当控除が適用されないため、日本株よりも不利になります。なお、外国税額控除は考慮していません。)

無分配型投資信託や401kは配当課税を繰り延べできますし、NISAみたいに非課税で投資できる仕組みもありますし、機関投資家の実効税率が何%なのかも知らないので、株主全体の加重平均実効税率がだいたいどれくらいになるのかはよく分かりません。
(日本のiDeCoは投信のみですが、米国の401kは個別株式への投資もできるようです。)

具体的な数字は分からないので推測ですが、株主全体の加重平均実効税率よりも低所得者の実効税率のほうが低い、つまり低所得者は平均的な株主よりも実際に手にするリターンは大きくなるんじゃないかなと思います。

米国株の場合は違うかもしれませんが、日本株は低所得者なら5%になるので大半の株主よりも税負担が安そうです。

低所得者にとっては低配当株よりも高配当株のほうが有利なのでは

配当にかかる税率は株価に織り込まれているのだろうか」という記事でも書いたのですが、私は投資家が要求する期待リターンというのは取引コストや税金を差し引いたあとに実際に手にするリターンのことを指していると思っています。

期待リターンは以下の式で表すことができます。

期待リターン=配当利回り+配当成長率

でも現実の投資家は以下のように税引き後のリターンを要求していると思うんですよね。

期待リターン=(1-実効税率)×配当利回り+配当成長率

このように配当課税が織り込まれていると考えると、平均的な株主に比べて実効税率が低い低所得者は低配当株よりも高配当株を選んだほうが有利になるはずです。
(日本ではキャピタルゲインに対する課税は申告分離課税のみなので、所得によって有利・不利がありません。)


たとえば、配当以外は同じ条件の低配当株(配当利回り1%)と高配当株(配当利回り4%)があるとします。どちらも株主全体としては期待リターン=7%を要求していて、株主全体の加重平均実効税率=20%、低所得者の実効税率=5%とした場合を考えてみます。

配当成長率=期待リターン-(1-株主全体の加重平均実効税率)×配当利回りとすると、

低配当株は配当成長率=7%-1%×0.8=6.2%が織り込まれ、高配当株は配当成長率=7%-4%×0.8=3.8%が織り込まれていることになります。

そうすると低所得者にとっては、
  • 低配当株の期待リターン=1%×0.95+6.2%=7.15%
  • 高配当株の期待リターン=4%×0.95+3.8%=7.6%
となり、高配当株のほうが有利になります。


説明が下手なので逆に分かりにくくなっているかもしれませんが、とりあえず書きたかったのは、以下の2点です。
  • 高配当株は一般的に配当課税のぶんだけ不利と言われるけど、株価には配当課税が織り込まれているとしたら、株主全体として見ると高配当株でも低配当株でも有利・不利はない気がする。
  • そのうえで、平均的な株主と比べて配当にかかる税負担が軽い低所得者にとっては、高配当株(トータルリターンに占める配当の割合が大きい)のほうが相対的に高リターンが期待できそう。

※現実には配当課税のかからない自社株買いよりも配当のほうが(私も含めて)一般には好まれているような感じもありますし、前提がそもそも間違っているかもしれません。

また、先述しましたが米国株には配当控除が適用されない上に現地源泉税率10%が徴収されます。日本の低所得者の実効税率はそれほど低くならないため、平均的な株主と比べて有利ではない可能性もあります。


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コメント

  1. いつも興味深い記事、勉強になります。
    細かい話ですが、米国株の配当税について「外国税額控除」を活用すれば「所得税5%(総合課税)」のところが還付されるので実効税率は15%程度になると思います。
    今年の確定申告で所得税分は還付されたので多分あっていると思います。。

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    1. コメントありがとうございます。
      外国税額控除については低所得者の場合は恩恵が小さいと認識していたので記事では無視していました。
      所得税率5%でもそんなに還付される場合もあるんですね。
      私自身まだ外国税額控除をやったことがないのでよく分かっていないのですが、今度きちんと調べてみようと思います。

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