なお、金価格とCPIはFRED、銀価格はinvesting.comのデータを使いましたが、CPIは7月のデータがまだなので、代わりに6月と同じ数値ということにしています。
金価格の長期推移(名目とインフレ調整後)
まずは1968年4月~2020年7月のゴールド(名目とインフレ調整後)です。名目では過去最高値を更新していますが、インフレ調整後では最高値(1980年1月)よりも10%低い水準にあります。
一方、全期間のインフレ調整後価格の中央値からは156%高い水準にあります。
銀価格の長期推移(名目とインフレ調整後)
次は1973年2月~2020年7月のシルバー価格です。シルバーは名目でも過去最高値よりもかなり低く、インフレ調整後では最高値(1979年12月)よりも79%低い水準にあります。
一方、全期間のインフレ調整後価格の中央値からは56%高い水準にあります。
ゴールドvsシルバー
名目のゴールドとシルバーを並べると以下のようになります。インフレ調整後です。
CAGR(年平均成長率)は名目ではゴールドが6.85%、シルバーが4.93%、実質ではゴールドが2.90%、シルバーが1.04%です。
(1971年8月のニクソンショック(米ドルとの金兌換停止)から間もない1973年2月を起点としているので高めに出ています。)
ゴールドやシルバーもコモディティの一種として考えると超長期的にはインフレ率と同等のリターンになるはずで、そうすると現在の価格はかなり割高に感じます。
一方で、1850〜2015年のコモディティ価格の実質上昇率を見てみると、同じ金属でもニッケルが-88.13%、シルバーが-63.47%、鉛が-59.50%、銅が-53.89%と大幅に下落した一方で、鉄が+65.98%、ゴールドが+65.44%と大幅に上昇しています。
過去記事:コモディティ価格の長期推移
出典:Simon Fraser University |
食肉でも牛肉が+122.85%、ラムが+91.68%に対して豚肉が-76.55%と大きな差が出ていますし、1900〜2015年では石油が+339.45%、天然ガスが+92.27%、石炭が+71.25%と大幅に上昇しています。
すべてのコモディティを合わせたものの超長期的な実質リターンがゼロに収束するとしても、個々のコモディティが需給によって長期間インフレを上回って上昇し続けたり、下落し続けたりといったことは珍しいことではありません。
レイ・ダリオの"Cash is trash"みたいな感じでゴールドやシルバーがさらに上昇するとしても不思議ではなさそうにも思えます。
過去記事:現金はゴミ、債券はバブル、ゴールドは利息を生まない、なので割高な株式を買う
10年ローリング・リターン
名目の10年ローリング・リターンは以下のようになります。下表は10年ローリング・リターンの最大値、中央値、最小値をまとめたものです。
インフレ調整後のゴールドの最大値17.93%は2001年8月~2011年8月、最小値-10.28%は1980年6月~1990年6月です。
シルバーの最大値24.37%は2001年3月~2011年3月、最小値-21.43%は1980年2月~1990年2月です。
直近の10年間ではゴールドが3.64%、シルバーが1.48%です。
金銀比価
金銀比価は一時史上最高値を更新していましたが、直近のシルバーの急騰で足元では80まで下落しています。過去記事:金銀比価とシルバー版オールシーズンズ・ポートフォリオ
ちなみにBullionVaultによると、金銀比価は中世欧州ではほぼ12で保たれていましたが、19世紀フランスの金銀複本位制の際には15.5、20世紀初頭に金本位制が導入されてからは30超まで上昇し、金本位制が終わった1971年以来の平均値は58.4となっているそうです。
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いつも有益な記事をありがとうございます。
返信削除ゴールドがインフレ調整後の過去の推移から見て割高だと、DUST等でショートしたくなります。(Cash is trashシナリオだと大損しますが)
インフレ調整後の価格を普通に眺めるとたしかにショートしたくなりますよね。
削除個人的には"Cash is trash"シナリオ派なので金鉱株・銀鉱株(特に銀)に中期的に強気なんですが、短期的に上がり過ぎたのでとりあえず静観です。