配当にかかる税率は株価に織り込まれているのだろうか


配当割引モデル(Dividend Discount Model:DDM)では、将来受け取る配当の合計を割引率(期待リターン)で現在価値に割り引いて株価を求めます。

ゴードンモデルでは株価は以下のように求めます。

 株価=一株当たり配当÷(割引率-配当成長率)

これを変形すると、期待リターン(割引率)は以下のようになります。

 期待リターン(割引率)=一株当たり配当÷株価+配当成長率
            =配当利回り+配当成長率

配当にかかる税率は株価に織り込まれているのか

最近、この「一株当たり配当」は税引き前なのか、税引き後なのか、どっちなんだろうかと考えています。つまり、配当にかかる税率は株価に織り込まれているのか否かという疑問です。

配当には課税されるため、BRK.B(バークシャー・ハサウェイ)のような無配株は有配株よりも有利だと言われています。

これは配当にかかる税率が株価に織り込まれていないのなら正しいです。しかし、もし織り込まれているのなら、無配株も有配株もどちらも同じということになるはずです。

また、外国株の現地源泉税率は国によってかなり差が大きく、たとえばイギリス株は0%ですが、スイス株は35%と非常に高いです。
(過去記事:外国株の現地源泉徴収税率

日本以外でもスイス株の税率が高いのかどうかはよく知りませんが、イギリス株はアメリカ人投資家でも非課税のようですし、配当にかかる税率が高い国や低い国が存在するのは確かです。

この場合も配当課税が株価に織り込まれていないのなら税率が低い国の株のほうが有利ですが、織り込まれているのなら税率は低くても高くても有利・不利はないはずです。

配当減税で株価は上昇する

大和総研の2003年の資料「配当減税で株価は 4.3%上昇(PDF)」では、2003年4月1日から2008年3月31日までの5年間、税率が20%→10%に引き下げられることによって、理論的には株価は4.34%上昇するとの試算が示されています。
(実際に配当減税が報じられて以来の高配当銘柄の株価パフォーマンスは市場平均を大きく上回っていたそうです。)

ここでも投資家が実際に受け取るのは税引き後の配当であるとして、配当割引モデルでは税引き後の配当を用いています。

ただし、国内の個人投資家、外国人、法人では税率が違っているため、実際にはそれぞれの保有比率で加重平均した税率を用いる必要があるようです。

日本の個人投資家が外国株に投資する場合は多くの国で二重課税されるので、たぶん株主全体の加重平均税率よりも高い税率になるはずです。そうなると、やはり配当利回りが高すぎると不利になるのは間違いなさそうな気がします。

取引コストの低下によってPERは上昇する

ジェレミー・シーゲル教授は取引コストの低下によってPERが恒常的に高くなるだろうと予想しています。
(参考記事:ゼロ取引コストのニュー・ノーマル:ジェレミー・シーゲル(フィナンシャル・ポインター)

期待リターンは実際に投資家が手にするリターンなのだとしたら、取引コストと同様に配当課税も株価に織り込まれているということになるんじゃないかなと思います。

英蘭双方に上場するADRの株価を比べてみる

たとえば、ロイヤル・ダッチ・シェルやユニリーバはイギリスとオランダの双方に上場していますが、イギリス株ADRのRDS.BとULは現地源泉税率が0%なのに対して、オランダ株ADRのRDS.AとUNは15%となっています。これは日本だけでなく米国でも同じようです。

このため、日本と米国の個人投資家はイギリス株ADRのRDS.BとULに投資したほうが有利になります。機関投資家はどうなっているのか知りませんが、EU内の居住者はどちらも非課税になるので違いがないようです。

そうすると、株主全体としてみた場合、イギリス株ADRのRDS.BとULのほうが配当課税が小さくなるはずだと思います。

もし配当課税が株価に織り込まれているのだとしたら、イギリス株ADRのRDS.BとULの株価はオランダ株ADRのRDS.AとUNよりもやや高く取引されるのが正しいような気がします。

たとえば、アルファベットの議決権プレミアムの場合、議決権のあるGOOGLの株価は議決源のないGOOGの株価を常に上回っていて、自社株買いよりも新株発行のほうが大きければ議決権プレミアムは拡大し、逆になれば縮小します。

同じように考えると、イギリス株ADRの株価はオランダ株ADRを常に上回っていて、株主構成の変化によってプレミアムが拡大したり縮小したりするんじゃないかなと思えます。

しかし、実際に過去20年間の株価を比較してみると、イギリス株ADRの株価が常に高いという訳ではなく、周期的にイギリス株のほうが高くなったりオランダ株のほうが高くなったりしています。
(グラフは下にいくほどオランダ株ADRが高く、上にいくほどイギリス株ADRが高いです。)
ロイヤル・ダッチ・シェルはイギリス株のRDS.Bのほうが高い時期が長いですが、ユニリーバはむしろオランダ株のUNのほうが高い時期が長くなっています。

どちらも直近だけならイギリス株のほうが高くなっていますが、2000年頃は逆にオランダ株のほうが10%ほど高くなっています。

これをみると配当課税が株価に織り込まれているとは言えないような気がしますね。


結局どっちが正しいのかよく分からないままですが、理屈の上では配当にかかる税率は株価に織り込まれていると考えたほうが正しいように思えます。


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