前々回に引き続き税率とリターンの話です。
過去記事:過去の高配当株アウトパフォームは配当税率が高かったためかもしれない
ジェレミー・シーゲルの有名なグラフによると、米国株は長期的に見れば一貫して7%弱の実質トータルリターンを生んできたことが分かります。
これは直近まで引き延ばして作ってみてもやはり同じようなトレンドラインが引けます。
過去記事:【S&P500】実質トータルリターンのトレンドラインからはさほど乖離していない
これだけだと「せいぜい過去200年程度の話なので今後どうなるのかは分からないのでは?」という疑問を持ってしまいますが、トマ・ピケティの研究によると世界的な資本収益率rは世界経済成長率gの水準にかかわらず安定して4〜5%程度で推移してきました。
出典:ピケティ『21世紀の資本』図表 |
過去2000年間にわたって資本収益率が安定的に高位で推移してきたからといって今後も同じだという保証はどこにもありませんが、順当に考えれば、少なくとも私が生きている間は同じだろうと考えておいても良いと思います。
過去記事:確固たる真理は存在しない
一方、世界的な「税引き後」資本収益率は20世紀の間は世界経済成長率gを下回っています。
出典:ピケティ『21世紀の資本』図表 |
以前にも書いたのですが、投資家は税引き前ではなく、税引き後の期待リターン(期待リターン=(1-配当税率)×配当利回り+(1-キャピタルゲイン税率)×キャピタルゲイン)で考えており、配当税率やキャピタルゲイン税率の増税・減税を織り込んで株価が形成されるため、税引き後のリターンが一貫した推移になるのではと思っていました。
過去記事:米国株の配当課税について
ですが、ピケティのデータを見ると税引き前の資本収益率が一貫した推移になっており、税引き後の資本収益率は税率の高かった20世紀に凹んでいます。
S&P500の税引き後の実質トータルリターンのデータは見たことがありませんが、税引き前が一貫して7%弱で推移しているため、税引き後ではもっと凸凹していると思います。
投資家全体の平均税率が上昇すれば資産価格は下落し、平均税率が下落すれば資産価格は上昇することで、(他の条件が変わらなければ)税引き後の期待リターンが一定になるように動いていると思っていましたが、20世紀の税引き後資本収益率の凹みはそれが無かったということだと思います。
そもそも、永久成長率モデルではフリーキャッシュフローの現在価値は下式で表されます。
現在価値=1年後のフリーキャッシュフロー/(期待リターンr-成長率g)
全体としてみれば成長率gは長期的には経済成長率となり、期待リターンrは税引き後のことを指していると考えると、税引き後の資本収益率が経済成長率よりも高いのは自然なことのはずです。
20世紀の税引き後rとgの逆転はどのように考えれば良いのか謎です。
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