米国株と米国債(短期債・長期債)のトータルリターン(1928年~2018年)


今回はDamodaran Onlineに載っている米国株(S&P500)と米国債(短期債・長期債)のトータルリターン(1928年~2018年)をまとめてみました。

※S&P500のトータルリターン指数はYahooFinanceで「^SP500TR」と検索したら出てきますが、1988年以降のデータしかありません。
(multpl.comでは1871年以降の株価(名目実質)と配当のデータがあるので、当ブログでは大雑把にトータルリターンを計算したことはあります。)

米国債については利回りのデータはmultpl.comやFRED等にありますが、トータルリターンは他で見かけたことがありません。

米国株と米国債(短期債・長期債)の累積リターン

まずは米国株(S&P500)・米国短期国債(3ヶ月物)・米国長期国債(10年物)の累積トータルリターンをグラフ化してみました。

今回使用したデータは、CPIとドル円はFRED、米国株と米国債(短期債・長期債)のデータはDamodaran Onlineのものです。

名目トータルリターン(1928年=100)

名目トータルリターン(ドル建て)は以下のようになっています。
※Stocks:S&P500、T.Bills:米国短期国債(3ヶ月物)、T.Bonds:米国長期国債(10年物)
90年間でS&P500は2,662倍、米国短期国債は20倍、米国長期国債は72倍になっています。

幾何平均ではS&P500が9.16%、米国短期国債が3.39%、米国長期国債が4.87%です。

超長期の名目チャートではどれも右肩上がりです。S&P500も大恐慌以外の下落は全然大したことがないように見えますね。

実質トータルリターン(1928年=100)

インフレ調整後の実質トータルリターン(ドル建て)は以下のようになっています。 ジェレミー・シーゲル著「株式投資」に載っている有名なチャートの短い版ですね。ゴールドと米ドルはありませんが・・・
90年間でS&P500は181.2倍、米国短期国債は1.4倍、米国長期国債は4.9倍になっています。

幾何平均ではS&P500が5.95%、米国短期国債が0.34%、米国長期国債が1.79%です。

名目チャートと違って米国債は非常に低いリターンにとどまっており、特に1941~1981年の金利上昇局面では右肩下がりになっています。

S&P500は名目チャートと比べると変動が激しいですが、20年ローリング・リターンでは全期間でプラスです。一方で米国債は20年保有してもマイナスの期間がそれなりにあるうえに、ほぼ全期間でS&P500を下回っています。

円換算トータルリターン(1971年=100)

円換算トータルリターンは以下のようになっています。
47年間でS&P500は33.5倍、米国短期国債は3.0倍、米国長期国債は7.3倍になっています。

幾何平均ではS&P500が7.76%、米国短期国債が2.33%、米国長期国債が4.33%です。

円換算チャートは1971年(ニクソン・ショック)以降なので期間は短いですが、不況時には円高、好況時には円安の傾向があるため、ドル建てチャートと比べるとかなりボラティリティが激しくなっています。

20年ローリング・リターンは以下のようになっています。こちらは全てプラスです。

円換算とドル建て(名目)の比較

円換算と名目ベースのドル建てチャート(点線)を比べると以下のようになります。

円換算とドル建て(実質)の比較

実質ベースのドル建て(点線)と比べると以下のようになります。

米国株と米国債(短期債・長期債)の年間リターン

超長期チャートでは細かいところが分かりにくいので、1年毎の年間リターンを表にまとめました。

名目年間トータルリターン

下表は名目(ドル建て)の年間トータルリターンです。マイナスの年は白抜きの赤にしています。

Stocks
(名目)
T.Bills
(名目)
T.Bonds
(名目)
192843.81%3.08%0.84%
1929-8.30%3.16%4.20%
1930-25.12%4.55%4.54%
1931-43.84%2.31%-2.56%
1932-8.64%1.07%8.79%
193349.98%0.96%1.86%
1934-1.19%0.32%7.96%
193546.74%0.18%4.47%
193631.94%0.17%5.02%
1937-35.34%0.30%1.38%
193829.28%0.08%4.21%
1939-1.10%0.04%4.41%
1940-10.67%0.03%5.40%
1941-12.77%0.08%-2.02%
194219.17%0.34%2.29%
194325.06%0.38%2.49%
194419.03%0.38%2.58%
194535.82%0.38%3.80%
1946-8.43%0.38%3.13%
19475.20%0.57%0.92%
19485.70%1.02%1.95%
194918.30%1.10%4.66%
195030.81%1.17%0.43%
195123.68%1.48%-0.30%
195218.15%1.67%2.27%
1953-1.21%1.89%4.14%
195452.56%0.96%3.29%
195532.60%1.66%-1.34%
19567.44%2.56%-2.26%
1957-10.46%3.23%6.80%
195843.72%1.78%-2.10%
195912.06%3.26%-2.65%
19600.34%3.05%11.64%
196126.64%2.27%2.06%
1962-8.81%2.78%5.69%
196322.61%3.11%1.68%
196416.42%3.51%3.73%
196512.40%3.90%0.72%
1966-9.97%4.84%2.91%
196723.80%4.33%-1.58%
196810.81%5.26%3.27%
1969-8.24%6.56%-5.01%
19703.56%6.69%16.75%
197114.22%4.54%9.79%
197218.76%3.95%2.82%
1973-14.31%6.73%3.66%
1974-25.90%7.78%1.99%
197537.00%5.99%3.61%
197623.83%4.97%15.98%
1977-6.98%5.13%1.29%
19786.51%6.93%-0.78%
197918.52%9.94%0.67%
198031.74%11.22%-2.99%
1981-4.70%14.30%8.20%
198220.42%11.01%32.81%
198322.34%8.45%3.20%
19846.15%9.61%13.73%
198531.24%7.49%25.71%
198618.49%6.04%24.28%
19875.81%5.72%-4.96%
198816.54%6.45%8.22%
198931.48%8.11%17.69%
1990-3.06%7.55%6.24%
199130.23%5.61%15.00%
19927.49%3.41%9.36%
19939.97%2.98%14.21%
19941.33%3.99%-8.04%
199537.20%5.52%23.48%
199622.68%5.02%1.43%
199733.10%5.05%9.94%
199828.34%4.73%14.92%
199920.89%4.51%-8.25%
2000-9.03%5.76%16.66%
2001-11.85%3.67%5.57%
2002-21.97%1.66%15.12%
200328.36%1.03%0.38%
200410.74%1.23%4.49%
20054.83%3.01%2.87%
200615.61%4.68%1.96%
20075.48%4.64%10.21%
2008-36.55%1.59%20.10%
200925.94%0.14%-11.12%
201014.82%0.13%8.46%
20112.10%0.03%16.04%
201215.89%0.05%2.97%
201332.15%0.07%-9.10%
201413.52%0.05%10.75%
20151.38%0.21%1.28%
201611.77%0.51%0.69%
201721.61%1.39%2.80%
2018-4.23%2.37%-0.02%

短期国債は金利感応度が低いため、金利上昇時のキャピタルロスを含めても年単位でマイナスになった年はないようです。

下表は平均値(幾何平均)、中央値、最大値、最小値、マイナスの年をまとめたものです。

Stocks
(名目)
T.Bills
(名目)
T.Bonds
(名目)
平均値9.16%3.39%4.87%
中央値13.52%3.05%3.27%
最大値52.56%14.30%32.81%
最小値-43.84%0.03%-11.12%
マイナスの年25017

実質年間リターン

下表は実質(ドル建て)の年間トータルリターンです。マイナスの年は白抜きの赤にしています。

Stocks
(実質)
T.Bills
(実質)
T.Bonds
(実質)
1928---
1929-8.83%2.56%3.60%
1930-20.01%11.69%11.68%
1931-38.07%12.82%7.45%
19321.82%12.64%21.25%
193348.85%0.20%1.08%
1934-2.66%-1.17%6.35%
193542.49%-2.73%1.44%
193630.06%-1.26%3.52%
1937-37.13%-2.48%-1.44%
193832.98%2.94%7.19%
1939-1.10%0.04%4.41%
1940-11.31%-0.68%4.65%
1941-20.65%-8.96%-10.87%
19429.30%-7.97%-6.18%
194321.47%-2.50%-0.46%
194416.36%-1.88%0.27%
194532.84%-1.83%1.52%
1946-22.48%-15.03%-12.70%
1947-3.34%-7.60%-7.27%
19482.63%-1.91%-1.01%
194920.81%3.24%6.88%
195023.48%-4.49%-5.19%
195116.68%-4.27%-5.94%
195217.27%0.91%1.50%
1953-1.94%1.13%3.37%
195453.71%1.72%4.06%
195532.10%1.28%-1.70%
19564.33%-0.42%-5.09%
1957-12.98%0.32%3.79%
195841.23%0.02%-3.79%
195910.15%1.50%-4.30%
1960-1.01%1.66%10.14%
196125.79%1.59%1.38%
1962-10.01%1.43%4.30%
196320.63%1.44%0.04%
196415.30%2.51%2.73%
196510.28%1.94%-1.18%
1966-12.98%1.33%-0.53%
196720.15%1.25%-4.48%
19685.82%0.52%-1.38%
1969-13.60%0.34%-10.56%
1970-1.90%1.06%10.59%
197110.61%1.23%6.31%
197214.84%0.53%-0.57%
1973-21.17%-1.82%-4.64%
1974-34.04%-4.06%-9.21%
197528.11%-0.89%-3.12%
197618.09%0.10%10.60%
1977-12.82%-1.47%-5.07%
1978-2.30%-1.91%-8.99%
19794.61%-2.96%-11.14%
198017.08%-1.15%-13.78%
1981-12.51%4.94%-0.66%
198215.98%6.92%27.92%
198317.87%4.49%-0.57%
19842.11%5.45%9.41%
198526.43%3.55%21.11%
198617.21%4.88%22.93%
19871.32%1.23%-9.00%
198811.60%1.94%3.64%
198925.64%3.31%12.47%
1990-8.64%1.36%0.12%
199126.36%2.47%11.59%
19924.46%0.49%6.28%
19937.03%0.23%11.16%
1994-1.31%1.28%-10.43%
199533.80%2.90%20.42%
199618.74%1.65%-1.83%
199730.88%3.29%8.10%
199826.30%3.07%13.10%
199917.72%1.78%-10.65%
2000-12.01%2.30%12.83%
2001-13.20%2.09%3.96%
2002-23.78%-0.70%12.44%
200325.99%-0.83%-1.48%
20047.25%-1.96%1.20%
20051.37%-0.39%-0.53%
200612.75%2.08%-0.57%
20071.35%0.54%5.89%
2008-36.61%1.49%19.99%
200922.60%-2.52%-13.47%
201013.13%-1.35%6.86%
2011-0.84%-2.85%12.70%
201213.91%-1.66%1.21%
201330.19%-1.41%-10.45%
201412.67%-0.70%9.91%
20150.64%-0.52%0.55%
20169.50%-1.53%-1.36%
201719.09%-0.70%0.68%
2018-6.03%0.45%-1.89%

実質ベースでみると見え方がかなり変わってきますね。最近の短期国債はほとんどマイナスです。

長期国債はリターンを出せていますが、1981年以降は長期金利低下の追い風を受けています。金利低下余地はもう大きくはなさそうですし、今後は厳しそうな気がします。これは株式も同様ですが・・・

また、実質では全部揃って下落という年が結構あります。特に1970〜1980年頃は厳しいですね。

下表は平均値(幾何平均)、中央値、最大値、最小値、マイナスの年をまとめたものです。実質ベースでみると、マイナスの年は長期国債>短期国債>株式となっています。

Stocks
(実質)
T.Bills
(実質)
T.Bonds
(実質)
平均値5.95%0.34%1.79%
中央値9.83%0.50%1.14%
最大値53.71%12.82%27.92%
最小値-38.07%-15.03%-13.78%
マイナスの年303639

円換算年間リターン

下表は円換算の年間トータルリターンです。マイナスの年は白抜きの赤にしています。

Stocks
(円換算)
T.Bills
(円換算)
T.Bonds
(円換算)
197211.77%-2.16%-3.23%
1973-20.30%-0.74%-3.59%
1974-20.55%15.56%9.35%
197539.39%7.85%5.42%
197619.39%1.20%11.82%
1977-23.92%-14.02%-17.16%
1978-13.41%-13.06%-19.33%
197945.39%34.86%23.49%
198014.81%-3.07%-15.45%
1981-0.40%19.46%13.09%
198233.06%22.66%46.76%
198318.56%5.10%0.01%
198412.26%15.92%20.28%
19857.33%-12.10%2.81%
1986-5.31%-15.27%-0.68%
1987-16.26%-16.34%-24.79%
198812.33%2.60%4.31%
198952.83%25.67%36.81%
1990-9.67%0.22%-1.01%
199124.54%1.00%9.98%
19924.14%0.18%5.95%
1993-2.56%-8.75%1.20%
1994-7.64%-5.22%-16.18%
199539.48%7.27%25.54%
199637.29%17.53%13.51%
199751.50%19.57%25.13%
199815.81%-5.49%3.70%
19995.93%-8.42%-19.61%
2000-0.50%15.69%27.60%
20010.24%17.89%20.05%
2002-25.45%-2.89%9.97%
200313.45%-10.70%-11.28%
20046.71%-2.46%0.68%
200519.63%17.55%17.39%
200614.50%3.67%0.98%
20071.10%0.30%5.63%
2008-48.50%-17.54%-2.51%
200924.11%-1.32%-12.41%
20106.38%-7.23%0.49%
2011-4.69%-6.62%8.32%
201224.82%7.76%10.90%
201363.17%23.56%12.23%
201430.93%15.39%27.73%
20153.34%2.15%3.25%
20166.59%-4.15%-3.98%
201718.40%-1.28%0.09%
2018-4.86%1.70%-0.67%

円換算ではさらに全部マイナスの年が頻繁にあります。

下表は平均値(幾何平均)、中央値、最大値、最小値、マイナスの年をまとめたものです。円換算ではマイナスの年は短期国債>長期国債=株式となっています。

Stocks
(円換算)
T.Bills
(円換算)
T.Bonds
(円換算)
平均値7.76%2.33%4.33%
中央値7.33%0.30%3.70%
最大値63.17%34.86%46.76%
最小値-48.50%-17.54%-24.79%
マイナスの年152115

まとめ

ジェレミー・シーゲル著「株式投資」に書かれているので周知の事実?ですが、やっぱりインフレ調整後や円換算でみると株式が最強ですね。

特に最近はインフレ率>金利になっているので、国債でプラスのリターンを得るにはキャピタルゲインが必要です。

米国も日本同様、膨張した政府債務を軽減するためにインフレよりも金利を低くする金融抑圧政策が続くと思うので、この状況はしばらく続きそうな気がします。
(以前は2016年夏を底に長期金利上昇局面に入ったのではと思っていたのですが、今では昔みたいに4~5%まで上がることはもうないのかもという気がしています。)

日本人投資家の場合は為替損失も無視できませんし、当面は株式と組み合わせて分散効果を得る以外の目的では米国債を保有する意義が見出しにくいと思います。

一方で米国株の高いバリュエーションは低金利によって支えられているため、金利上昇に転じれば長期保有しても満足いくリターンが得られない可能性もあります。
(過去記事:長期金利上昇局面と低下局面における米国株のリターン
(過去記事:長期金利上昇局面ではバリュエーションが縮小する

私は無心でバイ&ホールドを続けるのみですが、今後は今までのような高リターンが望めない覚悟をしておいたほうがいいかなと思っています。


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