今回は今後10年間のS&P500の実質期待リターン各種を見ていきます。
配当利回り+成長率+バリュエーション変化(Research Affiliates)
まずはResearch Affiliatesの今後10年間の実質期待リターンです。配当利回り+成長率にバリュエーション変化(CAPEの平均回帰)を加えて計算されています。
過去記事:世界各国の時系列CAPEレシオ(シラーPER)が見られるサイト
2021年5月末時点では配当利回り+成長率+バリュエーション変化=1.4%+1.2%-3.4%=-0.8%となっています。
出典:Research Affiliates |
CAPEレシオのみ
単純にCAPEレシオだけで計算しても似たような数値になります。
下図は以前当ブログが作成した散布図です。2021年7月1日現在のCAPEレシオ37.92を当てはめると、今後10年間の実質期待リターン=-0.00354×CAPE+0.134=0.0%となります。
ちなみにCAPEレシオは株主還元として配当よりも自社株買いのほうが大きくなってきているため、単純にこういった計算をすると実質期待リターンは若干低めに出てしまうはずです。
ロバート・シラー教授のサイトにはこの問題を解決するためにトータルリターンベースで計算した「alternative version of CAPE」という代替CAPEレシオが載っている(ただし2018年以降は更新されていない)のですが、代替CAPEで計算してもそれほど大きな差はなかったので、いずれにしても0%近辺になるのは変わらないと思います。
過去記事:トータルリターンベースのCAPEレシオ「alternative version of CAPE」について
家計金融資産の株式比率
これは最近知ったのですが、米国では家計金融資産の株式比率と将来のリターンは逆相関になります。
直近(2021Q1)の家計金融資産の株式比率は40.25%なので、これを当てはめると今後10年間の実質トータルリターンは-3.5%になります。
過去記事:家計金融資産の株式比率が上昇すると将来のリターンは低下する
バンガードの名目期待リターン
GMOの実質期待リターン(7年間)
最後に、一貫して新興国株に強気、米国株に弱気なGMOの今後7年間の実質期待リターン(2021年5月末時点)は-7.8%という極端な数字になっています。プラスリターンはEmerging Valueのみだそうです。
出典:GMO |
どういう計算なのかは把握していませんが、「配当利回り+成長率にバリュエーション変化(CAPEの平均回帰)」みたいな算出方法とすると、これは今後7年間でCAPEレシオが過去平均値近辺まで一気に低下するくらいのかなり過激な予想だと思われます。
ちなみにGMOは2013年12月末時点でも米国大型株が-1.7%、新興国株が+3.5%と予想していましたが、実際には米国大型株が+10.62%、新興国株が+4.24%でした。(Portfolio Visualizerのデータ)
出典:GMO |
まとめ
実質期待リターン各種を降順に並べてみました。
極端に弱気なGMOを除くと-3%~+3%くらいですね。
個人的には割引率を構成する株式リスクプレミアムと長期金利はいずれも趨勢的に低下していくのではと思っているので長期では割と楽観していますが、今後7~10年くらいのスパンではバリュエーション低下が足を引っ張るので実質ベースで少しでもプラスになれば十分だという認識です。
過去記事:割引率は趨勢的に低下しそうな気がする
相対的に新興国株が良いと思うのはGMOやResearch Affiliatesと同じですが、長らく低CAPEが報われない時期が続いていますし、低く見えるのはバリュートラップで向こう7~10年も相変わらずアンダーパフォームしていそうな気もします。
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