株価と実体経済の乖離は異常なことではない


堀古英司さんのブログに株価と経済の乖離について、とても分かりやすい説明があったので引用します。
株式というのは永久証券なので、如何なる経済ショックであってもそれが比較的短期のものであれば、本来株価に大きな影響があってはならない、という事になります。歴史的に見てみますと、リセッション時に株価が大きく下がるのはその通りなのですが、アメリカの場合ほとんどのリセッションは、需要を先食いしてしまってその後回復に何年かかるか分からない、という状況を嫌気するパターンです。その点で今回の新型コロナウイルスは恐らく、少し長めの短期的ショックという珍しいパターンなので、経済と株式相場の乖離を疑問視されている方が多くいらっしゃるのかもしれません。ちなみにこの点について、私は3月に相場が大きく下落する前からずっと申し上げてきており、むしろ株式相場を短期的ショックと結びつける3月の方が異常な状態だったと考えています。
引用:堀古英司の「米国株式の魅力」
以前、当ブログでも書きましたが、割引率を10%、永久成長率を4%とした場合、もし仮に1年後の利益がゼロになったあと2年後以降は元に戻るとすると株価は5.5%下落しません。1~3年後の利益がゼロになった場合は15.5%下落します。
 過去記事:DCF法と株式の価値

年初から長期金利が大幅に下落しているので、 利益の減少を割引率低下が相殺して株価が回復したのは全く異常なことではないと思っています。
 過去記事:リーマンショックとコロナショック下の株式リスクプレミアム推移

参考までに理論価値に占めるX年後の利益の割合をグラフ化すると以下のようになります。
(右端は31年後以降の合計です。)

株価とEPSとGDP

長期的にみれば、株価=EPS×PERなので株価はEPSと同じように上昇しますし、EPSもやはり長期的にはGDPとともに上昇していくはずで、超長期の株価とEPSとGDPを並べると似たような推移になります。
 過去記事:【実体経済と株価】米国の実質GDP・実質EPS・実質株価
ですが、株価はふつう景気循環に先行するものです。景気後退入りの前に既に株価は下がっており、景気後退が終わる前に底打ちするので、景気後退期のS&P500の実質株価はそれほど下がらないことが多く、むしろプラスのときもあります。
 過去記事: 景気後退期におけるS&P500のEPS・DPS・株価・PER・CAPEレシオの変化

短期的にみれば株価と実体経済の動きが乖離するのはよくあることだと思います。

産業別の時価総額変化率

最後に、2/14~7/17の産業別の時価総額変化率を見てみると、資本集約的で負債が多くCOVID-19の影響を強く受ける石油・ガス、航空や銀行が大幅に減少した一方で、影響が小さかったり逆に恩恵を受けるソフトウェア、オンライン小売、ヘルスケアなどは増加しています。長期的にプラス/マイナスの影響を受けそうなところの時価総額は増加/減少しているという感じですね。

出典:Musings on Markets


産業別の変化率が妥当かどうかは置いておいて、市場全体では合理的な水準にあるように思えます。


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