株式リターンの源泉はリスクプレミアム


過去40年間の米国株上昇は金融緩和によるものなので今後のリターンは悲惨なものになるという話を最近よく見かけるようになった気がします。


しかし、株式リターンの源泉は株式リスクプレミアムであり、米国株は金融緩和がなかった頃から約150年間にわたって高いリターンを生んできました。

データ:multpl.com


米株が特に恵まれていたのはたしかですが、他の主要国の株式も(戦争によって国土が荒廃したり資産接収などがなく)正常に資本主義が機能している間は右肩上がりで推移してきました。

 過去記事:長期上昇トレンドへの信仰心

データ:Principles for Dealing with the Changing World Order

さらにピケティ氏お馴染みのr>gの図をみると、資本収益率は経済成長率の高低に関わらず2000年以上にわたって5%前後で推移してきたことが分かります。

出典:ピケティ『21世紀の資本』図表


金融緩和も経済成長もない時代でも人々はリスクを受け入れる代わりにプレミアムを要求してきたことを考えると、高いリスクプレミアムは人間の心理に根ざしたものだと言えると思います。なので、たとえば労働者が全部機械に置き換わって貨幣制度が消滅するとかにでもならない限りは変わらないんじゃないかなという気がします。

金利上昇はバリュエーションに逆風

ただし、金利低下によるバリュエーション低下が大きいのは確かなので、今後長期にわたって金利上昇が続くなら逆風であることには変わりありません。


S&P500の実質株価と実質EPSを並べてみると、最近はEPS上昇以上に株価が上昇していることが分かります。

長期金利上昇局面と低下局面のS&P500の実質リターン

下表は大雑把に長期金利上昇局面と低下局面にわけたときのS&P500の年率リターンです。

※直近の金利低下局面はコロナショックが異常値っぽい感じがするので、終点を2020年7月と2021年8月に分けています。


年率リターン長期金利変化幅CAPE
1873/01 - 1900/12
(金利低下・27年11ヶ月)
8.42%-2.48%pt12.25
→20.75
1990/12 - 1921/01
(金利上昇・20年1ヶ月)
0.89%1.99%pt20.75
→5.12
1921/01 - 1941/01
(金利低下・40年)
4.55%-3.14%pt5.12
→13.90
1941/01 - 1981/09
(金利上昇・40年8ヶ月)
5.86%13.37%pt13.90
→7.58
1981/09 - 2020/07
(金利低下・38年10ヶ月)
8.71%-14.70%pt7.58
→29.60
1981/09 - 2021/08
(金利低下・39年11ヶ月)
9.25%-14.04%pt7.58
→37.97


1つの局面が20〜40年で全部で5つしかないのでこれだけで判断するのは正しくないのかもしれませんが、過去150年間では金利上昇はバリュエーション縮小、金利低下はバリュエーション拡大を引き起こしてきました。


それぞれの金利上昇/低下局面の実質トータルリターン指数(開始時点=100)をグラフ化してみました。

約40年間だと金利上昇局面でもそれなりのリターンですが、1990年〜1921年とか1961年〜1981年の約20年間だと年率1%未満と割とひどいことになっています。


個人的には1980年頃の高インフレ&高金利が異常だっただけで超長期では一貫して続いてきた金利低下トレンドが今後も続いていくのではと思っています。


出典:Business Insider

ですが、労働人口減少&高齢者人口増加が需要超過を引き起こして今後数十年にわたってインフレ&金利上昇局面がくるのでは、という割と納得感のある説もあり、どっちに転んでもおかしくないと考えておこうと思っています。

 過去記事:高齢化は金利低下要因なのか、上昇要因なのか




よろしければ応援クリックお願いします
にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

コメント

  1. とても参考になる良記事だと思います、勉強になりました。ありがとうございます。

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます!

      削除

コメントを投稿