古代ローマと現代ではゴールドの購買力はほとんど同じみたいな話もあるので、過去2000年くらいの期間ではゴールドのインフレ調整後リターンはほぼゼロだったと考えて良いと思います。
(コモディティ全体のインフレ調整後リターンは超長期ではゼロに収束するのでゴールドも超長期ではCPIと同程度の上昇率に収束するというのは直感的に正しいような気がします。)
しかし、ニクソンショック以降のゴールドはインフレを圧倒的に上回るペースで上昇していますし、もう少し期間を長くして1800年代からみてもやはりインフレを上回っています。
過去記事:コモディティ価格の長期推移
各国のM3とゴールド価格
ニクソンショック以降のゴールドはCPIよりもマネーサプライM3と同じペースで上昇しているように見えます。
先進国各国のマネーサプライM3(現地通貨建て)とゴールド価格(米ドル建て)をグラフ化すると以下のようになります。
※データはFREDのもので、1990年1月=100としています。M2と比べたほうがいいのかなと思いましたが、FREDではM2の最近のデータがなかったのでM3にしました。
ゴールド価格/米国のM3(1990年1月=100)は以下のようになります。
ゴールドと米国CPI
米ドル建てゴールドは米国CPIを遥かに上回るペースで上昇してきましたが、CPIはサービスと財では上昇ペースがかなり違っており、特に耐久財は1990年代後半からは右肩下がりです。
M3のグラフと同じく1990年1月=100としてゴールドとCPIサービスを比べてみると、ゴールドはCPI全体を大きく上回ってはいるものの、医療サービスのCPIとはだいたい上昇ペースが同じくらいに見えます。
ゴールドは技術革新によって低コストで生産可能になった財ではなく、医療サービスのような付加価値の高い産業に従事する労働者の賃金と同じペースで上昇しているという風にも考えることができると思います。
すべてのものが最終的にはCPIと同程度に収束するということはなく、ゴールドや都市部の土地、高付加価値の労働力といった供給が限定されているものはCPIを上回り続けても不思議ではないのかもしれません。
過去記事:【需給と価格】イギリスの宅地の実質価格は長期で上昇し続けている
逆に考えると、供給が限定されているものに対する購買力を維持するためにはキャッシュや短期債を保有しているだけでは不十分で、やはりある程度のリスクをとってゴールドや株式のようなものに投資する必要があるのかなと思います。
出典:Portfolio Visualizer |
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