参考:From Boom to Bust: A Typology of Real Commodity Prices in the Long Run(Simon Fraser University)
Real Commodity Price Index Components(1900-2015)
過去115年間のインフレ調整後のCommodity Price Index Componentsの推移です。実質ベースでも割と上昇しているんですね。出典:Simon Fraser University |
ただし、Commodity Price Indexの中身は昔と今では全く違っています。1900年頃は約6割が農作物でしたが、今では半分以上がエネルギーです。
出典:Statistics Canada |
"to be grown"、"in the ground"、"in the ground, ex-energy"という分け方をすると、エネルギーの大幅上昇が牽引していることがよく分かりますね。
出典:Simon Fraser University |
各コモディティ価格の上昇率
1850-2015年、1900-2015年、1950-2015年、1975-2015年の各コモディティ価格の実質累積上昇率は以下のようになっています。出典:Simon Fraser University |
1850-2015年で上昇しているのはBeef、Lamb、Coal、Steel、Tin、Goldだけで、他は全部マイナスです。Beefが+122.85%に対してPorkが-76.55%なのが面白いですね。
同じ貴金属でもGoldとPlatinumは全期間で上昇しているのに対して、Silverはかなり弱いです。
ニクソンショック以降ということで1975-2015年を降順に並べると以下のようになります。ついでなので右に年率換算も載せています。
上位5種はGold(+104.11%)、Potash(+90.95%)、Petroleum(+82.04%)、Natural gas(+79.05%)、Platinum(+51.08%)、下位5種はPork(-67.97%)、Peanuts(-63.34%)、Cotton(-63.33%)、Bauxite(-62.53%)、Coffee(-59.47%)です。
各コモディティのチャート(1850-2015)
コモディティのチャートのうち興味のあるものを幾つか抜き出してみました。エネルギー
まずはエネルギーです。リーマンショック前の石油は実質ベースで1900年の約7倍、天然ガスも約4倍まで上昇していたんですね。実質ベースの長期推移を見ると、足元のエネルギー価格暴落もバブルが崩壊して適正価格に戻っただけという風にも思えます。出典:Simon Fraser University |
貴金属
次は貴金属です。高インフレの1980年前後の上昇はゴールド>シルバー>プラチナですが、その後はシルバーのみ低迷しています。ゴールドは大恐慌後の金本位制離脱、ニクソンショック、コモディティバブル+リーマンショック後のQE開始でそれぞれ大きく上昇していますね。出典:Simon Fraser University |
2015年のゴールドとプラチナは実質ベースで1900年のほぼ2倍です。特にゴールドは2015→2020年でさらに50%超(名目ドル建て)上昇しているので、現在の水準はかなり高いように思えます。
ジェレミー・シーゲル教授の例の長期チャートもゴールドが実質ベースで年率1%弱のリターンを出していますが、物価を構成するコモディティの一種であるゴールドが永続的に物価水準を上回って上昇し続けるのはおかしいと思います。
ですが、各国の大規模金融&財政拡大で"Cash is Trash"になることで更なるバブルもあり得るんじゃないかなと思います。
個人的には貴金属ロイヤリティ・ストリーミング会社と、あとは金銀比価から見て割安なシルバーの上昇を期待して銀鉱株を買っていこうかなと思っています。
過去記事:貴金属ロイヤリティ・ストリーミング会社と銀鉱株
工業用金属
工業用金属は以下のようになっています。出典:Simon Fraser University |
出典:Simon Fraser University |
出典:Simon Fraser University |
タバコ・ウール
最後はタバコとウールです。出典:Simon Fraser University |
米国の喫煙率のピークが1954年なので、タバコは喫煙率の低下とともに価格も下がっている感じですね。
過去記事:米国におけるタバコ価格の推移
出典:Statista |
家畜
家畜は牛肉が大きく上昇した一方で豚肉は下落トレンドです。出典:Simon Fraser University |
出典:Simon Fraser University |
世界の食肉消費量を見てみると、牛肉よりも豚肉と鶏肉が増えているようです。牛は豚や鶏と比べて生産コストが高いですが、飼育技術の改良も他と比べて難しいということなんでしょうか。
出典:楽天証券 |
イコールシェア
1975年の比率、2011年の比率、均等比率の比較です。暴騰したエネルギーが含まれるかどうかでパフォーマンスが大きく違ってきています。GAFAMを除くS&P500みたいな感じがしますね…出典:Simon Fraser University |
コモディティ全体で見れば実質ベースの長期的な上昇率は0%に収束するはずですが、個別に見ると長期にわたって上昇し続けるものもあれば、下落し続けているものもあるので色々難しいですね。
たとえば生産コストが低下した豚肉の価格が今後また1900年の水準まで戻ることはないでしょうし、反対に埋蔵量が限られているゴールドが今後もさらに実質ベースで上昇し続けることがあってもおかしくはないのかもしれません。
再生可能エネルギーが普及するにつれて石油価格が今後下がるだろうなというのは予想がつきやすいですが、貴金属価格がどうなるのかはよく分からないので今後の値動きにはかなり興味があります。
(個人的には短中期的に強気、長期的には弱気です。)
過去記事:ミレニアル世代のジュエリー離れとゴールドのバブル
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