世界各国のカントリーリスクプレミアム(2020年7月)


今回は2020年7月1日時点の世界各国のカントリーリスクプレミアム※を見ていきます。
※ある国の株式や債券に投資するときに考慮しなければならないリスクをカントリーリスクといいます。

データはニューヨーク大学アスワス・ダモダラン教授のサイトで公開されているものを使用しています。
(過去記事:世界各国のカントリーリスクプレミアム

世界各国のカントリーリスクプレミアム(2020年7月時点)

下表は2020年7月1日時点のカントリーリスクプレミアムと株式リスクプレミアムをまとめたもので、リスクプレミアムの降順に並べています。
(株式リスクプレミアムはカントリーリスクプレミアムにS&P500のインプライド・リスクプレミアムを足したものです。)

カントリー
リスクプレミアム
株式
リスクプレミアム
パキスタン9.56%14.79%
ナイジェリア8.09%13.32%
ギリシャ6.61%11.84%
トルコ6.61%11.84%
ブラジル4.41%9.64%
南アフリカ3.67%8.90%
ロシア3.23%8.46%
イタリア3.23%8.46%
ハンガリー3.23%8.46%
ポルトガル3.23%8.46%
インド3.23%8.46%
インドネシア2.80%8.03%
フィリピン2.80%8.03%
スペイン2.35%7.58%
タイ2.35%7.58%
メキシコ2.35%7.58%
マレーシア1.76%6.99%
アイルランド1.25%6.48%
ポーランド1.25%6.48%
イスラエル1.03%6.26%
中国1.03%6.26%
日本1.03%6.26%
チェコ0.89%6.12%
ベルギー0.89%6.12%
台湾0.89%6.12%
香港0.89%6.12%
フランス0.73%5.96%
英国0.73%5.96%
韓国0.73%5.96%
オーストリア0.58%5.81%
フィンランド0.58%5.81%
オーストラリア0.00%5.23%
オランダ0.00%5.23%
カナダ0.00%5.23%
シンガポール0.00%5.23%
スイス0.00%5.23%
スウェーデン0.00%5.23%
デンマーク0.00%5.23%
ドイツ0.00%5.23%
ニュージーランド0.00%5.23%
ノルウェー0.00%5.23%
米国0.00%5.23%

米国の株式リスクプレミアムは半年間で5.20%(2020年1月)→5.23%(2020年7月)にやや上昇しています。
※なお、2020/4/1時点では6.01%でした。
 過去記事:世界各国の株式リスクプレミアムは3ヶ月で大幅に拡大

カントリーリスクプレミアムをグラフ化すると以下のようになります。

カントリーリスクプレミアムの変化

半年間のカントリーリスクプレミアムの変化は以下のようになっています。

2020/012020/07変化
パキスタン6.42%9.56%3.14%
ナイジェリア5.43%8.09%2.66%
ギリシャ4.44%6.61%2.17%
トルコ4.44%6.61%2.17%
南アフリカ2.17%3.67%1.50%
ブラジル2.96%4.41%1.45%
インド1.88%3.23%1.35%
メキシコ1.18%2.35%1.17%
ロシア2.17%3.23%1.06%
イタリア2.17%3.23%1.06%
ハンガリー2.17%3.23%1.06%
ポルトガル2.17%3.23%1.06%
インドネシア1.88%2.80%0.92%
フィリピン1.88%2.80%0.92%
スペイン1.57%2.35%0.78%
タイ1.57%2.35%0.78%
マレーシア1.18%1.76%0.58%
アイルランド0.84%1.25%0.41%
ポーランド0.84%1.25%0.41%
香港0.49%0.89%0.40%
イスラエル0.69%1.03%0.34%
中国0.69%1.03%0.34%
日本0.69%1.03%0.34%
チェコ0.60%0.89%0.29%
ベルギー0.60%0.89%0.29%
台湾0.60%0.89%0.29%
フランス0.49%0.73%0.24%
英国0.49%0.73%0.24%
韓国0.49%0.73%0.24%
オーストリア0.39%0.58%0.19%
フィンランド0.39%0.58%0.19%
オーストラリア0.00%0.00%0.00%
オランダ0.00%0.00%0.00%
カナダ0.00%0.00%0.00%
シンガポール0.00%0.00%0.00%
スイス0.00%0.00%0.00%
スウェーデン0.00%0.00%0.00%
デンマーク0.00%0.00%0.00%
ドイツ0.00%0.00%0.00%
ニュージーランド0.00%0.00%0.00%
ノルウェー0.00%0.00%0.00%
米国0.00%0.00%0.00%


パキスタン、ナイジェリア、ギリシャ、トルコなど脆弱な国は大幅に上昇しています。日本も地味に0.69%→1.03%になっています。

成長率ゼロとしたときの適正PER

この株式リスクプレミアムを使って各国の適正PERを計算してみます。

PERは以下の式で求めることができます。

PER=1/(割引率-成長率)
  =1/(無リスク金利+株式リスクプレミアム-成長率)

成長率を0%、無リスク金利を米10年国債利回り(2020年7月1日時点で0.676%)として適正PERを計算し、2020月6月末の実績PER※との乖離率(実績PER÷適正PER-1)の昇順に並べてみました。
※ナイジェリアはとパキスタンはMSCI(MSCI All Nigeria Select 25/50 IndexとMSCI All Pakistan Select 25/50 Index)、その他はStarCapital AGのデータを使用しました。

適正PER実績PER乖離率
ナイジェリア7.14.4-38.7%
シンガポール16.910.4-38.6%
ロシア10.96.8-37.9%
オーストリア15.410.5-31.9%
チェコ14.711.2-23.9%
中国14.412.0-16.8%
ベルギー14.715.44.7%
ハンガリー10.911.55.1%
スウェーデン16.918.16.9%
オーストラリア16.918.16.9%
香港14.715.87.4%
フィンランド15.416.78.3%
パキスタン6.57.211.4%
カナダ16.920.118.7%
台湾14.717.821.0%
ニュージーランド16.920.923.4%
ドイツ16.921.024.0%
スイス16.921.024.0%
フランス15.119.026.1%
南アフリカ10.413.630.2%
ポーランド14.018.230.2%
スペイン12.115.830.4%
フィリピン11.515.131.5%
日本14.419.233.2%
トルコ8.010.835.2%
英国15.120.536.0%
インドネシア11.516.140.2%
タイ12.117.242.0%
米国16.924.242.9%
韓国15.122.549.3%
アイルランド14.020.949.6%
メキシコ12.118.250.3%
オランダ16.927.260.6%
マレーシア13.021.867.1%
イスラエル14.424.167.2%
デンマーク16.928.668.9%
イタリア10.918.569.0%
ポルトガル10.920.890.0%
ノルウェー16.938.2125.6%
ブラジル9.723.7144.5%
インド10.927.6152.2%
ギリシャ8.036.8360.6%

実績PERと適正PERをグラフ化すると以下のようになります。
半年前と比べると無リスク金利が1.245%ポイント(1.921%→0.676%)と大幅に低下した一方で、米国の株式リスクプレミアムはほぼ横ばい(5.20%→5.23%)だったため、低リスクな先進国各国は金利低下分だけ適正PERが拡大しました。

一方、脆弱な新興国・フロンティア国では金利低下よりもカントリーリスクプレミアム上昇のほうが大きいため適正PERは縮小しています。

前回は乖離率が最も小さかった3国はロシア(-45.2%)、ナイジェリア(-29.8%)、中国(-14.9%)でしたが、今回はナイジェリア(-38.7%)、シンガポール(-38.6%)、ロシア(-37.9%)となっています。

ちなみに今までの金利低下局面では金利低下分を相殺する形で株式リスクプレミアムが上昇してきたので割引率はほぼ変わらず安定していましたが、今年は金利が大きく低下した一方で株式リスクプレミアムはあまり変わっていないので割引率(名目期待リターン)も大きく低下しています。今年グロース株が特に強いのはこれもあるのかなと思っています。
 過去記事:『割引率=長期金利+株式リスクプレミアム』の安定感について



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