低CAPEの死?


これまでCAPEレシオが低い国への投資は非常に良いパフォーマンスを残してきました。
 過去記事:世界各国のCAPEレシオとその後10年間の実質トータルリターン
 過去記事:CAPEレシオが低い国への投資は米国株をアウトパフォーム

ですが、最近の低CAPE戦略はあまりうまくいっていません。

各国の2019年末時点のCAPEレシオと年初来パフォーマンス

下表は2019年末時点のCAPEレシオとPER、カントリーETFの年初来パフォーマンスをまとめたものです。
(CAPEレシオとPERはStarCapital AGのデータを使用。チェコとハンガリーはカントリーETFがないのでMSCIの2020年8月末データを使いました。)


CAPE
(2019年末時点)
PER
(2019年末時点)
Total Return
YTD
ギリシャ-3.217.5-31.6%
ロシア7.85.9-20.4%
トルコ8.510.3-25.1%
チェコ※10.213.8-19.7%
ポーランド11.012.5-16.7%
韓国12.716.53.7%
シンガポール14.112.8-21.8%
スペイン14.515.5-20.4%
マレーシア14.719.9-8.3%
香港15.016.0-6.1%
中国15.610.913.9%
ノルウェー16.319.3-13.1%
イスラエル16.321.6-11.0%
英国16.515.9-22.6%
オーストリア16.811.6-25.2%
タイ16.818.5-23.4%
ポルトガル17.318.1-11.3%
ハンガリー※17.610.6-29.3%
南アフリカ17.613.8-20.6%
インドネシア17.720.8-29.9%
メキシコ18.016.0-25.2%
フィリピン18.717.1-21.6%
ドイツ18.919.94.2%
ブラジル19.116.5-35.8%
オーストラリア19.619.1-9.7%
イタリア21.214.4-12.1%
インド21.727.5-3.3%
台湾22.119.27.8%
カナダ22.117.3-5.8%
スウェーデン22.318.68.3%
日本22.416.4-0.4%
フランス22.619.2-9.5%
ベルギー24.017.3-11.3%
フィンランド24.122.78.7%
オランダ26.021.34.6%
スイス27.123.95.7%
ニュージーランド30.123.41.6%
米国31.123.04.8%
デンマーク34.224.021.2%
アイルランド58.318.8-11.0%

CAPEレシオと年初来パフォーマンスの散布図を作ってみました。
(CAPEがマイナスのギリシャのみ除外)
PERでは以下のようになります。
さらにこの中には含まれていないナイジェリアはPER4~5、CAPEレシオも少なくともロシア以下だと思われますが、年初来パフォーマンスは-31.2%であり、ブラジル(-35.8%)、ギリシャ(-31.6%)に次いで悪いです。
 過去記事:NGE(グローバルX MSCIナイジェリアETF)構成銘柄のPERとCAPEレシオ

GVAL(カンブリア・グローバル・バリューETF)の低迷

年初来という短い期間だけでは何とも言えませんが、低CAPE戦略に近いGVAL(カンブリア・グローバル・バリューETF)もETFが設定された2014年3月12日以来でVTを大幅にアンダーパフォームしています。

出典:Portfolio Visualizer

年単位で見ても2016年と2017年以外はボロ負けです。特に2014年と2020年は酷い有様ですね…

出典:Portfolio Visualizer

私は低CAPE戦略みたいな逆張りでは長期間アンダーパフォームしても仕方ないと思っていますが、GVALを運用するカンブリアは今年6月1日からアクティブ運用に切り替えてしまいました。
 過去記事:GVAL(カンブリア・グローバル・バリューETF)、アクティブ運用に切り替え

2000年代前半〜2012年の間も低CAPE戦略はMSCI ACWIと大差ないように見えますし、かれこれ20年近くはうまくいっていなさそうです。
 過去記事:CAPEレシオが低い国への投資は米国株をアウトパフォーム
出典:CXO Advisory Group

近頃はバリュー投資の死という言葉を耳にするようになりましたが、バリュー/グロースでは少なくとも2000〜2007年くらいがバリュー優位の期間で、リーマンショック以降がグロース優位という感じなので、低CAPEの死のほうがひどいかもしれません。
 過去記事:バリュー/グロースとディフェンシブ/シクリカル

もしかしたらまた低CAPEのターンが来て叩き売られた国々が高いパフォーマンスを残すこともあるかもしれませんが、このまま報われない期間が長期化しそうな気も普通にしますね…

私はポートフォリオの2割超を低CAPE戦略(NGE、ERUS、DGS、GVAL)に割いており、アンダーパフォームの一因となっていますが、めげずに続けていくつもりです。


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