ウィリアム・バーンスタイン著『 「豊かさ」の誕生』によると、近現代の持続的な経済成長の源泉は「私有財産権(法の支配)」「科学的合理主義」「資本市場」「輸送・通信技術」の4要素にあり、どれかひとつが欠けていてもうまくいかないそうです。
経済成長がうまくいかなかった例として、私有財産権と資本市場が欠如していた共産圏、私有財産権が欠如しているイスラム圏や南米が挙げられていましたが、2021年は法の支配の重要性を再認識できた一年になった気がします。
WJP Rule of Law Index
人治国家であると批判されることの多い中国は分かりやすいですが、法の支配がどの程度確立しているかという目安がないかなと調べてみるとWJP Rule of Law Indexという指数の存在を知りました。
Constraints on Government Powers、Absence of Corruption、Open Government、Fundamental Rights、Order and Security、Regulatory Enforcement、Civil Justice、Criminal Justice、Informal Justiceの9ファクターから構成されており、2021年のランキングは以下のようになっています。
出典:WJP Rule of Law Index |
先進国は全般的に高スコアですが、デンマーク(0.90)、ノルウェー(0.90)、フィンランド(0.88)、スウェーデン(0.86)、ドイツ(0.84)は特に高いです。
新興国のなかではチェコ(0.73)、チリ(0.66)、ポーランド(0.64)、南アフリカ(0.58)、マレーシア(0.57)などは比較的高いですが、エジプト(0.35)、パキスタン(0.39)、ナイジェリア(0.41)、トルコ(0.42)、メキシコ(0.43)、フィリピン(0.46)、ロシア(0.46)、中国(0.47)などは低いです。
中国はもっと低くても良いのではと思いましたが、Fundamental Rights(0.27)、Constraints on Government Powers(0.31)、Open Government(0.38)が際立って低い以外は平均的な水準です。
(中国のFundamental Rightsはイラン(0.22)、エジプト(0.24)、ミャンマー(0.22)に次いで低いです。)
ちなみにトルコはConstraints on Government Powers(0.28)とFundamental Rights(0.31)とCriminal Justice(0.36)、ロシアは、Constraints on Government Powers(0.35)とCriminal Justice(0.31)、ナイジェリアはAbsence of Corruption(0.32)とOrder and Security(0.34)が特に低くなっています。
グローバルな株式市場が加熱しているなか、中国やトルコ、ナイジェリア、パキスタン、ロシアなどは割安に見えますが、低バリュエーションで放置されているこれらの国々は法の支配があまり確立していないので長期投資には不向きだと思っておいたほうが良いのかもしれません。
今までの中国のように高いGDP成長が上場企業のEPS成長に結びついてこなかったという例もありますし、長期的には両者が揃って綺麗に成長し続けてきた米国はやはり魅力的だと思います。
過去記事:中国株はEPSとGDP成長の乖離が激しい
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