※価格弾力性=需要の変化率/価格の変化率。価格が1%変化したときに需要が何%変化するかを表したもので、マイナスの数値になります。式にマイナスをつけて「-需要の変化率/価格の変化率」とすることでプラス表記にすることもあるようです。
タバコは斜陽産業ですが、販売数量の縮小を値上げでカバーしつつ、自社株買いで持続的なEPS成長(=配当成長)が見込めます。
実際に米国のタバコ価格とCPI(消費者物価指数)と平均時給を比べてみると、過去約52年間ではCPIが年率+4.0%、平均時給が+4.2%に対して、タバコ価格は年率+6.9%とかなり高いです。
過去記事:米国におけるタバコ価格の推移
ですが、CPIや平均時給を上回る値上げを永久に続けるのは不可能なはずで、どこかで価格弾力性は-1超となり、値上げで売上が減り始める時期がくるはずです。
タバコ価格と価格弾力性
今回は、このタバコの価格弾力性についてSeeking Alphaで面白いデータが載っていたのでご紹介します。下表はNBER(全米経済研究所)が4つのモデル(Model 1~Model 4)を使ってタバコ価格が$2.0~$10.0までの価格弾力性を推計した結果です。
参考:The Effect of Cigarette Prices on Cigarette Sales: Exploring Heterogeneity in Price Elasticities at High and Low Prices
グラフ化すると以下のようになります。
モデルによって少し差がありますが、だいたい$6.0を超えたあたりから価格弾力性が-1を下回っています。
$10だと価格弾力性は-1.58~-1.86です。私は非喫煙者ですし親しい人も吸わないのでよく分かりませんが、そういえば日本でも「1箱1,000円時代がきたら禁煙する」みたいな人がいるという話を聞いたことがあります。
米国各州のタバコ平均小売価格
現在の米国各州のタバコ平均小売価格価格は以下のようになっています。データはSalesTaxHandbook.comのMap of Cigarette Excise Taxes & Price Per Packのものです。価格弾力性が-1以下になり始めるの価格は$6でしたが、約半分の州のタバコ平均小売価格は$6を上回っています。
価格弾力性は高所得国が-0.4、低所得国が-0.8
また、タバコの値上げの影響は高所得諸国よりも低所得諸国、高齢者よりも若者のほうが大きいそうです。同じ世界銀行の「たばこ流行の抑制」では、タバコ税の引き上げに関して、「増税により実際にたばこの消費は大幅に削減される。増税によって最も大きな影響を受けるのは高齢者ではなく、値上げに敏感な若者だという点はとくに重要である。」とも述べている。また、「各地域の紙巻たばこ需要の価格弾力性を測定した研究によると、高所得諸国の短期的価格弾力性は比較的低く-0.4であるが、低所得諸国では-0.8である」価格弾力性は高所得国が-0.4、低所得国が-0.8とのことです。
引用:J-STOP
Seeking Alphaの記事でも、所得対比では米国は世界で6番目にタバコが割安な国で、スリランカ、インド、ケニア、バングラデシュ、エジプト、フィリピンのような低所得国は所得対比でタバコが割高だと指摘されていました。
低所得国は成長する所得とともに値上げ余地も増えていくとは思いますが、現時点では高所得国のほうが需要を損なわずに値上げが可能なようです。
結局のところは所得に比べてタバコ価格が高くなるほど喫煙者は値上げに敏感になりやすいということだと思うので、タバコの値上げペースはどの国でもいずれインフレ率並みに鈍化していきそうです。
まあ現時点のタバコ株は6~7%程度の配当利回りがあるので、今後売上高が減り続けていくとしても自社株買いによるEPS成長と合わせて十分なリターンが得られるんじゃないかなと思っています。
大麻合法化については、大麻使用者は大麻だけを単独使用するよりもタバコと併用する人のほうが多いというデータもありますし、それほど劇的な影響はなさそうな気がします。イライラしているときの気分転換や食後の一服には良い代替になりそうですが、仕事中や車の運転の休憩等には使えないでしょうし…
過去記事:大麻は単独使用よりもタバコとの併用が多い
タバコの販売数量が縮小していくのは周知の事実なので株価に織り込み済みでしょうし、棚上げされたニコチン含有量規制みたいに致命的な規制がなければ大丈夫じゃないかなと楽観していますが、私はポートフォリオの約12%がタバコ株なので、これ以上大幅には増やさないようにしようと思っています。
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