【予想PERと実績PER】高インフレがPERに与える影響について


下記記事では高配当の場合は実績PERが実際よりも低くなるという話を紹介しましたが、新興国やフロンティア国のPERを見る際にはインフレ率にも注意する必要がありそうです。
 過去記事:【予想PERと実績PER】配当込み株価に基づく実績PER

予想PERとインフレ率

予想PER(forward P/E)は将来12ヶ月の予想EPSを使います。

「MSCI Fundamental Data Methodology(外部リンク)」には、"MSCI reports fundamental data in the currency that the company reports. "と書かれています。

新興国企業の決算では米ドルではなく現地通貨が使われているので、MSCI指数の予想PERに使われる将来12ヶ月の予想EPSは現地通貨建てで計算されているはずです。

たとえば、MSCI All Nigeria Select 25/50 Indexの2020年5月末時点の実績PERは4.59、予想PER(forward P/E)は4.06、配当利回りは8.69%となっています。

出典:MSCI

MSCI All Nigeria Select 25/50 Indexを構成する企業の決算では現地通貨(ナイジェリアナイラ)が使われているはずなので、将来12ヶ月の予想EPSはナイジェリアのインフレ率のぶんだけ高く出ていることになります。

つまり、ナイジェリアの予想PERはインフレ率のぶんだけ実際よりも低くなっているはずです。

実績PER(4.59)を予想PER(4.06)で割って予想EPS成長率を計算すると13.1%になりますが、直近のナイジェリアのインフレ率が12%程度であることを考えると、実質ベースではほとんど成長していないことになります。

以前、Yardeni Researchのサイトに各国の予想成長率のチャートが見られるという記事を書いたのですが、たとえば高インフレ国のトルコはほぼ常に2桁成長になっています。
 過去記事:【Yardeni Research】各国・各地域の予想成長率(STEG・STRG・LTEG)

出典:Yardeni Research, Inc.

トルコのインフレ率は以下のように推移しています。名目成長率だけを見ていると高成長のように錯覚してしまいますが、インフレ調整後の実質成長率はそれほど高くはなさそうです。
出典:TRADING ECONOMICS

実績PERとインフレ率

実績PERは過去12ヶ月の実績EPSを使うので、予想PERとは逆にインフレ率のぶんだけ高めに出ることになります。

通常のインフレ率の国ではほとんど考える必要がなさそうに思えますが、新興国やフロンティア国の個別国について調べる場合は気をつけたほうが良さそうですね。


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