アンティ・イルマネン著『期待リターンII』で個人的に面白かった点について以前も記事を書いたのですが、今回は住宅のリターンについてです。
過去記事:コモディティプレミアム
過去記事:真の市場ポートフォリオ
住宅は株式よりもボラティリティが明らかに低いのにもかかわらず、長期的なリターンは株式とそれほど変わらないという研究があるそうです。
株式とは違って住宅の長期的なリターン(=純賃貸利回り※+実質キャピタルゲイン)を測定するのは難しく、経年劣化による品質低下等を考慮すると実質キャピタルゲインはマイナスでトータルリターンは株式を明確に下回るという指摘もあるそうですが、レバレッジなしでも株式に近いリターンを生んでいるというのは結構意外に感じました。
※グロス賃料から長期的なコスト(グロス賃料の30〜40%程度)を控除した利回り
REITってだいたいLTV50%弱くらい、つまり不動産に2倍弱のレバレッジがかかったみたいなものだと思うのですが、長期的なトータルリターンはだいたい株式と同じくらいです。ボラティリティはREITのほうが若干高いですが。ミドルリスク・ミドルリターンとは…
(東証REITは長期のトータルリターンが分からなかったので米国REITと米国大型株の比較)
出典:Portfolio Visualizer |
住宅がレバレッジなしでも低リスクかつ株式には劣るとはいえ近いくらいのリターンを生むのであれば、2倍弱のレバレッジがかかっていたら調達金利を差し引いても株式よりも高リターンになっていても良いのではと思ってしまいそうですが、現実では株式よりもやや高いボラティリティでリターンは同程度になってしまっています。
東京都心のタワマンでも上昇しているとはいえレバレッジなしでは日本株よりは低いでしょうし、やっぱり住宅の長期的なリターンが株式並みというのは疑わしい気がしますね。
住宅の長期的なコストはグロス賃料の30〜40%だそうなので、グロス賃料が4%、賃料の伸び率はインフレ率程度とするとレバレッジなしの住宅の長期的な実質リターンは純利回り2.5%前後になるのかなと思いました。
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