「株主資本主義では何十年も先のことは現在価値に割り引くと非常に小さくなるので、地球環境のような長期的な問題は軽視されがち」という話があります。
DCF法で考えると株価の価値の90%以上は1年目以降から将来の利益によるものですが、一方で遠すぎる未来も利益の現在価値が小さくなるため、株式投資だけを考えるとそれほど長期目線で考える必要はありません。
過去記事:DCF法と株式の価値
ESGは割引率低下に寄与しそう
一方、近年浸透しつつあるESGは短期的な企業収益だけではなく、環境問題や社会問題に取り組むことで安定的かつ長期的な成長につながるという発想です。ESG的な考え方が主流になると今までよりも不確実性が減ることで割引率が低下し、より長期目線、未来志向になるのではと思っています。
(私はあまりESGに興味がなく勉強したことがないので適当ですが。)
割引率が低下することで、以前と比べると株価の価値に占める短中期的な利益の比率が小さく、長期的な利益の比率が大きくなるため、これはグロース株優位の要因になると思います。
グロース株のアウトパフォームは記録的な長さになっているので、雰囲気的にはそろそろバリュー株の時代が訪れそうな気がしますが、ESG投資の流れは一過性のものではなく今後も続いていくものだと思うので、ESGによる割引率低下→グロース優位という流れはまだまだ続くかもと思っています。
高齢化と株式リスクプレミアム
また、当ブログでは以前、高齢化を株式リスクプレミアムの上昇要因(≒割引率上昇要因)として紹介していましたが、若者は住宅や教育、耐久消費財等のために借り入れを行う場合が多いため、年をとるごとに引退のための金融資産の需要が高まり、高齢化、長寿化するほど逆に株式リスクプレミアムが低下する「ライフサイクル投資仮説」という考え方もあるようです。
過去記事:株式リスクプレミアムは今後縮小していくのだろうか:縮小要因と拡大要因
たとえば生命保険は負債のデュレーションが非常に長いので保有資産も超長期国債などデュレーションの長いものを買うそうですが、人間の場合も長寿化するとよりデュレーションの長い資産を選好することになりそうな気がします。
最近のバロンズでも、人々はデュレーションの長い資産を望んでいるため、バリュー株への乗り換えは長続きしないのでは、という話がありました。
人々はデュレーションの長い資産を望んで、それが株式のバリュエーションを押し上げている。この状況が近い将来に変わるとは見ていない。多くの人々が現在と1999~2000年を比較しているが、マイクロソフト<MSFT>やアルファベット<GOOGL>などのバリュエーションは妥当に思える。われわれは、複雑な問題を解決できる、革新的でワイドモート(参入障壁の高い)企業への投資を望んでいる。市場で最近見られるバリュー株への乗り換えが、長く続くとは考えていない。バリュー志向の多くの投資の質は、テクノロジーによる破壊によって悪化した。依然投資すべき企業は、大型の革新的企業だ。
引用:バロンズ「狂騒の20年代にようこそ。ただし、株価はそれほどでない可能性 」
長期金利は引き続き低下トレンドが続く可能性も
また、同じく最近読んだPIMCOの記事でも、インフレは長期的なリスクであるものの、人口動態、生産性のトレンド、格差の拡大、貯蓄率の上昇、緩和的な金融政策等のファンダメンタルズは引き続き債券にプラスだとしていました。
出典:PIMCO |
長期金利は過去150年くらいのスパンで見ると金利は上がったり下がったりを繰り返しているように見えますが、もっと期間を引き延ばしてみると超長期では下落トレンドが続いているという話もあります。
過去記事:金利は超長期では下落トレンドが続いている
出典:Business Insider |
技術革新によるデフレ圧力や金融緩和の常態化、巨額の設備投資を必要とする重厚長大産業からサービス業にシフトしていくことで資金需要が縮小していくことなどを考えると、昔みたいに金利が上昇することはもうないのではと思ってしまいます。
将来的にCBDC(中央銀行デジタル通貨)によってタンス預金ができなくなればゼロ金利制約もなくなるので大幅なマイナス金利が可能になるかもしれませんし、長期金利の低下トレンドはまだまだ続いていく可能性もあり得るのではないでしょうか。
このような理由から、私は長期的にみれば割引率を構成する株式リスクプレミアムと長期金利はいずれも趨勢的に低下していくのではと思っています。
足元では長期金利が急上昇しグロース株がアンダーパフォームしていますが、個人的にはこれは一過性のもので再び低下トレンドに戻りそうな気がしています。
※長期金利上昇は株式リターンにとってマイナスなので、以前は金利上昇に備えてデュレーションの短いバリュー株志向でしたが、最近は妥当なバリュエーションのグロース株志向にやや傾いています。依然として低CAPE戦略を好んでいますし、極端には変えるつもりはありませんが…
過去記事:【長期金利と株式リターン】良い金利上昇と悪い金利上昇
多少割高に思えてもフルインベストメントを続けるつもりなのは単純にマーケットタイミングは読めないというだけでなく、割引率がさらに低下していくかもしれないと思っているというのも大きいです。
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