長期的には株式リターン>GDP成長率>ゴールドのリターン


「全世界株式は全世界のGDP成長率と同等程度のリターンしか生まない、ゴールドは2004年のETF登場以降で大半の国の株式をアウトパフォームしており、全世界株よりもゴールドのほうが構造的にリターンが良い」という趣旨のコメントをいただいたので、これに関して私の理解を書いておきます。


まず、GDP成長率についてですが、ウィリアム・バーンスタイン著『「豊かさ」の誕生 成長と発展の文明史』によると、1900〜2000年の先進国各国の1人当たり実質GDP成長率は年率2%前後に集中しており、世界大戦や内戦で国土が荒廃した被災国とそうでない非被災国ではほとんど差がないそうです。


一方で先進国の株式の実質リターンを見ると、世界大戦で国土が荒廃した日本、ドイツ、フランスを除くと、米国に限らず年率6~7%程度になっており、日本、ドイツ、フランスも戦後は再び上昇トレンドに戻っています。

 過去記事:インデックス脳死ホールドは能天気すぎるのか

致命的な戦争や災害に巻き込まれておらず、資本主義が正常に機能している成熟した先進国においては、長期的には実質GDP成長率が2%程度に対して株式の実質リターンは6~7%ということで両者は一致していません。

株式市場全体の時価総額の増加ペースは長期的に見ればGDP成長率と同じくらいに落ち着くとは言えると思いますが、少なくとも先進国の株式のリターンは株主還元(配当+自社株買い)のぶんだけGDP成長率(株式市場全体の時価総額の増加ペース)よりも高くなるのが普通です。
(一国だけをみると例えばTSMCがある台湾みたいに長期的にGDP成長率よりも早いペースで株式市場の時価総額が増え続けていたり、国営企業が多く株式市場の時価総額が小さい多くの新興国みたいな例もあったりしますが、全世界のGDPと全世界株では両者の成長率は同じくらいになるはずです。)

一方で、ゴールドについてもゴールドの時価総額は長期的にみれば全世界のGDPやM2と同じペースで増加すると言えると思います。

 過去記事:ゴールドの時価総額と世界のGDP


しかしゴールドは毎年1%以上のペースで新しく採掘され続けているため、ゴールドのリターンはゴールドの時価総額よりも年率1%超の希釈分だけ確実に低くなります。


ということで、長期的にみれば株式のリターンは株主還元分だけGDP成長率よりも高く、ゴールドのリターンは毎年希釈される分だけGDP成長率よりも低くなると考えることができると思います。

(ゴールドや株式市場の時価総額は短中期的には名目GDPに対して大きくなったり小さくなったりするので切り取る期間によってはゴールドが全世界株をアウトパフォームすることはありますが、ある程度長い期間では全世界株がゴールドを上回るのは自明だと思われます。)


ここから世界が金本位制に向かっていったりするとある程度長い期間でもゴールドが全世界株をアウトパフォームし続ける可能性もないとは言えないかもしれませんが、それでもどこかでゴールドの時価総額/世界のGDPの比率は頭打ちになるでしょうし。


逆に誕生以来高リターンを生んでいるビットコインもどこかで世界のGDPに対する比率は頭打ちになり、それ以降はGDP成長率と同じリターンしか生まなくなるはずです。

(ビットコインはインフレ率が低下し続け、2140年頃には新規供給が止まるので、成熟したあとはゴールドとは違って希釈がなくなるため長期的なリターンはGDP成長率と同じになると思います。)




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コメント

  1. 経済成長率に関して、説明不足だったかもしれませんが、ドル建て名目GDPが私が言う「経済成長率」です 米国に限らず年率6~7%のリターンがあるとおっしゃいますが、それは「自国通貨建て」ではそうでしょう しかしドルで見た場合、先進国の株は2~3%あるかないか、その他の新興国の株を見ればここ10年むしろマイナスになっていることが確認できます MSCIの各国のETFを見てみてください 全世界的にみると株のパフォーマンスが大したことがないことがわかります。特別に米国株のパフォーマンスがいいのはそうですか、それでも今後ゴールドをアウトパフォームすると断言できるのは主要な指数で言うとナスダックや半導体etfくらいかなと思います。 

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  2. まぁ、株のほうがリターンが大きいとするほうが通説で、多数意見ではあると思います。「株が割安なら株が買われるが、そうでないならゴールドが買われる」ということだと思ってます。2013~2018年まではリーマンショック明けで株が割安だったのと原油安で利益が出しやすい環境下だったのでゴールドが売られ、株が買われ、株のほうがパフォーマンスがよかったが、過去5年でみると再びゴールド>株になってます。 過去5年パフォーマンスでゴールドは約+84%に対しS&Pは+73%です もっともパフォーマンスのいい米国株でこれなので、他の国の株は相手にならないです

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  3. ゴールドの希薄化に関して 書いてなかったので
    世界のマネーサプライ(ドル建て)増加率-ゴールドの増加率>世界の経済成長率(ドル建て名目GDP)になっているので ゴールドの供給が増えていくにしても、尚ゴールドのほうがパフォーマンスはよくなると思っています ちなみに2016年から仮想通貨から投資を始めたのでポジショントークになりますが、ビットコインに関しても、長期で株をアウトパフォームすると思っています

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    1. まず、この記事では特定の期間ではなく「長期的」な話をしています。
      そして長期的には特定の国の株式の実質リターン(インフレ調整後リターン)は米ドル建てでも現地通貨建てでも大した差はないです。
      また、長期的には、全世界株のドル建て時価総額、ゴールドのドル建て時価総額、全世界のドル建て名目GDP、全世界のドル建てM2の増加ペースは等しくなります。
      (金融緩和のために過去数十年にわたってM2>GDPだった、みたいな話ではないです。)
      基本的にこれらは世界のドル建て名目GDPと同じペースで増加していくものなので。
      この前提のうえで、株式リターンは株主還元分だけGDP成長率よりも高くなり、ゴールドは希釈分だけ低く、ビットコインは希釈分がないので等しくなります、ということを言っています。
      (過去100年は実質で株式が6〜7%、GDPが2%前後、ゴールドが1%前後です。)
      ビットコインやゴールドが恒久的にGDP成長率よりも高いリターンを生み続けるということは、GDPに対するビットコイン時価総額やゴールド時価総額の比率が恒久的に高まり続けるということになりますが、それは有り得ないのでどこかでGDPに対する比率は頭打ちになります。

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    2. >>まず、この記事では特定の期間ではなく「長期的」な話をしています。

      過去20年というのは十分長期だと思いますし、
      ゴールドのETFのなかった2004年以前は比較不可能だと思っています ゴールドのパフォーマンスが2004年以前で悪いのはETFの他では、長らく金本位制や1971年までのブレトンウッズ体制によって通貨≒ゴールドであったからではないでしょうか? 今は違います 法定通貨になんの裏付けもないです

      >>全世界のドル建て名目GDP、全世界のドル建てM2の増加ペースは等しくなります。

      長期的にマネーサプライとGDPの増加率が一致するとは思えないです 世界のGDPとマネーサプライの比は開く一方です
      ttps://data.worldbank.org/indicator/FM.LBL.BMNY.GD.ZS
      中国ではGDP比200% 日本に至っては280%もあります
      600兆の名目GDPに対してM3 1600兆もあります 
      つまりGDP成長率からマネーサプライ増加率は乖離が大きくなっています 今後も貯蓄をする傾向にある国とアメリカのように収入の大半を消費に回す国とではマネーサプライとGDPの成長率は差が出ていくだろうと思います


      >>特定の国の株式の実質リターン(インフレ調整後リターン)
       は米ドル建てでも現地通貨建てでも大した差はないです。


      これもどうでしょうか ドルに対して為替ヘッジがかかっているものとヘッジなしでは大きくパフォーマンスに差があります これはつまりドルに対して大概の通貨が下落しているというこですが日本の株が分かりやすいと思います 円建てとドル建てでは大きくパフォーマンスに差があります 海外の投資家は為替ヘッジをかけるので株が高くなればなるほど為替ヘッジを積み増しますのでそれが円安の一因でもあります 実際topixとドル円の相関係数は-0.56で過去最高レベルだそうです
      ttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-19/S934EBT0G1KW00

      もっと長期という話ならイギリスの株もあります GBPは1974年の2.4ドルから2024年の1.26ドルと約半分になっています。
      したがってドル建てで見た場合、ポンド建ての半分のリターンしかイギリス株にはないです。

      さらにいうならトルコの株を見てくださいインフレ調整込みだろうが、ドル建てとトルコリラ建てではパフォーマンスに雲泥の差です
      といよりドル建てだと配当込みでも利益あまり出ていなさそうですチャートを見る限り

      アメリカは保護主義傾向もあって経常赤字が2006年をピークに改善している点(特にトランプが当選すれば、より顕著になるでしょう)や原油需要、また、米国株が今後も他国の株式をアウトパフォームするであろうことを考えれば長期的にもドル高になり、現地通貨建てのパフォーマンスとドル建てのパフォーマンスで差が出るでしょう

      ちなみに全世界株式のACWIのパフォーマンスは過去10年で配当込みで年8.30、設定来で6.73%ですが
      これは米国株を60%以上含んでいるためです 米国株を除くACWXでは過去10年で3.60,設定来で2.6%程度です
      仮に米国株のウェートを米国のGDPシェア26%にした場合であったとしても、世界株式のパフォーマンスは3~4%程度でしかないはずです。これは世界のドル建て名目GDPの成長率とほぼ同じになっているはずで、アメリカなどの例外もありますが、全世界でみると名目GDP成長率≒株式リターンと言っていいと思います


      >>ゴールドは希釈分だけ低く

      これは供給の条件が同じであるならばそうかもしれないですが、
      法定通貨はほとんど発行コストがかかりません。
      一方、ゴールドもそうですし、ビットコインもそうですが採掘コストがかかります ゴールドだと採掘機械に、それを動かすエネルギー費や人件費もかかります。 これがかかる以上仮にマネーサプライとゴールドの供給ペースが同じになったとしても
      採掘コストが年々上昇していくことを考えればゴールドは上がると思っています 無料で作れるものと作るのに費用がかかるものが同じ価値になるはずがないです  まぁそもそも、法定通貨と同じようにゼロコストで採掘できたとしても、世界のマネーサプライの増加率とGDP成長率が一致するとは思っていないので「ゴールド>>ITや半導体銘柄を除く大半の株」になると思っていますが



      あまり、集中的に書き込んで、お手間を取らせたくないのでこの話題はこれっきりにします。丁寧にお答えいただきありがとうございました。

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  4. 「超長期的」と書いた方が良かったかもしれませんね。
    10〜20年くらいの期間ではそうかもしれませんが、全世界のM2にしてもゴールドの時価総額にしても全世界の株式市場の時価総額にしても、「超長期的」に全世界のGDP以上のペースで増加し続けることはありえない、というのがこの記事の趣旨です。
    また、主要先進国の過去100年の株式の実質リターンは6〜7%で実質GDP成長率2%前後を大幅に上回っていますし、株式リターンは理屈のうえでも「EPS成長率+配当利回り」で表すことができるので、少なくとも先進国においてはGDP成長率よりも高い数値になるのは当然と言っていいです。

    また、トルコ株を挙げられていますが、トルコ株のドル建てトータルリターンは1994年5月以降で年率7.7%であり、ゴールドのドル建てリターンを1ポイント以上上回っています。
    米国株はたしかに長期でパフォーマンスが良いですが、米国株だけが特異なのではなく、他の国もある程度長い期間をみるとゴールドを上回るパフォーマンスを残しています。
    (株価指数(配当を除く)チャートと比べるとゴールドのほうが良い時期がたくさんあるかとは思いますが、株式には配当があるのでトータルリターンで見る必要があります。)

    ちなみに米国を除く先進国株は1994年5月以降でドル建て年率5.8%であり、こちらはバブル崩壊後の日本株が足を引っ張ってゴールドよりは悪いですが、米ドル建ての米国を除く先進国のGDP成長率を大幅に上回っています。
    https://www.msci.com/documents/10199/99459e68-5e21-4888-ace6-72a3ffe9b1ab
    同期間のヨーロッパ株はドル建て年率7%なので、日本を除く先進国株ではGDP成長率やゴールドのリターンを上回っています。
    https://www.msci.com/documents/10199/d448632f-9940-497a-9096-1ef4901858d2

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