PBRとインフレ


PBRの分母のBPS(一株当たり純資産)は時価ではなく簿価です。


銀行は簿価純資産≒時価純資産となっているそうなので別だと思いますが、基本的にはBPSはあくまでも帳簿上の価格なので時価とは違っているはずです。

 参考:金融銘柄のPBRはバリュエーション判断に役立つ!


通常はたとえば工場設備等は取得した価格よりも時価のほうが低いことがほとんどだと思うのですが、高インフレ国では逆に時価のほうが高くなっていることもあると思います。


そのため、国同士のPBRを比較するときにはインフレ率の差に注意する必要があり、高インフレ国は低インフレ国よりも高めに出ていると考えたほうが良さそうです。

 

PBRの分母を簿価純資産ではなく時価純資産にしたものを「Qレシオ」というそうですが、これはバブル当時に資産価格が急激に上昇した際に流行した指標だそうで、現在ではあまり使われていないそうです。

(各国のQレシオ比較とかがあったら面白いと思ったのですが、少し調べてみた感じではなさそうでした。)

 

世界各国のPBRとインフレ率

各国のPBRとインフレ率を表にまとめてみました。

(PBRとPERはStarCapital AG(載っていない一部国はMSCI)、インフレ率は「世界経済のネタ帳」世界のインフレ率ランキング(2018年)のデータを使いました。)


国名PBRインフレ
米国4.12.4%
デンマーク3.60.7%
スイス2.80.9%
インド2.83.4%
インドネシア2.63.2%
スウェーデン2.42.0%
ニュージーランド2.41.6%
台湾2.21.5%
オランダ2.21.6%
全世界2.2-
オーストラリア2.02.0%
ブラジル2.03.7%
エジプト1.920.9%
フィンランド1.91.2%
南アフリカ1.84.6%
カナダ1.82.2%
香港1.72.4%
ノルウェー1.72.8%
タイ1.61.1%
メキシコ1.64.9%
ドイツ1.61.9%
フランス1.62.1%
フィリピン1.55.2%
マレーシア1.51.0%
英国1.52.5%
アイルランド1.50.7%
トルコ1.416.3%
ベルギー1.42.3%
ポルトガル1.41.2%
アルゼンチン1.434.3%
中国1.32.1%
イスラエル1.30.8%
日本1.31.0%
チェコ1.22.2%
スペイン1.21.7%
イタリア1.11.2%
パキスタン1.03.9%
韓国1.01.5%
ロシア0.92.9%
ハンガリー0.92.8%
ポーランド0.91.6%
オーストリア0.82.1%
シンガポール0.80.4%
ナイジェリア0.712.1%
ギリシャ0.60.8%


セクター比率によっても違ってきますし、単純に割高だったり割安だったりというのもあるのではっきりとした傾向はありませんが、なんとなくインフレが高いほどPBRも高くなっているように見えます。

世界各国のROEとインフレ率

次にROE(PBR÷PER)とインフレ率を比べてみました。


国名PBRPERROEインフレ
エジプト1.98.123.7%20.9%
ナイジェリア0.74.414.9%12.1%
インドネシア2.619.413.4%3.2%
米国4.130.613.4%2.4%
スウェーデン2.418.113.3%2.0%
スイス2.822.712.3%0.9%
パキスタン1.08.612.1%3.9%
デンマーク3.631.211.5%0.7%
南アフリカ1.815.811.4%4.6%
台湾2.220.110.9%1.5%
チェコ1.211.510.4%2.2%
トルコ1.413.810.1%16.3%
中国1.313.010.0%2.1%
ロシア0.910.18.9%2.9%
フィンランド1.921.68.8%1.2%
全世界2.226.48.3%-
インド2.834.48.1%3.4%
香港1.721.08.1%2.4%
タイ1.620.27.9%1.1%
フィリピン1.519.07.9%5.2%
オーストラリア2.026.37.6%2.0%
ニュージーランド2.432.27.5%1.6%
メキシコ1.622.27.2%4.9%
カナダ1.825.67.0%2.2%
ハンガリー0.913.56.7%2.8%
マレーシア1.524.56.1%1.0%
ブラジル2.033.66.0%3.7%
ベルギー1.424.35.8%2.3%
オーストリア0.813.95.8%2.1%
イスラエル1.322.75.7%0.8%
スペイン1.221.25.7%1.7%
ドイツ1.629.65.4%1.9%
英国1.528.25.3%2.5%
日本1.324.55.3%1.0%
ポルトガル1.426.85.2%1.2%
ポーランド0.918.64.8%1.6%
オランダ2.246.34.8%1.6%
シンガポール0.817.24.7%0.4%
フランス1.637.14.3%2.1%
韓国1.025.24.0%1.5%
イタリア1.141.32.7%1.2%
ノルウェー1.766.22.6%2.8%
アイルランド1.563.12.4%0.7%
ギリシャ0.642.41.4%0.8%
アルゼンチン1.4110.51.2%34.3%


ROEはエジプトが23.7%とずば抜けて高く、次いでナイジェリア、インドネシア、米国、スウェーデンが13〜14%となっていますが、これはエジプト企業が際立って経営効率が高いということではなく、インフレ率が高いためにPBRが高めに出ているのが主因だと思います。


ROEが低いのはアルゼンチン、ギリシャ、アイルランド、ノルウェー、イタリア、韓国、フランス、シンガポール、オランダ・・・とアルゼンチン以外はすべて低インフレ国です。


ROEとインフレ率の散布図を作ってみました。

超高インフレのエジプトとアルゼンチンを除くと以下のようになります。以前作ったものでROEと長期金利のグラフがあるのですが、これも同じような傾向があります。まあ高インフレ≒高金利、低インフレ≒低金利なので同じようなことですね。

 過去記事:世界各国のROEと長期金利と株主資本コスト

そしてROE-株主資本コスト(rE)とPBRでも以下のようなグラフになります。

PERとインフレ

PERはPBRよりも国同士の比較に使いやすいように思えますが、高インフレ国では予想PERはインフレ率のぶんだけ低め、実績PERは逆に高めに出るはずです。

 過去記事:【予想PERと実績PER】高インフレがPERに与える影響について


通常のインフレ率ではそれほど気にする必要もなさそうですが、高インフレ国と低インフレ国を比べるときはPBRやPERに多少影響があると思っておいたほうが良いのかなと思っています。




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