大幅な円安進行で日銀の金融政策への批判が強まるなか、円安の原因は日銀が紙幣印刷を続けているからという話をよく目にするようになりました。
ドル円レートが日米の通貨供給量(中銀のバランスシートの規模)の比率によって決まるというのが有名なソロスチャートですが、コロナショック以降、このソロスチャートは死んでいます。
日銀のバランスシートがGDP比で大きすぎるというのはたしかにその通りかもしれませんが、過去20年のバランスシート拡大のペースは日本よりもアメリカのほうが早いので、ドル円の下落が日銀の紙幣印刷のせいというのはおかしいように思います。日本は膨大な借金のせいでハイパーインフレみたいな話もそうですが、時間差で効いてくるみたいな話なんでしょうかね。
貨幣価値とMM理論
ソロスチャート的な考え方では貨幣価値は供給量が増えるほど下がるものだということになっており、この考え方をもとに人々はゴールドやビットコインに価値を見出していると思います。
最近読んだ本では、この貨幣供給と貨幣価値の考え方はMM理論を当てはめればおかしいのでは?という話があって面白く感じました。
「物価や金利などの決まり方を議論する「マクロの金融論」では、中央銀行の発行する証券の一種である銀行券をたくさん世の中に出すと、銀行券つまり貨幣の需給が緩和して貨幣価値が下がると教えられたりします。しかし、モジリアーニミラー式に考えれば、これはどうもおかしな話です。中央銀行が、一〇〇万円の価値があると思える資産を買い、それで一万円札を一〇〇枚ほど世の中に供給したとします。それだけのことなら、貨幣の価値が変化するはずはありません。増加した銀行券に見合うだけの資産は中央銀行の金庫に収まっているはずだからです。では、国債を買って貨幣を発行したらどうでしょう。こちらは、もっと単純です。政府と中央銀行というのは、財務的には親会社と子会社のような関係ですから、親会社株式に相当する国債と子会社株式に相当する銀行券をいくら取り換えても国全体の株価つまり貨幣価値が変化するはずがありません。つまりは、ミクロの金融論とマクロの金融論の世界では、新たな証券の発行が既存の証券の価値に与える影響について、まったく反対の論理を展開してしまっていることになります。」
引用:『貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム―(岩村充 著)』
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