世界各国の実質GDP成長率と株式の実質リターン


米国株は長期にわたって年率実質7%弱のリターンを生み続けていますが、これは米国に限らず資本主義が正常に機能している国では普通のことだと考えてもいいんじゃないかなと思っています。

 過去記事:インデックス脳死ホールドは能天気すぎるのか


米国では超長期では実質EPS成長率≒実質GDP成長率が2~3%、配当利回りが4%程度で計6~7%みたいな感じでしたが、最近では配当よりも自社株買いが大きくなってきているので、配当利回りが低下し、実質EPS成長率>実質GDP成長率となってきています。

 過去記事:米国の実質EPSと実質GDPの比較

世界各国の実質GDP成長率と実質リターン

一般的には実質GDP成長率と株式リターンは相関しないと言われていますが、今回は世界各国の超長期の実質GDP成長率と実質リターンを調べてみました。


まずは実質GDP成長率です。下グラフはOur World in Dataのデータをもとに作成した世界各国の実質GDP成長率(1870-2018)の降順で並べたものです。



1870-2018年では南アフリカ(3.7%)、カナダ(3.5%)、オーストラリア(3.4%)が特に高く、イギリス(1.8%)、アイルランド(2.1%)、ベルギー(2.1%)、フランス(2.1%)が低いです。


日本(3.1%)やアメリカ(3.1%)は全世界(2.8%)を上回っています。1870年以降だと日本のほうが高いのかなと思っていましたがアメリカと同じなんですね…


成熟国の実質GDP成長率はだいたい2%程度に落ち着くという話がありますが、西欧諸国はだいたいそのくらいにおさまっています。


一方、1900〜2016年の各国の株式の実質リターンは以下の通りです。

データ:Which Country has the Best Stock Market?


横軸に実質GDP成長率、縦軸に実質リターンの散布図を作るとこうなります。



実質GDP成長率1.8%と際立って低いのにも関わらず実質リターン5.5%のイギリスをはじめ、成長率が低くてもリターンの良いアイルランドや、成長率が高くてもリターンの良くない日本やノルウェーのような国もあったりで、やはりGDP成長率とリターンには相関がないといえそうです。


また、この間に覇権国家から転落したイギリスだけでなく、その前の覇権国オランダも全世界とほぼ同等のリターンを残せていることからも、仮にアメリカが将来的に覇権を失うことがあったとしてもイギリスやオランダのように株式のリターンは失われない可能性も高いんじゃないかなと思っています。

(仮に中国とか他の国が取って代わることがあったとしても、西側に属している国から投資してきちんとリターンが得られるかは謎ですし。)

 過去記事:基軸通貨国から転落する過程のイギリス株


下表は各国の株式の実質リターン、実質GDP成長率、実質リターン-実質GDP成長率をまとめたものです。


「実質リターン-実質GDP成長率」は実質GDP成長率と実質EPS成長率がだいたい一致していれば、「配当利回り+バリュエーション変化」と近くなるはずですが、この数値はイギリス(3.7%)、南アフリカ(3.5%)、アメリカ(3.5%)が特に高く、オーストリア(-1.5%)、イタリア(-0.5%)、ベルギー(0.6%)、スペイン(0.7%)あたりが極端に低いです。日本は0.8%。


南アフリカは電力危機とか最近の感じからは今後のリターンは過去のようはうまくいかなさそうな気がしますが、基本的にはやはり資本主義がきちんと機能していて戦争等で致命的なダメージを受けることがなければ、成長率が良くなくても実質ベースで4〜6%くらいは普通に得られるんじゃないかなと思っています。




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