高格付BDCのMAIN(メイン・ストリート・キャピタル)


前回に引き続き、BDC(ビジネス・デベロップメント・カンパニー)についての記事です。
※BDCは未上場の中小企業や新興企業に投融資し、利益の90%以上を配当することで法人税の優遇措置を受けており、高い配当利回りが特徴です。
(過去記事:ARCC(エイリス・キャピタル)は次の弱気相場で買いたい

今回はBDCの中では最も高格付のMAIN(メイン・ストリート・キャピタル)について調べてみました。

BDCのS&P信用格付け比較

主要なBDCのS&P信用格付けと、配当利回り、PER、PBRを表にまとめました。MAINの信用格付けは「BBB」と最も高く、バリュエーションも高いです。
(過去記事:保有銘柄のS&P信用格付けを調べる


S&P Rating
(Local LT)
CreditWatch
/Outlook
時価総額配当
利回り
PERPBR
ARCC
エイリス・キャピタル
BBB-Stable7.37B9.05%13.611.01
PSEC
プロスペクト・キャピタル
BBB-Negative2.49B10.37%10.410.75
MAIN
メイン・ストリート・キャピタル
BBBStable2.40B5.87%17.931.70
FSIC
FSインベストメント
BBB-Stable1.95B9.33%16.010.87
HTGC
ヘラクレス・キャピタル
BBB-Negative1.30B9.17%12.401.42
TSLX
TPGスペシャリティ・レンディング
BBB-Stable1.29B7.90%10.231.21
AINV
アポロ・インベストメント
--1.27B10.17%11.960.90
GBDC
ゴルブ・キャピタル
--1.14B6.73%15.491.18
NMFC
ニュー・マウンテン・ファイナンス
--1.07B9.61%10.941.04
SLRC
ソーラー・キャピタル
BBB-Negative0.91B7.67%12.350.98

MAIN(メイン・ストリート・キャピタル)のポートフォリオ

MAINのポートフォリオは債券(債権?)が70.1%、株式が25.3%、その他が4.4%です。債券は第一順位が94.1%、劣後債が5.9%です。ARCC(エイリス・キャピタル)は優先株式が5%、その他株式が8%で合計13%が株式だったので、MAINは株式の比率が高めですね。
出典:2nd Quarter 2018 MAIN Debt Capital Markets Presentation

投資対象はLMM(Lower Middle Market)が46%、ミドル・マーケットが25%、プライベート・ローンが22%、その他が7%です。LMMは売上高が$10M~$150M、EBITDAが$3M〜$20Mの企業の担保付きシニアローンや株式、ミドル・マーケットはLMMよりも流動性のある大きな企業(EBITDAが$20M〜$100M)の担保付きシニアローンに投資しているようです。

債券の加重平均実効利回りはLMMが12.2%、ミドル・マーケットが9.4%、プライベート・ローンが9.8で、全体が10.5%だそうです。

産業・地域別では以下のようになっています。
 出典:2nd Quarter 2018 MAIN Executive Summary Fact Sheet

コスト

MAINの営業費用は1.5%で、他のBDC平均値3.1%の半分以下です。MAINは内部で管理されていて外部管理手数料を支払う必要がなく、他社に比べて低コストになっています。
(例えばARCC(エイリス・キャピタル)はARES(エイリス・マネジメント)が管理しています。)
 出典:2nd Quarter 2018 MAIN Investor Presentation

REITも親企業との間に利益相反があって、REITが親会社の「ゴミ箱」にされているという話を聞いたことがありますし、確かに内部で管理されているほうが良いような気がします。

配当利回りと株価

前回調べたARCCは金融危機時には配当利回り約50%になっていましたが、MAINは約17%超がピークです。ARCCはほとんど株価上昇がなく、リターンのほとんどが配当でしたが、MAINの株価は右肩上がりですね。
(左軸が配当利回り、右軸が株価です。)

最近は配当利回り5.5%~7.5%の間に落ち着いています。後述しますが、2013年以降はSupplemental Dividendsが出ているので、実質的な配当利回りはもう少し高くなります。現在のSupplemental Dividends込みの配当利回りは7%です。

配当の推移

配当、DNII(Distributable Net Investment Income=分配可能純利益)、NAV(純資産)は以下のように右肩上がりになっています。リーマンショック時にも減配されていません。2013年からはSupplemental Dividendsが毎年出ています。

 出典:2nd Quarter 2018 MAIN Investor Presentation

上のグラフでは四半期毎にまとめられていますが、実際には毎月配当が出ます。個人的には年4回くらいの頻度で良いじゃないかと思いますが…

過去パフォーマンス比較

最後にPortfolio VisualizerのBacktest Portfolioを使ってMAINのパフォーマンスをS&P500、ARCC(エイリス・キャピタル)と比較してみます。

2007年11月~2018年7月の期間では、S&P500が年率リターン7.89%、ボラティリティ14.83%、ARCCが年率リターン12.26%、ボラティリティ34.27%に対して、MAINは年率リターン20.09%、ボラティリティ21.41%と高パフォーマンスをあげています。最大ドローダウンも-29.79%とかなり小さいです。

ただし、2013年以降ではS&P500に負けています。リーマンショック時のドローダウンは小さかったですが、2015年のドローダウンは-14.97%とS&P500やARCCよりも大きいので、下落耐性があるという訳ではなさそうです。

私は配当金生活を目指しているので、高配当利回りのBDCにはすごく惹かれます。例えばARCCは配当利回り9%なので、私の全財産1,600万円でも税引き後年間配当103万円が得られます。危ないのでそんなことはしませんが。

MAINはBDCの中ではバリエーションがやや割高ですが、信用格付けや成長性、コスト構造を考えると魅力的な銘柄だと思います。

ただ、現状MAINは私が使っているSBI証券や楽天証券では取扱いがなく、マネックス証券でしか買えません。証券口座を3つに増やすと管理が面倒なので、とりあえずSBIと楽天証券には銘柄追加要望を出しておきました。要望が多くないと厳しそうなので期待薄ではありますが…


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コメント

  1. BDCって面白いですね。良い記事をありがとうございます。
    懸念すべき点は倒産リスクでしょうか。倒産リスクがなければ素晴らしい投資先ですが。
    最大手ARCC,最優良MAINはウォッチしてみたいです。

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    1. こんにちは。
      BDC、面白いですよね。

      S&P Globalによると、信用格付けがBBBとBBB-の企業の1年間のデフォルト率の平均値(1981年〜2008年)は0.28%だそうなので、MAINやARCCはそれほど心配しなくても良いのかなと思っていますが…
      https://ronaldread.blogspot.com/2018/04/SP-Credit-Rating.html
      BDCは分からないことが沢山あるので今後も調べていきたいです。

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  2. こんばんは。いつも楽しく拝見させていただいております。
    2点、ぜひお考えをお聞かせ願いたいことございます。

    ARCC等BDCについて、恐慌発生時にどの程度の利回りで買い出動を行おうと考えてらっしゃいますでしょうか。

    また、BDCのポートフォリオ内のウェイトはどの程度に抑えるお考えでしょうか。

    ぜひ参考にさせていただきたく、お手すきの際にはご返信をいただけたら幸いです。
    よろしくお願いいたします。

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    1. こんにちは。

      買い出動のタイミングは難しいですね。
      また詳しく調べて記事にしたいと思っていますが、リーマンショック前後のARCCのポートフォリオは今よりも劣後債の比率が高かったようなので、今後同じような金融危機が起きても配当利回り50%になるまで売り込まれないんじゃないかなという気もします。
      とりあえずARCCは15%、MAINは10%を超えたら打診買いしてみたいと思っています。

      BDCのウェイトは今のところは特に決めていませんが、BDCが特に割安だと思った場合でも最大10%程度(ARCC5%+MAIN5%)に留めると思います。
      私は銘柄選択能力がないので、個別銘柄1銘柄のウェイトは最大でも5%程度、基本的には3%以下に留める方針です。

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  3. アルトマンZscoreがARCCは0.95,MAINは1.75でどちらもdistressなんです。だから、倒産リスクは普通のBBBよりも高い気がします。ほとんど配当するからでしょうか。

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    1. BDCと同じく利益のほとんどを配当するREITはほとんどがアルトマンZスコアがdistressになっているようですし、銀行にはそもそも使えないようなので、金融セクターのBDCの判断に使うにはあまり役に立たないのかなと思っています。
      ただ、普通のBBB企業よりも倒産リスクが高そうなのは私も同感です。

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