【長期インフレヘッジ】S&P500 vs ゴールド vs キャッシュ


株式はインフレに強い資産だと言われることもありますが、実際には高インフレ時よりも低インフレ時に強い資産であり、高インフレ下ではゴールドのほうがパフォーマンスが良い傾向にあります。

 過去記事:インフレヘッジとしては株式や短期債よりもゴールドが有効


しかし、直近の高インフレ下では同時に金利も急上昇しているため、実質金利が上昇すると下落しがちなゴールドはインフレヘッジとしてはうまく機能していません。


物価連動国債も金利リスクがあるので実質金利上昇とともに下落していますし、ビットコインも大幅下落なので、短期的にインフレヘッジになったのはコモディティくらいです。


とはいえ、インフレ上昇を見越してコモディティETF等を買うのは素人にはなかなか厳しいですし、そもそも一般人のインフレヘッジというのは短期的にインフレ上昇についていける資産に乗り換えていくというよりは、ある程度長い期間保有してインフレ調整後の購買力を保ちたいというのが主だと思います。


ある程度の期間ならやはり株式やゴールドが良いのではということで、今回はCPIとS&P500、ゴールド、キャッシュのローリングリターンを調べてみました。

10年ローリング

まずは10年ローリングです。

※S&P500(配当無)はmultpl.com、ゴールドはWorld Gold Council、CPIはFREDの月次データ、キャッシュは預金金利の代わりにFFレートを使っています。期間は1969年12月~2022年8月です。

CPIを引いた実質ベースではこうなります。

S&P500は配当抜きのプライスリターンなので不利ですが、それでもプラスになっている期間はS&P500>キャッシュ>ゴールドです。


ゴールドはニクソンショック後(1971~1980年)とゴールドETF解禁~QE開始(2003~2011年)の上昇が凄まじいものの、10年単位ではマイナスの期間が地味に多いです。


1970年代の高インフレ下ではたしかにゴールドが圧倒的でしたが、兌換停止という大イベントはもう起こらないので同じような暴騰はもう期待できなさそうです。

インフレ上昇時には金利も引き上げられるので株式よりはキャッシュのほうがマシという意見もありますが、リーマンショック以降はずっとマイナスです。


日本も最近はアメリカよりはマシなもののずっとマイナスですし。

5年ローリング

期間をもっと短くして5年ローリングでは以下のようになります。

CPIを引いた実質ベースです。

5年では差が縮まりましたが、プラスになっている期間はやはりS&P500>キャッシュ>ゴールドの順です。

20年ローリング

期間をもっと長くして20年ローリングでは以下のようになります。

CPIを引いた実質ベースです。

20年でもプラスになっている期間はやはりS&P500>キャッシュ>ゴールドの順です。


S&P500の場合は配当抜きでも20年投資すればなかなかマイナスになりませんでしたが、ゴールドはニクソンショック後の暴騰のあと約20年間の下落相場が続いたので、投資するタイミングにかなり左右されています。

(もっとも当時のような暴騰はなさそうなので、暴騰の反動で下げ続けるようなこともなさそうですが…)


何も考えずある程度長期にわたって購買力を維持したいという目的ならやっぱり株式を脳死ホールドで良さそうです。

60/40

そして改めて株式とゴールドって相性良いんだなと思いました。1974年以降だと60/40ポートフォリオの債券部分をゴールドに入れ替えてもリターンはほぼ同じみたいです。債券の強気相場は死んだ派はこっちのほうが良いのかもしれません。



出典:Portfolio Visualizer

その他:アート

あとは富裕層のインフレヘッジとしてはアートも良さそうです。Artprice100という優良アーティスト指数は2000年以降ではS&P500を大幅に上回っているそうです。
(S&P500は2009→2010年で61→8に暴落していたりで数字が怪しいですが。)

出典:Artprice.com


アーティストが死亡している優良作品は供給が増えることがないので値上がりしやすいんでしょうか。

オルタナティブ投資としてはハードルが高すぎるので、庶民にはビットコインのほうが良さそうです。



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コメント

  1. 20年程前、私が投資を始めた頃、夢中で見ていた投資関係ホームページがあり、その製作者はブログ主様のように経済史と投資を結びつけるような記事を多く掲載されていました。
    その方は、過去100年以上の歴史から、10年おきに上昇する物がかわること、上昇する順番は商品➡株式➡現金(債券)➡商品と繰り返していることを指摘されていました。
    その方の説に従えば、現在は2011年から2020年までの「株式の時代」が終わり、現金(債券)の時代へと移り変わるはずです。
    自分は、2年前、金利が下限にあること(債券価格上昇の余地はないと判断)を年頭に高配当で安値で放置されていたエクソンモービル株(XOM)を一種の疑似債券として購入しました。
    ところが、思惑に反し、売電政権がいろいろやらかしたせいもあり、石油株はグロース株と化し、円ベースでの金価格は上昇となりました。
    2020年代は、あと7年あります。市場はどのような動きをするのか難しくもあり、面白くもあります。

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    1. 10年サイクルはあまり意識したことがなかったですが、言われてみればたしかにそんな感じはしますね。
      2020年代は債券の時代というにはかなり厳しいですが、金利も良いところまで上がってきているので現時点から投資するのには良い時代なのかもしれません。
      ありがとうございます。自分でも調べてみることにします。

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