ビットコインやゴールドの長期保有では自己管理(セルフカストディ)が基本だと思いますが、ETFや分別管理(暗号資産交換業者や金融機関等に分別管理(特定保管)で預ける)という方法もあります。
DMM Bitcoinの不正流出以降、セルフカストディが一部で話題?になっていますが、今回は私が思っているそれぞれのメリットとデメリットをまとめてみました。
過去記事:ゴールドとビットコインのセルフカストディの重要性を再認識した日
自己管理(ビットコイン)
メリット
誰にも奪われない
神聖不可侵の財産権、資産の完全なコントロールを実現できる。唯一にして至高のメリット。
デメリット
セルフGOX、相続GOX
自分の不注意で紛失したり引き出せなくなる。秘密鍵紛失、送金ミス、老化や病気・怪我等で自己管理できないレベルまで認知能力が低下する、相続人に伝えずに急死して相続できないなど。
ビットコイン価格が安かった頃は雑に扱われていたため、一説によると供給上限2100万BTCのうち既に300〜400万BTCはセルフGOXしているとも言われており、このリスクが一番大きそう。
GOX時の税金や相続税
セルフGOX時の税金や相続GOX時の相続税が未だ不透明。とはいえ税理士が問題提起している投稿をよく見かけるだけで実際に税金を取られた人の話はない気がする。過剰に騒がれている雰囲気も。
盗難・災害・接収
クラウドは論外。自宅等は盗難・災害リスク、貸金庫は接収リスク。どこに保管しても何らかのリスク。
シングルシグ(1つの秘密鍵の署名で送金できる)は危険なので最低限パスフレーズを設定するか、マルチシグ(複数の秘密鍵の署名で送金できる)で保管場所を分ける必要性。逆に保管場所を分けて単一障害点をなくせばリスクは減らせる。
低エントロピー
24単語のシードフレーズは256ビットのエントロピー(2の256乗)を持つので総当たり攻撃の心配はないが、ウォレットの乱数生成器に問題があってエントロピーが足りない可能性も。ハードウェアウォレットなら問題なさそうだが、心配なら分散するとか、自分でサイコロ※を振って乱数生成することでより安全に。
※6面サイコロならエントロピーはlog2(6) ≒2.58496ビットなので256ビットのエントロピーを得るには100回以上振る必要がある。
ハードルが高すぎる
ただ買って放置すればいいだけの取引所やETFと比べて学習コストが高すぎる。現状はまだ発展途上なので管理方法も定期的に見直していく必要がある。費用はある程度の規模だとむしろ安いが、ハードウェアウォレットやシードフレーズの保管コスト等がかかる。興味がないと無理では…?
分別管理の取引所(ビットコイン)
メリット
手軽
何も考える必要がない。
コストゼロ
保管するだけならコストゼロ。
引き出せる
その気になれば引き出せる。
デメリット
ただの債権でしかない
DMM Bitcoinは母体が大きいのでとりあえずビットコインで補償してくれるらしいが、ビットコイン価格が上昇していくほど流出時に補償されない可能性が上がりそう。
盗難・接収
災害リスクはほぼなさそうだが、盗難リスクがたぶんETFよりも高そう。
ETF(ビットコイン)
メリット
申告分離課税
一番のメリット。とはいえ低所得者だと雑所得のほうが安い場合も。
手軽
何も考える必要がない。
取引所よりは安全そう
BlackRockをはじめ世界最大の運用会社が参入しており、機関投資家も買っているので雰囲気的には取引所よりはかなり安全そうだが、カストディアンはCoinbaseに集中している。ゴールドETFよりは数段危ない気がする。
デメリット
金融庁ブロック
そもそも日本では取引できる可能性がほぼない。
盗難・接収
災害リスクはほぼなさそうだが、接収リスクは取引所に預けているのと同じ?
証券
ビットコインの良さが死んでいる。取引所と違っていざというときに引き出すこともできない。
信託報酬
ETFなので持っているだけで信託報酬がかかる。
自己管理(ゴールド)
メリット
誰にも奪われない
ビットコインと同じだが、物理的な実体があるので個人レベルでは難しい面も。国家にとっては不正流出リスクもなく、これ以上ない安全資産。最近は国家もセルフカストディの動き?
総合課税の短期/長期譲渡所得
所有期間が5年以内では短期譲渡所得、5年超では長期譲渡所得、特別控除額50万円があるので譲渡益が50万円以下なら税金がかからない。少額の場合はETFよりも有利。
美しい
長年愛されてきた安心の輝き。
デメリット
盗難・災害・接収
ビットコインと違って物理的な実体があるのでリスク低減ができない。
ポータビリティ
持って逃げられない。
分別管理(ゴールド)
メリット
手軽
ビットコインと同じ。
総合課税の短期/長期譲渡所得
所有期間が5年以内では短期譲渡所得、5年超では長期譲渡所得、特別控除額50万円があるので譲渡益が50万円以下なら税金がかからない。少額の場合はETFよりも有利。
貸金庫に預けているのと近い状態
所有権が契約者に帰属する特定保管(混蔵寄託)であれば貸金庫に預けているのと近い状態なので、預けている会社が破綻した場合も戻ってくるはず。その気になればいつでも引き出せる。
デメリット
盗難・接収
盗難リスクはビットコインの分別管理に比べるとリスクは相当低そう。接収リスクは同じ?
ETF(ゴールド)
メリット
申告分離課税
ビットコインと同じ。
手軽
ビットコインと同じ。
デメリット
盗難・接収
盗難リスクはビットコインのETFよりも低そう。接収リスクは同じ。
証券
ビットコインと同じ。国内ETFでは現物と交換できるものもあるが、昔からペーパーゴールドはみんなが現物との交換を望んだら本当に大丈夫なのかみたいな話も。
信託報酬
ビットコインと同じ。
まとめ
ビットコインもゴールドも法定通貨の減価に対するヘッジとしてだけならどの保有形態でも良いと思いますが、接収リスクを少しでも気にするなら現物の自己管理一択です。
盗難リスクはゴールドの場合は個人で安全に自己管理できる場所がたぶんなさそう(貸金庫なら分別管理で預けているのと変わらなさそう)なので、ETFや分別管理のほうが良さそうな気がしますが、ビットコインの自己管理は人によってかなり差があるのでどれが安全かは一概にはいえなさそうです。
接収リスクがゼロと考える人にとっては自己管理するメリットは小さくETFが最も手軽で合理的な選択肢になると思います。
(個人的にはゴールドの盗難リスクを接収リスクよりも下げるのは無理そうな気がしていますが、ビットコインは盗難リスクのほうが小さくなるんじゃないかと思っているので自己管理のほうが良いのかなと。)
ただ相続はかなり問題になりそうで、ビットコインは現状だと自己管理のハードルが高いので一回説明したくらいでは忘れ去られる可能性が結構ありそうですし、ゴールドも貸金庫が信用できないから庭とかどこかに埋めるみたいなことをしていたらそのまま失われた埋蔵金になってしまうこともありそうです。
自己管理のビットコインやゴールドは国家を信用しない人にとっては理想的な資産だと思いますが、相続人も同じ思想の可能性は低そうなので結局はETFの形で証券口座にまとまっているほうが有り難いということになりそうな気がします。
独身で相続人なしの場合は遺産は国庫行きなので、国庫に納めるのが嫌な人はビットコインやゴールドを自己管理でGOXさせたり埋蔵金にすることで希少性を高めて他の保有者の価値を引き上げられると考えることもできそうです。
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