S&P500のドローダウン(1928年~2018年)
下表はS&P500の1928年~2018年の-20%超のドローダウンとCAPEレシオで、ドローダウンの昇順に並べています。CAPEレシオはそれぞれドローダウンの天井と底の時点のものです。ワーストは1930年4月~1932年6月の-83.0%です。世界大恐慌(1929~1933年)の間には20%超のドローダウンが4回も起きたんですね。
天井時点のCAPEレシオをみてみると、2000年3月(43.22)以外は現在(33.25)よりも低いです。特に1980年11月のCAPEレシオは9.65と非常に低いです。
一見、割安な水準から暴落しているように見えますが、1980年11月の10年国債利回りは12.68%と非常に高水準でした。
PER=1/(割引率-成長率)なので、無リスク金利(10年国債利回り)が高いと適正PERは低くなり、CAPEレシオもまた低くなります。
=1/(無リスク金利+リスクプレミアム-成長率)
(過去記事:10年国債利回りの水準毎のPERとCAPEレシオ)
1980年11月の10年国債利回りは12.68%、PERは9.19、CAPEレシオは9.65なので、益利回り(PERの逆数)は10.88%、CAPE益利回り(CAPEレシオの逆数)は10.36%となり、10年国債利回りを下回ります。一方で現在の10年国債利回りは2.99%、PERは25.16、CAPEレシオは33.25なので、益利回りは3.97%、CAPE益利回りは3.01%となり、10年国債利回りを上回っています。
天井時点でのイールドスプレッド
10年国債利回りから益利回りを引いた数値はイールドスプレッドと呼ばれ、株式のバリュエーションを判断するために使われます。当ブログでも毎月の世界各国のイールドスプレッドをまとめています。下表はドローダウンの天井時点でのイールドスプレッドで、今度は時系列に並べています。
※イールドスプレッド(PER) は益利回りにPERの逆数を使ったもの、イールドスプレッド(CAPEレシオ)は益利回りにCAPEレシオの逆数を使ったものです。
ほとんどはイールドスプレッドが負ですが、1960年以降では何となく役に立ちそうな気もします。
今だとCAPEレシオの逆数を使ったイールドスプレッドが-0.02%になるので、あともう少し株価か金利が上昇すれば正になってしまいそうな状況です。
新興国株のドローダウン(1994年~2018年)※2018年8月時点
下表は新興国株(MSCIエマージング・マーケット)の1994年~2018年の-20%超のドローダウンで、ドローダウンの昇順に並べています。米ドル建て、現地通貨建てのドローダウンと、その差です。※出典は今年8月の記事なので、実際には下表に加えて2018年2月~2018年9月にも20%超下落しています。
新興国株が大幅下落するときには現地通貨も対米ドルで下落してしまうため、米ドル建てのドローダウンは現地通貨建てよりも2.5~10.9ポイント大きくなっています。
同期間のS&P500の20%超のドローダウンはサブプライム危機(2007年10月~2009年3月)の-56.8%とITバブル崩壊(2000年3月~2002年10月)の-49.1%の2つだけだったので、ドル建て新興国株の値動きの激しさがよく分かります。
新興国はS&P500のように時系列データが入手できないので、ここではCAPEレシオのチャートだけを見てみます。
サブプライム危機前のCAPEレシオは非常に高かった一方で、ITバブルの頃はそれほど割高ではなさそうなのに49.7%も下げています。他にも1998年4月~1998年8月などCAPEレシオが比較的低い時期でも-20%超のドローダウンが起きているので、やはり低CAPEだからと言って安心はできなさそうです。
Research Affiliatesによると2018年8月末現在の新興国株のCAPEレシオは13.5とS&P500の半分以下の水準にありますが、ITバブルの頃も似たような状況で新興国株のほうが大きく下げています。バリュエーション上では割安だとしても、次の下落相場でも新興国株のほうがドローダウンが大きくなると覚悟しておいたほうが良さそうです。
ただ、上チャートのようにCAPEレシオが低いほどその後10年の実質リターンは高くなる傾向にあるため、現在の新興国株は10年間ホールドすれば十分なリターンが期待できるんじゃないかなと思っています。次の下落相場で米国株よりもドローダウンが大きければ、その時は超バーゲンセールだと思うので、相対的に下がっていない米国株を売ってでも新興国株を買い増ししたいです。
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