参考:Data Update 4: Country Risk and Currency Questions!
現地通貨建てのリスクフリーレート(無リスク金利)の計算式
デフォルトリスクがない国では「無リスク金利=その国の10年国債利回り」となります。米国では1.55%(2020/2/20現在)です。デフォルトリスクがある国の国債は無リスクではないので、
- 現地通貨建て無リスク金利=その国の10年国債利回り-現地通貨建て国債のデフォルトスプレッド
(例. 2020/1/1のインドの現地通貨建て無リスク金利=6.56%-1.59%=4.95%)
現地通貨建ての国債利回りが使えない場合の計算式
ただし、国債が発行されていない、国債の金利が信用できない、米ドルペッグ制の通貨など、現地通貨建ての国債利回りが使えない場合は以下の方法で簡易計算することができるとのことです。- 現地通貨建て無リスク金利=米国10年国債利回り+(現地通貨の予想インフレ率-米ドルの予想インフレ率)
(米国の10年ブレークイーブンインフレ率はFRED、IMFのインフレ予測はIMF DataMapperで確認できます。)
個人的にはこの現地通貨建てと米ドル建てのインフレ格差を使った計算法のほうが納得感が高くて好きです。
日本の無リスク金利を計算してみる
たとえば日本の場合、IMFによるインフレ予測が1.3%、米国の10年ブレークイーブンインフレ率が1.65%、米国10年国債利回りが1.55%なので、- 現地通貨建て無リスク金利=1.55%+(1.30%-1.65%)=1.20%
日本の予想インフレ率にIMF予測ではなく10年ブレークイーブンインフレ率(財務省によると2020/1/23時点で0.12%)を使うと、
- 現地通貨建て無リスク金利=1.55%+(0.12%-1.65%)=0.02%
ブレークイーブンインフレ率を使った無リスク金利推移
浜町SCIで公開されている物価連動国債と国債の流通利回りの時系列データを使って、時系列の日本の無リスク金利を計算してみました。(※物価連動国債は10年のデータに欠落が多かったので、代わりに7年を使って計算しています。)
名目の7年国債利回り、10年国債利回りと比べると下グラフのようになります。
簡易計算した無リスク金利は名目国債利回りと比べるとかなり変動が激しいです。2012年までは名目国債利回り以下、2014年以降はだいたい名目国債利回り以上で推移しています。
日本の7年BEI(ブレークイーブンインフレ率)
参考までに計算に使った7年BEI(ブレークイーブンインフレ率)、7年国債利回り、7年TIPS(物価連動国債)利回りのデータも載せておきます。2020年1月末時点では7年国債利回りが0.17%、7年TIPS利回りが0.10%、7年BEIが-0.27%となっています。
これはマーケットは今後7年間の日本の年平均インフレ率が-0.27%になると予測している、ということになりますが、直感的にはこの数値は低すぎるような気がします。よく分かりませんが。
無リスク金利と名目GDP成長率
これはかなり前の記事でも書いたのですが、無リスク金利(名目長期金利)は理論的には名目GDP成長率よりも高い数値になるはずです。過去記事:名目GDP成長率と長期金利の関係
- 名目長期金利=実質長期金利+期待インフレ率+リスクプレミアム
- 名目GDP成長率≒実質長期金利+期待インフレ率
- 名目長期金利≒名目GDP成長率+リスクプレミアム
出典:FRED |
現在は長期金利が名目GDP成長率の半分以下になっているので、そもそも米国の無リスク金利自体が本来あるべき位置よりも低すぎるようにも思えます。
(少し古いですが)たとえば以下のような配当割引モデルでは無リスク金利が少し高くなると適正株価が大幅に下がってしまいます。名目GDP成長率と同水準まで無リスク金利が上昇すると適正株価は大暴落です。
フィナンシャル・ポインターで紹介されてたバイロン・ウィーンの配当割引モデルの早見表。— 高卒非正規が株式投資でアーリーリタイアを目指す (@ronaldread_blog) July 13, 2019
現在はS&P500のEPSが166、米10年国債利回りが2%なので早見表では3,301になるとのこと。
ただし10年国債利回りが2.5%まで上昇すると2,551まで下落。
3%なら2,078、3.25%なら1,902。 pic.twitter.com/0QWVHguv6m
昨今の金融緩和下では指標となる米国の無リスク金利自体が適正なのかどうかがよく分からないので色々難しいなと思っています。
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